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2013_ コンフェド杯_その11・・望んだとおりの決勝カードにはなったけれど・・イタリアの素晴らしいサッカーにも乾杯!!・・また、尋常じゃない決定力の応酬 になったPK戦・・見応え200%の勝負マッチだった・・堪能した・・(スペインvsイタリア、 0-0)(2013年6月27日、木曜日)

今日は、テレビ観戦。

 ということで、コンフェデレーションズカップ準決勝がはじまるまでテレビ中継されていた、FIFAアンダー20ワールドカップ、スペイン対フランスを観ていました。今回は、トルコでの開催です。

 そのゲームを観ながら、スペインサッカーの基本的なチーム戦術は、若い世代でも、まったく変わらないことを再認識していた。

 そう、できる限りボールを支配しつづけるサッカー。チマタでは、それを、ポゼッションサッカーという。

 もちろんそこでは、ボールを保持するプロセスと、勝負を仕掛けていくプロセスの「メリハリ」をどう取っていくのかがテーマだよね。

 ここで、またまた、シュートへ至るまでの当面の目標イメージを再確認します。

 そう、それは、勝負ゾーンにおいて、ある程度フリーの味方ボールホルダーを演出すること。それこそが、スペースの攻略そのものっちゅうわけです。

 ある程度フリーなボールホルダー。

 それは、仕掛けの起点とも表現できる。そして、そこから、ドリブル勝負や、ワンツースリー・コンビネーションなどで、シュートまで行っちゃうっちゅうわけだ。

 とにかく、仕掛けプロセスのイメージを共有しているスペインは、ボールを動かしつづけることで、相手守備ブロックを揺さぶろうとする。

 もし相手が「乗って」きたら、しめたもの。そんな相手守備ブロックが、スペインのボールの動きに「つられて動く」ことで空いてしまうスペースを(要は、 相手守備ブロックの人数とポジショニングバランスの偏りを!)うまく利用し、そこで出来たウラのスペースを突いていくっちゅうわけです。

 言葉で表現するのは簡単だけれど、「そのレベル」まで、しっかりとボールを保持するのは、ディフェンスの技術が進歩している現在サッカーでは容易なことじゃない。

 それだけ、スペインの局面(ボールコントロール)テクニックが卓越しているっちゅうことだけれど、それでも、そんなスペインの「狡猾なワナ」を体感し、 しっかりと学習しているシニアの強豪チームの場合は、そう易々と守備ブロックのバランスを崩したりせず、しっかりとウェイティングで対処するのが普通なの です。

 そんな「大人」の強豪チームの場合は、スペインにボールを動か「させる」っちゅうイメージでも対処するんだよ。

 そして、次の「勝負所」を予測し、チーム内でボール奪取イメージを共有しながら、「その瞬間」へ向けて包囲網を集中していくなんていう効果的なディフェンスをうまく機能させちゃうっちゅうわけです。

 でも、アンダー20ワールドカップでスペインと対峙したフランスは、若く経験不足ということもあって、まだまだ「対処イメージ」が稚拙だった。

 右サイドを攻略されたり、ロングパス一発でタテのセンターゾーンを割られてしまったりと、守備が不安定な「ヤング」フランス。

 スペインは、中盤でボールが活発に動かしてフランス守備ラインを上がり気味に誘い出しているからこそ、効果的に一発ロングも送り込めるというわけです。

 そんなだから、「2-1」というスペイン勝利も、まさに順当だと思った。

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 そんな、ヤング・フランス代表と比べ、コンフェド杯で、スペインのフル代表と対峙したのは、百戦錬磨のイタリアのフル代表だからね。彼らは、簡単には、スペインのワナにはまったりしないのですよ。

 そして前半は、積極的な「ボール狩り」からボールを奪い返したスペインが、ボールキープから、急激なテンポアップで(タテへの仕掛けパスをキッカケに!)仕掛けていくけれど、イタリア守備は、そんなスペインの攻撃を、ほぼ完璧に抑え込んでしまうのです。

 そして、これぞまさにイタリアのツボ・・っちゅう、危険きわまりないカウンターや(ピルロという天才キッカーの演出による!)セットプレー攻撃をブチかましていくんだよ。

 前半は、例によって、ポゼッションではスペインに軍配が挙がるけれど、実際に作りだした決定的チャンスの量と質という視点では、イタリアが完全に凌駕した。フ〜〜・・

 ということで、前半は、イタリアが「3-0」でリードしていてもおかしくなかった。

 でも、スペイン守護神カシージャスが、そんな決定的ピンチを、奇跡的な(そして経験ベースの落ち着き払った)セービングで防ぐんだよ。

 そんな、「実質的な劣勢」は、選手たちがもっとも切実に感じているはず。だから、時間の経過とともに、スペイン選手たちの表情から、フラストレーションが見て取れるようになった。

 スペインは、ワンツースリー・コンビネーションでタテを割って出ようとする攻撃にこだわり過ぎだった。もちろん、そんな組織コンビネーションに、イニエスタやペドロに代表される危険なドリブル勝負もミックスしていくけれど・・、でも・・

 そう、スリーバックで守備を固めるイタリアの「壁」は、堅牢そのもの。

 彼らには、スペインがイメージする、次の勝負スポットや、そのプロセスが明確に見えている。だから、そこへ先回りしたり、完璧なカバーリングで押さえちゃったりする。

 私は、そんなスペインの、ゴリ押しともいえそうな、ある意味で「型にはまった」仕掛けプロセスを観ながら、もっと、シンプルなロングボールを使うとか、サイドゾーンからのクロスを多用しなきゃダメだ・・なんて、フラストレーションを溜めていた。

 そりゃ、そうだ。何せスペインは、まさに「イタリア守備のツボ」に、ズボッと「はめ込まれて」しまっているんだからね。それじゃ、チャンスを作り出せないのも道理。

 そして、だからこそ、イタリアの攻撃のツボに「も」はまり込んじゃう。そう、必殺のカウンター。

 いまは、ハーフタイム。

 スペイン監督デル・ボスケが、後半に向けて、どのような指示を出すのか、とても興味があるぜ。

 あっ・・後半がはじまった・・

 その前に、もう一つ。イタリアが、やっと本気になったというポイントもある。準決勝まで進出したんだから、もうやるっきゃないっちゅう心境になった!?

 また、バロテッリがいないこと「も」、危機感の高揚や、よりスムーズな組織オフェンスという意味合いも含め、とてもポジティブに作用していると感じる。そう、イタリアが、本来のチカラを存分に発揮しているんだよ。

 ・・なんて書きながら後半のゲーム展開を追いはじめた・・そして、ビックリした・・それは、前半とは、まったく「別物」へと変容しているじゃないか・・

 ・・ゲームが、「普通の強豪同士の一発勝負」ってな、イニシアチブ的にも、チャンスメイクにしても、五分に拮抗した展開になったんだ・・

 ・・とても興味深いゲーム内容の変容だ・・まったく目が離せなくなった・・

 ・・たぶん「その変容現象」には、気候条件も大きく関与していたに違いない・・

 ・・何せ、気温30度に、湿度が60%という、とても蒸し暑い自然環境だったから・・これじゃ、両チームともに、激しい上下動は繰り出しにくい・・

 ・・またスペインも、そんなに前線から激しいチェイス&チェックを仕掛けていかなくなった(いけなくなった!?)・・

 ・・まあそれは、デル・ボスケの指示でもあったと思う・・

 ・・あまり人数をかけて仕掛けていき過ぎたら、イタリアのカウンターに沈められてしまう・・後半は、そのことに、もう少し気を遣おう・・ってね・・

 ・・だから、人数を掛けたボール保持サッカーが影を潜め、逆にイタリアが、ゲームのイニシアチブを握る時間帯を増やしていくような展開になっていったのも自然な成り行きだったかも・・

 ・・そんな拮抗した展開になったから、イタリアにしても、前半ほど効率的&効果的なチャンスを作り出せなくなったというポイントも興味深い・・

 ・・そう、現代サッカーでは、相手守備が整わないうちにブチかましていく(ショート)カウンターが、もっとも効果的なんだよ・・

 ・・だから前半は、まさにイタリアのツボにはまったゲーム展開だったんだ・・でも後半は、ガラリと様相が変容しちゃう・・そして・・

 ・・そう・・逆に、そんな展開のなかからスペインが、カウンターからチャンスを作りだすんだ・・また、交替出場したナヴァスの、シンプルなサイド突破からのクロス攻撃という、それまでになかった(とても効果的な!)仕掛けプロセスも出はじめるんだ・・

 ・・そんなシーンを観ながら、昨日のブラジルが、ベルナールが交代出場し、シンプルなサイド突破からクロスを上げることで、徐々にブラジルペースに戻していった「グラウンド上の現象」に思いを馳せていた・・

 ・・とにかく、スペインの仕掛けプロセスイメージからすれば、ちょっと、仕掛けに変化が出てきたかもしれないと思いはじめた・・

 ・・そして試合は延長へ突入・・

 ・・そこでは、徐々にではあったけれど、再びスペインが、強さを発揮しはじめるんだ・・

 ・・でも、ポゼッションサッカーではなく、より積極的にタテへ仕掛けていくサッカー・・

 ・・もちろんその現象は、中盤ディフェンスにおいて、より体力のある(!?)スペインが席巻しはじめたからに他ならない・・

 ・・最後の時間帯は、何度もスペインが決定的な流れを創りだした・・でも・・

 ・・だから、PK戦では、イタリアに分があると思っていた・・わたしのイメージでは、イタリアの勝負強さが、スペインの「それ」を凌駕しているから・・でも・・

 ・・それにしても、両チームともに、心理的プレッシャーに対する、ものすごいレベルの「抗力」を魅せた・・いや、ものすごいレベルの意志の強さを魅せた・・

 ・・「あの」プレッシャーをモノともせずに、次々と、「意図を込めた」正確なシュートを決めちゃうんだよ・・それも、両GKは、「あの」カシージャスとブッフォンだぜ・・とにかく、シューターの肝の据わり方は尋常じゃなかった・・

 ・・それもまた、私にとって、とても新鮮な「刺激」になった・・あの決定力・・スピリチュアルエネルギーがほとばしる・・本当に、素晴らしい勝負だった・・

 ・・ところで決勝・・

 ・・ブラジルは96時間の休養が取れる・・それに対してスペインは、72時間・・それも、延長PKの末だからネ・・さて・・

 ・・とにかく、これで決勝が、ものすごく楽しみになった・・

 ・・それにしても、「あの」PK戦・・本当に、レベルを超えていた・・目から鱗が落ちる・・フ〜〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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