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2012_J1昇格プレーオフ準決勝・・ジェフ千葉がフェアに「たぐり寄せた」勝利だった・・(横浜FCvsジェフ千葉、0-4)・・(2012年11月18日、日曜日)

・・ハーフタイムのことですが、ロッカーに戻ってきた選手たちが、色々と戦術的なことを話し合っているんですよ・・それを聞きながら、そうそう、正しいじゃネ〜か・・なんて思っていた・・

 ・・彼らの状況把握は、とても冷静で正確だし、後半はこうなるから、こうしよう・・なんてことまで話し合っている・・その内容は正しかったし、とても頼もしく思ったものです・・

 試合後の記者会見で、ジェフの木山隆之監督が、わたしの質問に対するコメントのなかで、そんなことまで語ってくれた。素晴らしい・・

 だから、記者会見を仕切る方の許可も得ずに、つづけて質問してしまった。スミマセン・・

 ・・試合がはじまってしまえば、後は選手に任せるしかない・・だから監督は、選手たち自身が考え、勇気をもって積極的にプレーできるように導いていかなければならないですよね・・

 ・・その視点で、いまの木山さんの発言には、とても重要な意味が内包されていた・・木山さんは、心理マネージメントも含め、選手たちの主体性が向上していくこともターゲットに指導していたということですね??・・

 木山隆之監督は、こんなニュアンスの質問に対して、さまざまな視点がミックスした内容をコメントしてくれた。例によって、行間ニュアンスも含めて、私なりにまとめます。曰く・・

 ・・我々が目指しているのは、しっかりとボールを支配するサッカーです・・相手にボールを奪われたら、なるべく素早く奪い返す・・そんな(攻守にわたって積極的に仕掛けつづける!?)サッカーを志向しながらチームを成長させるために試行錯誤を繰り返してきた・・

 ・・もちろん、うまくいくこともあれば、内容や結果がついてこないケースもあった・・ただ、どんなことがあろうと、根底ベクトルの(やろうとしているチーム戦術の)方向性だけは、まったくブレなかったと思っている・・

 ・・だからこそ、志向する方向性をチーム全体がしっかりと理解し、そのイメージをシェアできるようになっていったと思うんですよ・・それがベースにあっ たからこそ、チーム内での実のあるディスカッションの輪が拡大していったし、チームの意識と意志を、選手たちのなかだけで統一できるようになったと思うん ですよ・・そう、要は、継続こそチカラなり・・ってことですかネ・・

 とても実のある記者会見だった。

 ところで、J2の3位から6位までの4チームが参加する「J1昇格プレーオフ」だけれど、それは、あまり馴染みのない「レギュレーション」に縛られていた。

 準決勝は、3位チームと6位チームが、また4位チームと5位チームが対戦する。そして、それぞれ年間順位の高いチームのホームスタジアムで90分間だけプレーし(延長なし)、その結果、引き分けた場合は、ホームチームの勝ちとなる。フムフム・・

 今日おこなわれた二つのゲームでは、両方とも「アウェー・チーム」が「0-4」で大勝を収めた。

 ゲームを観ていない方々は、たぶん、すぐにでも、こんなコトを連想するでしょ。

 ・・選択肢のないアウェーチームは、フッ切れた(攻守にわたってダイナミズムに溢れる!?)サッカーを展開するしかない・・対するホームチームは、レギュレーションを気にし、なるべく「落ち着いて」ゲームに入っていこうとする・・

 ・・そんなゲーム展開のなかで、積極的に仕掛けつづけたアウェーチームが先制ゴールを挙げてしまう・・もちろんホームチームは、追い付くために、「そこ から」精力的に攻め上がっていく・・ただ、その積極性がアダになってバランスを崩し、アウェーチームに、続けざまにカウンター追加ゴールを決められちゃ う・・

 ・・または・・ホームチームが安定志向のゲームを目指したことで(そんな後ろ向きマインドにはまり込んで!?)、先制ゴールによって心理的なドツボにはまり自滅してしまう・・なんてネ・・

 でも、少なくとも「ニッパツ三ツ沢スタジアム」では、そんな連想とは違うゲームが展開された。

 そう、横浜FCが、ゲーム立ち上がりからガンガンと仕掛けていったんだよ。そう、ものすごい勢いのプレッシングサッカー。

 ・・守りの安定マインドで(受け身の消極マインドで!?)ゲームに入っていったら、必ずしっぺ返しを喰らう・・とにかく、まず先制ゴールを目指して積極的に仕掛けていくぞ・・ってか!?

 もちろん「それ」が正解だよね。

 イレギュラーするボールを、身体のなかで比較的ニブい足を使ってプレーするサッカーなんだから、最後は自由に、そして積極的にプレーせざるを得ない(リスクを冒してチャレンジしていくしかない)。

 要は、本物の心理ゲームであるサッカーでは、心の持ちようが全てのプレーに反映されるっちゅうことです(そして、そのマインドを急にアップダウンさせる ことは難しい!)。もちろん世界の猛者連中だったら、安定志向のプレーから、レベルを超えた「暴力的なまでに攻撃的なサッカー」へと、すぐにでも転換し ちゃうんだろうけれどね。でもサ・・

 わたしは、横浜FCの、そんな積極プレー姿勢を観ながら、「そうそう・・それが大正解だよ・・安定志向でゲームに入っていったら、ろくなコトにならない・・」なんて思っていた。

 そして、ゲームが、双方が仕掛け合うなかで、互いに惜しいチャンスを作り出すような、まさに「動的な均衡」と呼べるエキサイティングな展開へと成長していくんだ。

 もちろん、ノーガードの打ち合い・・なんていう低次元のゲームではなく、互いに、素早い切り替えから、攻守にわたって素晴らしいプレーを展開するんだよ。でも・・

 わたしは、そんなエキサイティングな仕掛け合いを観ながら思っていた。

 ・・「サッカーの落ち着き」という視点では、ジェフに一日の長があるんじゃないか・・

 そのことは、ゲームの立ち上がり数分間に、横浜FCがガンガン仕掛けていくなかでジェフが魅せた、余裕のあるスマートなボールキープ(組織的な人とボールの動き)から感じ取っていた。

 もちろん、とても微妙なサッカーコンテンツのことだよ。それは、もっと言えば、攻守にわたる、ボールがないところでプレーの微妙な質の差・・なんて表現できるかもしれない。

 だから、互いに攻め込み、チャンスを作り出しはするのだけれど、そのチャンスの質にも、微妙な「小さい差」があるって感じていたんだよ。

 とはいってもサ、実際にジェフが挙げたゴールは、そんなロジカルな「微妙コンテンツ」とは、ちょっとニュアンスの違う、どちらかといったら「偶発要素」 の方がより強く匂うモノだった。例えば、横浜GK、シュナイダー潤之介のミス要素の方が目立っていた先制ゴールシーンとかね。

 それにしてもジェフは、「ワンチャンス的」な機会を、ことごとくゴールに結びつけたよね。それは、ハッと気付いたときには、既に「三つ」も積み重ねられていた・・っちゅう感じ。

 そんな一方的なゲーム展開に、もちろん横浜FCは、田原豊、永井雄一郎、カイオといった攻撃選手をドンドン投入することで総攻撃を仕掛けていく。その迫力たるや・・特に田原豊の高さを前面に押し出した勝負プレーなど・・もう、筆舌に尽くしがたかった!?

 でも、ジェフ千葉は、最後の最後まで、立派に守り切った。だから、この結果については、ジェフがフェアに「たぐり寄せた勝利」という表現が相応しい。

 さて、これで決勝は、年間順位が「下」のチーム同士の対戦となった。その順位では、ジェフ千葉の方が大分トリニータよりも「一つ上」だから、来週金曜日に国立競技場でおこなわれる「決勝」は、ジェフのホームゲームということになる。さて〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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