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- 2013_コンフェド杯_その13(決勝)・・敗れたスペインを観ながら、「微妙なバランス」というテーマに思いを馳せていました・・(ブラジルvsスペイン、 3-0)(2013年6月30日、日曜日)
- タイムアップの笛が吹かれた・・
グラウンド上では、両チームの選手たちが・・、いや、特にスペイン選手たちの方から寄っていって、積極的にブラジル選手たちを祝福していた。とても気持ちのよいシーンだった。
そうそう・・、来シーズンからバルセロナに参加するネイマールには、イニエスタ、シャビ、ペドロといった主力の面々が、特に念入りにスキンシップするシーンもあったね。とても爽やかな雰囲気だった。
この試合だけれど、私は、とにかく、両チームともに、「自分たちのサッカー」を前面に押し出して仕掛け合うに違いないと思っていた。そして、まさにそのような展開になった。
そこには、世界を熱狂させるエッセンスがテンコ盛りだった。とても面白かった。
もちろん・・前半だけのハナシだけれど・・
・・立ち上がりの時間帯・・特に、ブラジルの積極的な前からのプレッシングが目立ちに目立っていた・・もちろん、スペインが展開する人とボールの、素早く広い「動き」を、積極的に抑え込もうというイメージ・・
・・抑え込めなかったとしても、ボールウォッチャーになったり、素早いコンビネーションに置き去りにされること「だけ」は避ける・・そんな強い意志が明確に見える・・
・・それは、ブラジル代表チームが展開した、素晴らしく積極的なサッカーだった・・
・・私は、その「前からの勢い」が、いつまでつづくのだろうと考えていた・・立ち上がり2分のフレッジの先制ゴールも、もちろん、ブラジル選手たちを奮い立たせたに違いない・・
・・でも、徐々にスペインが、例によっての積極的な「組織ディフェンス」からボールを奪い返し、本来の「人とボールの動き」の勢いをアップさせはじめるのですよ・・
・・それは、「さて、ここからだな・・」なんていう期待がふくらんでいった時間帯だった・・前半も、15分が経過したあたりからでしたかネ・・
・・そして実際に、スペインらしい人とボールの動きから、何度か、ブラジル守備ブロックのウラの決定的スペースを突いていったりするんだよ・・でも・・
・・そう、そんなピンチ状況においてブラジル守備ブロックが魅せた、献身的な「追いかけ」や、効果的なカバーリングは、本当に、素晴らしかった・・
・・中心になっているのは、もちろん、攻守におけるチームの重心として抜群の活躍をつづけるダブルボランチ・・ルイス・グスタヴォとパウリーニョ・・
・・この2人の、忠実なチェイス&チェックやカバーリングが素晴らしい機能性を魅せていたからこそ、最終ラインの天才センターバックコンビ(もちろんチ
アゴ・シルバと、ダビド・ルイス)、また両サイドバックのマルセロとダニ・アウベスも、とても効果的にスペインのウラ突きプロセスを潰せた・・
・・互いのアクションが、まさに有機的に連鎖しつづけるブラジルの組織ディフェンス・・それは感動的でさえあった・・もちろん、局面での1対1の強さも含めてネ・・
・・だからスペインは、たしかにイニシアチブは握るけれど、まったくといっていいほど、ブラジル守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを攻略していけない・・
・・ただ1度だけ、スペインが、まさにゴール寸前という決定的チャンスを作りだした・・前半40分のこと・・
・・イニエスタと、オーバーラップしたスペインの左サイドバック、ジョルディ・アルバが絡み、そして最後は、逆サイドでまったくフリーになったペドロにパスが通る・・
・・この状況でペドロは、飛び出してきたブラジルGKジュリオ・セザールと1対1・・そして最後の瞬間・・左足で狙いすましたシュートを放つ・・ジュリオ・セザールは、完全に外され、ボールは、ブラジルゴールへ一直線・・
・・その最後の瞬間のこと・・驚いたことに、ブラジルディフェンダーの「足」が出てきたんだ・・全力で追いついてきたダヴィド・ルイス・・彼の伸ばした足が、最後の瞬間に、ペドロのシュートを弾き出していた・・まさに、奇跡的なカバーリングだった・・
・・大歓声に沸くマラカナン・・
・・そして、その4分後の前半44分にコトが起きてしまう・・ブラジルの追加ゴ〜ルッ!!・・ネイマ〜ルッ!!・・
・・カウンター気味の流れから、まずネイマールがボールを持つ・・そして、切り返し、中央のオスカールへパスを出し、自身は、左サイドでスペースを探す・・
・・左サイドでフリーになったネイマールは、ちょっとポジションを修正して(要は、スッと下がることで!)オフサイドの位置から逃れる・・
・・そして最後の瞬間・・完全にフリーになり、オフサイドの位置からも外れたネイマールへ、オスカールからのスルーパスが通されるんだよ・・
・・そのパスを受けたネイマールは、一旦「持ち直し」、そのまま左足一閃・・スペインゴールの左上角に突き刺さった・・スペインGKカシージャスは、まさに、ノーチャンス!・・ホントに夢のように素晴らしいゴールだった・・
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・・ここで、ちょっと脱線・・
・・前半40分にスペインが作りだしたチャンスと、前半44分にネイマールが奪った追加ゴールのシーン・・
・・これは、両方とも、『カウンター』の状況だったとも言える・・という視点・・
・・エッ・・前半40分のスペインのチャンスも、ネイマールが挙げた追加ゴールシーンも、当事者チームがボールをキープしていたんだぜ・・だから・・
・・いやいや・・前半40分のシーンじゃ、ボールをキープしたイニエスタに対し、ブラジルの3人のディフェンダーが(後方から)強烈なプレッシャーを掛けていた・・
・・またネイマールのゴールシーンじゃ、中盤でボールを持ったパウリーニョ(!?)に、複数のスペイン選手がプレッシャーを掛けた・・
・・この両シーンでは、相手守備が、積極的にボールを奪いに行ったということだけれど・・そこで、次の瞬間に、そのボール奪取エネルギーの「逆」を突かれたっちゅうわけなのです・・だから、状況はカウンターと同じっていうことになるわけです・・
・・実は、ボールを奪い返した次の瞬間から仕掛け上がっていく通常のカウンターよりも、このような「守備の失敗の逆を突かれた!」カウンターシーンの方が、ホントは多いのかもしれない・・なんて思っているっちゅうわけなのです・・
・・ちょっと脱線でした・・
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・・ハナシは前後するけれど・・
・・前述したように、スペインが、ゲームのイニシアチブを握りはじめてからの時間帯では、興味深いテーマを抽出できたのです・・
・・そう、言わずもがなの、ブラジルのカウンター・・
・・もう何度も書いているように、ブラジルのカウンターは、世界一だと思う・・
・・効果的なカウンターを成功させるための最も重要なファクターは、なんといっても「個の才能」だからね・・ブラジルは、「それ」を備えているというわけです・・それも、複数の才能をネ・・
・・ゴールにはならなかったけれど、前半だけで、ブラジルがブチかました決定的なカウンターシーンは、少なくとも4回はあったでしょうか・・
・・オスカールの決定的シュート・・ネイマールの抜け出し・・フッキの突破・・31分には、フレッジが、これ以上ないほど決定的なフリーシュートをブチかました・・などなど・・
・・そんな危険なカウンターを取り仕切っていたのが、前述したダブルボランチ・・
・・特に、パウリーニョだね・・彼らは、後方で効果的ディフェンスを展開しながら、常に「次のカウンター」をイメージしていたに違いない・・
・・でもスペインは、ネイマールやフッキの突破をファールで止めたり、カシージャスが奇跡的なセービングで防いだりと、最後のところで事なきを得た・・
・・それらのカウンターが決まっていたら、前述した前半40分のペドロの決定的シュートシーンに至るまでに、少なくとも「3対0」なんていう大量リードを奪われていたかもしれない・・
・・まあ今日は、スペインの日ではなかった・・っちゅうことだね・・
・・それと、もう一つ・・スペインが展開する、魅惑的なポゼッションサッカーが、原則的に抱えている「大きな脅威」という視点・・
・・要は、彼らほどの人とボールの「動き」を演出するためには、もちろん人数が必要だという視点のことです・・互いの「距離」を縮めるという意味でね・・だから全体的に押し上げる・・
・・逆に言えば、だからこそ、ボールを奪われた「次の瞬間」から展開する「強烈なプレッシング守備」こそが、相手にカウンターを仕掛けさせないという意味も含めて、彼らの生命線だっちゅうことです・・
・・もし「そこ」でボールを奪い返せず、ウラに広がる、太平洋のような広大なスペースを攻略されちゃったら・・そう、この試合でブラジルがブチかましたようなカウンターね・・
・・このテーマは、微妙・・
・・リスキーなサッカーだからこそ、魅力的であり、強い・・でも、そんな「美しく勝負強いサッカー」を高みで維持するためには、本当に微妙なエッセンスを「全て」最高の状態でバランスさせなきゃ、いけない・・
・・ちょっとでも、そのバランスが崩れたら・・フ〜〜・・
・・そう、脅威と機会は表裏一体・・
・・先ほど、スペインのデル・ボスケ監督が、記者会見の壇上で、今日のブラジルは、とても強かった・・逆に我々は、幸運に恵まれなかったなんていうニュアンスの発言をしていた・・
・・デル・ボスケが言う、今日のブラジルが示した「強さ」・・その、コノテーション(言外に含蓄される意味)には、大いなる興味を惹かれるじゃありませんか・・
・・スペイン(バルセロナ)の強さの源泉・・
・・それは、相手ディフェンスの視線と意識を「引きつけ」、次の瞬間には、ドリブル突破や、スーパーな組織コンビネーションで、ウラの決定的スペースを突いていくというイメージだけれど・・
ということで、今度は、そんなテーマ「も」追求してみましょうかね。
敗れたスペインを観ながら、彼らを支えている「微妙なバランス」というテーマに思いを馳せていた筆者でした。
さて、これから、ちょっとブラジルで骨休めしてからドイツへ行きます。それでは、また。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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