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- 2012_皇后杯決勝・・近年、希にみる内容の充実した勝負マッチだった・・(INAC神戸vsジェフ千葉、1-0)・・(2012年12月24日、月曜日)
- ・・あ〜あ・・結局、負けてしまった・・あんなに素晴らしい闘い(強い意志が集約した積極サッカー)を魅せたジェフ千葉だったのに・・とにかく、監督の上村崇士さんの優れた(心理マネージャーとしての!?)ウデに対しても「乾杯っ!!」しておかなければ・・
それにしてもジェフ選手たちが最後まで途切れずに魅せつづけた集中力には感服させられた。とにかく彼女たちは、最後の最後まで、「あの」強いINACに対して、本当に素晴らしいディフェンスを展開したんだよ。
そして、何度も必殺のカウンターを成就させかけちゃう。
何度「ア〜〜ッ!」なんていう大きな溜息が口をついたことか。いいえ、決してジェフ千葉に肩入れしていたわけじゃありません。彼女たちが展開した「120%の意志のサッカー」に強いシンパシーを感じていた(!?)だけなのです。
とはいっても、そんな素晴らしい守備を展開したジェフだったけれど、たまには集中切れのマーキングミスもあったよ。例えば、前半のワンシーン。
右サイドをドリブル突破する川澄奈穂美に合わせ、中央ゾーンを、フリーになった大野忍が、全力スプリントで抜け出してきた。
そのシーンでは、大野忍をマークすべきだったジェフ選手が、完全に「置き去り」にされた。たぶん彼女は、一瞬のボールウォッチングの瞬間(スキ)を突かれて大野忍にスタートされちゃったんだろうね。
あれほどの緊張感に包まれた勝負マッチだから、全体的には素晴らしいサッカーを展開しているジェフでありながら、そんな「一人の選手の一瞬の気抜け」に
よって全てが台無しになっちゃうことだって、もちろんあり得る。それが、本物のチームゲームであるサッカーの怖さなんだよね。
ちょっと蛇足だけれど・・
我々コーチは、どんな緊張状況においても、冷静に、決して集中を切らすことなく、『目立たない小さな所』にも細心の注意を払いつづけられるような最高の
心理・精神状態をキープできること(現象)も、「勝者のメンタリティーを構成する重要ファクター・・」だと考えるのです。
あっと・・前述の川澄奈穂美の突破シーン。結局、川澄奈穂美のクロスは、ジェフ千葉GKへ直接飛んでいってしまった(直接ラインを割ったんだっけ!?)から事なきを得た。でもサ・・
そう、そんな「ピンチ現象」が起きたこと自体が問題なんだよ。あの、チーム全体としては、ハイレベルな集中力をキープできていたのに・・
もちろん、それ(ボール無しのせめぎ合いでウラを取られたこと!)をピンチだと、体感できているかどうかも重要なポイントだよね。勝負は、ボールがないところで決まる・・のです。
でも、この日のジェフ選手たちは、そんなピンチに陥ったことについて、目の色を変えて話し合って(!?)いたっけ。だからこそ、ジェフ守備ブロックの集中力と機能性が、時間を追うごとに高まっていったというわけさ。
あっと・・またまた脱線。
ということでゲームだけれど、そりゃ、個のチカラの「単純総計」という意味でのチーム総合力では、もちろんINACに軍配が挙がる。そのことについては異論はないでしょ。でもね・・
そう、この日のジェフは、そんなINACのストロングポイントを、忠実に、そして粘り強く潰しまくるんだよ。それは、こんな感じ・・
・・パスをしようにも、そのほとんどのコースが「狙われている」・・だからボールをキープせざるを得ない・・そう、ボールの動きの停滞・・それを狙っ
て、ジェフが協力プレスをブチかましてくる・・そんな状況では、例外なくジェフがボールを奪い返し、すぐさま、効果的なショートカウンターを仕掛けてい
く・・等など・・
もちろん、前にスペースがあれば、個のチカラに長けたINAC選手たちは、躊躇することなくドリブルで突っ掛けていく。
両サイドハーフの高瀬愛実にしても川澄奈穂美にしても、後方から抜群のサポートを魅せるチ・ソヨンにしても、はたまた、両サイドバックの南山千明やベッキーにしても・・
普通だったら、彼女たちが仕掛けるドリブルが危険だからこそ、相手守備の視線と意識を引きつけ、そのことでスペースが出来るし、周りの味方もフリーになる。
そう、そうなったら、INACコンビネーションの独壇場なんだよ。
そのままドリブル突破&シュート(or決定的クロス)にチャレンジしたり、ワン・ツー・スリーといった、ダイレクトのコンビネーションをブチかました
り。そんな、リズミカルなコンビネーションがスタートしたときのINAC選手たちの「ボールがないところでの動き」は、まさに秀逸だね。
だからこそ、一つだけじゃなく、二つ目、三つ目というふうに、スペース攻略のパスコースを(フリーな味方パスレシーバーを!)作り出せちゃうんだ。そう、現ワールドチャンピオンである「なでしこ」のように・・
でも、この日のジェフ選手たちの「意志の強さと集中力」はレベルを超えていた。
決してマークを諦めないし、ボールホルダーには安易に飛び込んでいかない・・抜かれても、外されても、しつこく追いかけつづける・・また、周りの味方も、相手の次のパスレシーバー(スペース)のケアーを怠らない・・
この日のジェフは、素晴らしい組織ディフェンスが機能していたんだよ。
そして、だからこそ、次のカウンターやショートカウンターが抜群の効果を発揮するというわけだ。
要は、崩し切れないINACが、フラストレーションからか、どうしても「前へ重心が掛かり過ぎ」てしまうんだよ。そう、前掛かりな状態・・
そんな状況で、何度ジェフが決定的なチャンスを掴んだだろうか。少なくとも三本・・。でも決め切れない・・。そして・・
ゲームの最後の15分くらいは、もう、どちらが決勝ゴールをブチ込んでもおかしくないという仕掛け合いになった。そんな展開になったら、普通だったらINACが凌駕しちゃハズ。でも・・
そう、ゲームを通して一皮も二皮もむけた(ゲームの中で大きく成長した)ジェフが、攻守にわたって、まさに互角のサッカーを展開しちゃうんだ。そりゃ、観ているこちらは手に汗握る。
とにかく、近年希にみる、内容の充実した勝負マッチになった。ホント、堪能した。
皇后杯が、これだけ盛り上がったんだから、次は天皇杯だぜ。
そこで勝ち残った4チーム(ガンバ、アントラーズ、マリノス、レイソル)は、たしかに「Jリーグ」では数字的に目立った存在ではなかったよね。でも、内容的にもイメージ的にも、まさに強豪と呼ぶに相応しいチームです。
そして争うのが「ACL」となれば、そりゃ、リキが入るでしょ。天皇杯の決勝をラジオ文化放送で解説する予定の筆者だから、いまから楽しみで仕方ない・・っちゅう心境なのです。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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