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- 2012_CWC_5位決定戦と準決勝・・ゲームプランがツボにはまった広島!?・・状況的に(!?)アル・ヒラルが存在感を発揮した・・(2012年12月12日、水曜日)
- まずは、サンフレッチェとウルサン・ヒョンデが激突した5位決定戦。
日韓戦だからネ、こちらが、ゲーム立ち上がりからのガチンコ勝負を期待するのも道理。でも前半は、期待外れだった。まあ、わたしの発想が安易だったわけだけれど・・
たしかにウルサンは、ゲーム立ち上がりから積極的にプレッシングサッカーを仕掛けていった。でもサンフレッチェは、そんなウルサンの攻撃的なマインドに乗っていかない。
まあ、そんな「落ち着いたバランスサッカー」こそが彼らの真骨頂だし、前半は、ウルサンを走らせ、疲れが出てくる後半に勝負を掛けようってなゲーム展開イメージだったんだろうね。
でも、そんな全体的プランと、5位決定戦という(ちょっと気合いが乗らない!?)雰囲気によって、どうも、サンフレッチェ選手たちの集中力に減退感が見え隠れしていた。
その心理状態が、グランウド上の現象として如実に投影されたのが、前半7分にブチかまされたラフィーニャの決定的シーン。ラフィーニャを十分にマークし切れていなかった日本代表の水本裕貴が、背後の決定的スペースへ「行かせて」しまったんですよ。
それは、ウルサンがイメージする絶対的な勝負プロセス。そう、アジアでは敵なしという高さを誇るキム・シンウクのヘッドで「落とされた」ボールを、狙い通りに走り込んだラフィーニャがフリーで受けたんですよ。
ラッキーなことに、広島ゴールの左ポストをギリギリで外れていったラフィーニャのフリーシュート。それは、サンフレッチェ守備ブロックにとって、大
ショックピンチだったに違いない。それは、集中力を瞬間的に最高レベルまでアップさせる「強烈な刺激」ということになるんだけれど・・
このピンチでは、水本裕貴の「気抜けマーク」が目立ちに目立っていた。もちろん、彼自身が、もっともショックを受けていたに違いない。たしかに、そこから彼のプレー姿勢が、とても忠実&創造的になった・・と感じた。ところが・・
そう、前半17分のウルサン先制ゴールのシーン。
前半7分とまったく同じようなカタチで、ラフィーニャの前のスペースへと決定的パスが通った。でもそこでは、(前半7分のミスを反省し!?)予測ベースの動き出しで忠実に決定的スペースをケアーしていた水本裕貴が、余裕で先にボールに追い付いたんだよ。でも・・
そう、飛び出してきた広島GK西川周作とのイメージが合わず、そのまま無人の自軍ゴールへ「バックパス」を出しちゃった。フ〜〜・・
もし最高の緊張感でゲームに入っていたら、あんな(相手と競り合っている!)微妙なシーンだから、水本裕貴もシンプルにタッチラインへ蹴り出していたは
ず。それが、あろうことか、バックパスを選択しちゃったんだよ。ラフィーニャが、すぐ背後まで迫っていたにもかかわらず・・
でもサンフレッチェは、そんなゲーム展開(全体的に落ち着きすぎた雰囲気!?)だったにもかかわらず、まさにワンチャンスを同点ゴールに結びつけちゃうんだ。そう、忠実な、ホントに忠実な、佐藤寿人の飛び出し。
その飛び出しが、森崎浩司のフリーキックがピタリと合った。そのコースと強さ、ボールの種類だけじゃなく、「それ」を予測した佐藤寿人のダッシュこそが、「The 広島」だよね。
ところで前半のサンフレッチェの落ち着きだけれど、彼らの冷静な人とボールの動き(組織サッカー)が、ウルサン・ヒョンデの前への勢いを「徐々に殺いでいった」ことも確かな事実だったよね。
サンフレッチェは、ウルサンが魅せた「韓国的なパワフルプレッシング」の勢いを、軽快な人とボールの動きによって「いなし」つづけたんだ。その組織サッカーには、ちょっと溜飲を下げた。
そんな前半だったけれど、より積極的に「前へ出ていった」サンフレッチェのプレー姿勢もあって(前述したゲーム展開イメージ≒ウルサンの疲れが出る後半に勝負を掛ける!?)、後半のゲームは、とてもエキサイティングなモノへと成長していった。
そんなゲーム展開のなかで、サンフレッチェが、ゲームを決めるゴールを、立てつづけにブチ込むんだ。典型的な佐藤寿人の「The 広島」追加ゴールと、
同じ佐藤寿人が蹴り込んだ、とても冷静に「オフサイドライン」を見極め、墓萩洋次郎からのラストパスを「待った」3点目。
でも、やっぱり、「ゲームの真実」にも、しっかりと目を向けていなければサッカーコーチじゃない。
そう、佐藤寿人の勝ち越しゴールが入る前にウルサン・ヒョンデが作り出した、二つの、完璧な「ニアポスト勝負シュート」のことだよ。そのとき、誰もが
「エッ・・どうして今のがゴールにならない?」ってな頓狂な声を上げたに違いない。それほど絶対的なゴールチャンスだった。
もちろん「タラレバ」。でも、あの絶対的ゴールチャンスにこそ、ウルサン・ヒョンデの底力(勝負強さ)を感じていた筆者だったということが言いたかった。
さて次は、コリンチャンス対アル・アハリによる準決勝。そのレポートは、後で書き足しまっせ・・
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はい・・ということで、コリンチャンス対アル・アハリ。
この試合で目立っていたのは、皆さんもご覧になった通り、アル・アハリが魅せつづけた、とてもモダンでハイレベルな、そして勝負にも強そうな組織サッカーだったよね。
高質な組織プレーのなかに、彼らが秘める個の才能が、とても効果的に光り輝く。洗練され、実効レベルの高いコレクティブ・サッカー。そう、彼らは、「あ
の」強いコリンチャンス守備ブロックを振り回して最終勝負まで(シュートまで)いける・・という雰囲気を振りまいていたんだ。
以前のエジプトは、代表でもクラブでも、いくら上手くボールをキープできても、『相手が強くなったら、その守備のウラを突くような本物のチャンスは作り出せない・・』なんていうイメージが先行していたけれど、今では、そんなネガティブな印象は払拭されつつあると思う。
強いアル・ヒラル。彼らの個人勝負プレーは、組織プレーのなかで光り輝くんだ。ここが大事なポイントなんだな。だからこそエジプトサッカーは発展をつづけているし、アフリカのイメージリーダーとしても君臨できている。
ハナシは飛ぶけれど、大会5位に輝いたサンフレッチェは、そんな強いアル・アハリを(準々決勝で)ギリギリまで追い詰めたんだっけね。彼らは、日本サッカーが着実に進化していることを、再認識させてくれた。
あっと・・脱線。とにかく、バランスの取れたアル・アハリに対し、世界サッカーの盟主たるべき南米代表のコリンチャンスは、ちょっと「体たらく」気味になってしまった・・ということが言いたかった。
コリンチャンスだけれど、たしかに地力では、アル・アハリの上をいくに違いない。そのことは、決勝ゴールを挙げるまでのゲーム内容でも認識できた。
守備でも、攻撃でも、局面での「せめぎ合い」における巧妙さ、狡猾さ、そして力強さは、明らかにアル・ヒラルよりも上だった。
例えば、守備や攻撃での「アプローチ・イメージ」の内容とか、局面勝負シーンでの相手との間合いの取り方や、相手アクションを見極めた「ワンテンポ遅らせたアクション」とか・・そんな類の、「細かな所」のプレー内容のことだよ。
とはいっても、組織プレーと個人プレーのバランスという視点では、評価は変わる。そう、そのポイントでは、アル・ヒラルに軍配が挙がる側面も多いんだよ。
コリンチャンスだけれど、全体的な評価としては、守備のチームということだそうな。実際に、今回のコパ・リベルタドーレスでも、歴代2位の「最少失点チーム」ということです。4点・・!? そりゃ、確かにすごい。
強烈に強いディフェンスをベースに、必殺の蜂の一刺しカウンターをブチかます・・!?
コリンチャンス守備が強いことは、内容的にアル・ヒラルを凌駕していた先制ゴールを挙げるまでのプレー内容でも、明確に確認できた。とにかく、「読み」をベースにしたボールがないところでのアクションの量と質が素晴らしい。
だからアル・ヒラルは、いくら上手くボールを動かしても、最終勝負まで行けない。そりゃ、ボールがないところでのサポートやパスレシーブの動きの量と質がアップしていかないのだから道理。
でも先制ゴールを奪われ、もう「行くしかない・・」という状況になってからは、サッカー内容が、まさに別物っちゅう展開になっていくんだよ。
そう、フッ切れた押し上げサポート。それがあったからこそ、彼らの、組織と個がハイレベルにバランスする組織サッカーも威力を倍増させた。
もちろんそこには、後半から登場したアブトレイカが魅せた、巧みなボールコントロール(タメ)&相手の痛いところ(決定的スペース)を突き刺す仕掛けのパスも抜群の強みを発揮していた。
もう一つ。コリンチャンスの勝負強さの生命線である「カウンター」が、うまく機能しなかったというポイントもあったね。もちろん、その背景には、アル・
アハリが展開した、素早く効果的な「攻守の切り替え」と、守備での忠実な汗かきハードワークもあったわけだけれど、それにしても・・。
まあ、とはいっても、決勝でのコリンチャンスは、本来の「勝負強さ」を存分に発揮するに違いない・・とも思う。
サッカーゲームは生き物だからネ。
多くの、物理的&心理・精神的ファクターが、複雑に絡み合いながら、ゲーム展開に強烈な影響力を行使するサッカー・・必然と偶然が、二重、三重に交錯するサッカー・・っちゅうわけです。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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