トピックス
- 2013_コンフェド杯_その2・・見所豊富な「学習マッチ」ではありました・・(ブラジルvs日本、3-0)・・(2013年6月15日、土曜日)
- 例によって箇条書きでテーマをピックアップします・・
・・まず何といっても、基本的な視点から・・
・・要は、フィジカル、テクニックでは、やはりまだまだ差がある・・だからこそ、心理・精神的な部分と、戦術的な部分(組織サッカーの内実)で対抗していかざるを得ない・・
・・とはいっても、昔のように、個人勝負を前面に押し出していく(強いと思われている!?)チームは、少数派になった・・いまでは、個の天才連中も、攻守にわたるハードワークに精進しつづけるんだよ・・それじゃなければ、内容と結果を、高いレベルで一致させられない・・
・・このブラジルチームにしても、もちろん互いのイメージが連鎖する組織守備からスタートする・・だからこそ、次の攻撃でも、しっかりと人とボールが動きつづける・・
・・そして、だからこそ、ウラのスペースを「動き」で攻略できるし、サイドゾーンを効果的に攻略できる・・
・・もちろん彼らの場合は、ドリブルで突破することで、相手守備ラインのウラに広がる決定的スペースを「も」攻略できる・・
・・もう、何度も繰り返しているけれど、シュートを打つのは目的で、その前段階にける「当面の目標イメージ」は、いかにして、相手のウラで、フリーでボールを持つのかということです・・それこそが、スペースを攻略することと同義なのです・・
・・そして、そのプロセスには、パスコンビネーションで崩していく方法と、ドリブル勝負で相手ディフェンダーを抜き去る方法があるっちゅうわけです・・
でも実際には、もちろん、パスコンビネーションと、個のドリブル勝負やキープ勝負(タメ)などがミックスされているわけだけれどネ・・
・・あくまでも、主体的なプロセスのことです・・どちらが、より強くチーム内で意識されているのかっちゅう視点・・
・・あっと、ちょっと脱線・・ということで、ブラジルと日本の「差」をしっかりと把握したうえで、次のテーマに入っていきまっせ・・
・・それは、ブラジルのネイマールが速い時間帯に先制ゴールをブチ込んだという現象・・それによって、ブラジルは、余裕をもってゲームを演出することが出来るようになった・・
・・ゲームの演出・・というか、どのようにボールを奪い返し、どのようにチャンスを作りだすのか・・というイメージの共有です・・
・・最初の時間帯、ブラジルは、前からボールを奪いに来た・・そしてガンガンと押し込んでいった・・そう、ホームチームだし、とにかく先制ゴールが欲しかったんだね・・そして実際に・・
・・その後も、ブラジルが「前から仕掛けていく」というゲームがつづいていくなかで、彼らも、日本の守備ブロックが、そんなに容易く崩れないことを体感していったはず・・
・・中央を「ブチ破る」ことほど気持ちのよい仕掛けはないよね・・彼らも、それをイメージしていたんだと思う・・
・・でも、うまくいかない・・
・・そりゃ、そうだ・・日本の守備ブロックは、ボールがないところで勝負が決まるという、サッカーの根源的なメカニズムを、深く、とても深く理解しているわけだからね・・
・・そう簡単には、ウラを取られたりしない・・
・・そしてブラジルが、私の目には、特にプレッシング守備での勢いを、少しずつ「落としていった」と映っていました・・
・・中盤のリーダーの号令があったのかは定かじゃないけれど、とにかく、徐々に、中盤での「ブラジルのボール狩り」の勢いが、落ち着いていったと感じたんだよ・・
・・そうしたら、もちろん日本も、人数を掛けて押し上げていくよね・・多分ブラジルは、そんな展開を意図していたんじゃないかと思うわけなのです・・
・・何せ、昨年の対戦では(そのコラムは、こちら)、まさに、そんな日本の前への勢いを逆手に取り、立てつづけにショートカウンターをブチかましただけじゃなく、決定的チャンスを連続して演出し、ゴールまでブチ込んだわけだから・・
・・私は心配していた・・もちろん、この試合でのテーマの一つとして、昨年のゲームで痛い目に遭ったブラジルのショートカウンターを機能させない・・というモノがあったはず・・
・・だから、大人のダブルボランチも、とても注意深く、攻守にわたって、優れたバランスを演出していた・・と思う・・
・・でも、全体的な「重心」が前方に傾きはじめたら、彼らにしても押し上げていかざるを得ない・・そう、ブラジルの仕掛けのツボ・・
・・何度あっただろうか・・たしかに昨年のゲームよりは(とても)少なかったけれど、それでも、例えば前半42分の、内田篤人のミスパスからぶちかまされたショートカウンターとか、失点になってもおかしくないシーンがあったよね・・
・・その後も、何回か、とても危ない「ボールの取られ方」から、必殺ショートカウンターを浴びたっけね・・
・・いつも書いているように、(ショート)カウンターの質は、選手個々の「才能レベル」に拠るんですよ・・もちろん、守備ブロックだけじゃなく、ブラジル攻撃の個の才能も、世界一だからネ・・
・・そしてサ、次のテーマだけれど(このことについてはスコラーリにも質問したけれど・・)・・ブラジルが、素晴らしい組織サッカーで2点目を奪った頃から、彼らは、自分たちのやりたいサッカーを前面に押し出しはじめたと思うんだよ・・
・・そう、美しいドリブルやコンビネーションによる中央突破・・
・・スコラーリのブラジル代表も、組織サッカーが強調されていることで(それがなければ、現代サッカーはどうしようもないんだぜ!・・にもかかわらず!!)ブラジルのサッカーファンからは、ソッポを向かれているんだってさ・・
・・そんなこともあると思うんだけれど、2点目を奪い、ゲームの趨勢が決まってからは、彼らは、意識的に、中央突破にチャレンジしつづけたと思うんですよ・・
・・そして、素晴らしい中央突破からの「美しい」スルーパスで3点目を奪い取った・・だから、このゲームのゴールは、スコラーリさんにとっても理想的な内容じゃないですか・・??・・と、聞いた・・
・・それに対してスコラーリさんは、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた・・曰く・・
・・わざと(組織的ゴールと中央突破ゴールを組み合わせたわけ!?)ではない・・コンパクトな中盤を構成できたからこそ、素晴らしいゴールを奪うことが
できた・・逆に、だからこそ、対戦相手にチャンスを与えなかった・・後半は、日本が攻め上がってきた・・だから、あのような攻め方も出てきた・・ただそれ
だけだよ・・だってサ・・
・・とにかく、ブラジルの強みは、サイド攻撃とミドルシュート、そして(全員がイメージ的に狙いを定めているからこそ効果的にブチかましていける)カウンター攻撃・・だよね・・
・・それも、世界一の個の才能を擁しているブラジルだからこそ、それらの攻撃が、レベルを超えた危険度を魅せつづける・・フ〜〜・・
・・そうそう、テーマとして、もう一つあったっけ・・それは、クロスボールというテーマ・・このことについては、ブラジルにも日本にも、共通していた・・やはりチャンスは、「サイドからの仕掛け」によって、もっとも効果的的に演出することができる・・
・・彼らは、両チームともに、サイド攻撃から(ラストクロスから)惜しいチャンスを作りつづけていたんだよ・・もちろん、後半最後の20分間にブラジルが繰り出した仕掛けプロセスを除いてね・・あははっ・・
・・サイドには、大きなスペースがある・・選手の「密度」が高い中央ゾーンとは違う・・それに、サイドからラストクロスを送り込む場合、中で対応する
ディフェンダーにとっては、ボールとマークする相手を、常に「視野に入れる」ことが、とても困難・・それもまた、サイド攻撃の有効性を、如実に説明してい
る・・っちゅうわけです・・
・・そして最後に、本田圭佑というテーマにも触れておきましょうか・・
・・素晴らしい自信コンテンツによって、前半の立ち上がりは、本田圭佑は、とても輝いていた・・
・・ボールを奪われないし、決定的パスも出せる・・それにフリーキックやミドルシュートも素晴らしい・・日本では唯一、決定的なニオイを放つチャンスの芽を演出できていたよね・・
・・でも、前半も半ばを過ぎたあたりから、彼が放つ「光」から減光していったと感じた・・要は、ブラジルの超一流ディフェンダーたちが、「オッ・・コイツは出来るな・・」と、注意深く、そして協力して潰しに掛かったんだよ・・
・・そして本田圭佑は、ゲームから消えていった・・フ〜〜・・
・・彼自身も言っていたように、組織サッカーを磨くだけではなく、個のチカラを発展させることもまた、日本サッカーが抱える大きなテーマなのです・・
・・そう、攻守のハードワークも、平然とこなしながら、ココゾッ!のチャンスには、勇気をもってチャレンジできるような個の才能がネ・・
ということで、このゲームについては、こんなところです。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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