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2013_天皇杯準決勝・・一発勝負のトーナメントだから「ガマン比べ」も仕方ないけれど・・まあ、それでもテーマはあったよ・・(2013年12月29日、日曜日)

横浜でのマリノス対鳥栖戦だけれど、前半だけ観戦し、ハーフタイムに入ったところで国立競技場へ向けて日産スタジアムを後にした(FC東京vsサンフレッチェ)。

その判断には、横浜でのゲーム展開が、まさに「いつもの構図」だったこともありましたかね。

要は、マリノスが全体的なゲームの流れを掌握し、鳥栖が、鋭いカウンターをブチかます・・といった構図。

それにしても、鳥栖は、素晴らしく進化している。特に守備での集中力がハンパじゃない。

チェイスの勢いだけじゃなく、相手との効果的な競り合いスキルも特筆。また、忠実なカバーリングや協力プレスといったハードワークも、いつものようにレベルを超えているんだよ。

だからマリノスは、全体的にゲームの流れを支配しているとはいっても、簡単にチャンスを作り出せない。逆に、変なカタチでボールを失って、何度も大きなピンチに陥っていた。

今年のリーグ後半戦だけをカウントしたら「トップ」にランキングされる(だと思うけれど!?)鳥栖の面目躍如ってな具合。

そのマリノス対鳥栖戦の後半は、帰宅してからビデオで確認した。

まあ全体的には、鳥栖の「前への勢い」が増幅したという印象はあるけれど、逆に、鋭いカウンターは影を潜めてしまった感があったね。

難しいんだよ、様々な意味を内包する「バランス」を、高みで安定させることは。

後半のゲームの流れの微妙な「変化」についてだけれど、それには、マリノス樋口靖洋監督の、柔軟なゲーム戦術の「調整」もあったんだろうね。

前半は、攻めるけれど、まったくといっていい程チャンスを作り出せなかったマリノスが、後半は、そこそこ、鳥栖ディフェンスのウラを突いてチャンスを作りだしていたからね。

そして最後は、齋藤学から、右サイドをオーバーラップしてきた奈良輪雄太への効果的なサイドチェンジが送られ、そこから、相手ゴール前に入り込んでいた藤 田祥史の足許への決定的なスルーパスと、藤田祥史のダイレクトでの「落とし」から、兵藤慎剛が、見事なダイレクトシュートをブチ込んだ。

それにしても、決勝でリーグ優勝のサンフレッチェ広島と対峙するマリノスは、トップ選手の不在という視点で、とても厳しい状況に陥ったよね。

何せ、契約満了ということで、絶対的ストライカーだったマルキーニョスがチームを去り、この試合では、藤田祥史が、ホイッスルが吹かれた後にボールを蹴ったことで二枚目のイエローを受けちゃったからね(イエロー累積2枚で、決勝は出場停止!!)。

もちろん中村俊輔のリーダーぶりは、相変わらず素晴らしいけれど(この試合では個人技で追加ゴールもゲット!!)、それでも、最前線での「明確」なゴールゲッターが不在じゃね。

私は、こうなったら、端戸仁を入れ、流動的なゼロトップでやるしかないと思っているんだけれど、どうですかね・・

そんな「やり方」には慣れていないかもしれないけれど、前の4人(端戸仁、齋藤学、兵藤慎剛、そして中村俊輔)は、それぞれに、率先してハードワーク「も」ブチかましていけるタイプの、意識の高いプレイヤーばかりじゃないですか。

それに、躍進著しい中町公祐が、後方から(特に中村俊輔を!)サポートするんだよ。

もちろん樋口靖洋監督は、前述した4人には、「オマエたちは全員、攻守にわたって完璧に自由にプレーしていい」って意識付けする。

天皇杯の決勝だからね。中村俊輔を中心に、全員がハードワークに「も」全力を投入するに違いないでしょ。

そんな「視点」でも、天皇杯準決勝を楽しもうと思っている筆者なのです。

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さて、国立で行われたFC東京vsサンフレッチェ広島。

セレッソへの移籍が本決まりらしいランコ・ポポヴィッチが、いみじくも語っていたように、まさに「守り合いのガマン比べ」という勝負マッチだった。

あっと・・。ランコ・ポポヴィッチが、これからも日本サッカーに刺激を与えられるポジションを得たことに、心から乾杯(!!)

もちろんランコは、自分のチームに対してもチト不満がつのっていたということだね。もちろん、PK戦で負けちゃったこともあったわけだけれど・・

ということで、「守り合いのガマン比べ」ゲーム。

要は、両チームともに、出ていかなければならない状況で、微妙に「逡巡」する選手たちの心理が見え隠れしていた・・っちゅうことです。

フッ切れた「攻め上がり」ではなく、チーム内で、人数とポジショニングの「バランス」を考えながら注意深くオフェンスに(サポートへ)参加していく・・ってな感じ。

それじゃ、肝心な勝負所で、十分なエネルギーを放散できるはずがない。そう、人数が足りないだけじゃなく、勝負所のスペースを活用するためのフリーランニングも十分ではなかったということです。

だから、両チームの守備ブロックにとって、御しやすい(両チームの)オフェンスだっただろうね。

また、FC東京にとっては、ルーカスの不在が、痛すぎた。

だから、攻め上がりはするけれど、肝心な勝負所で、相手を突き崩すところまでいけいな。そう、肝心な局面でのドリブル勝負や、「タメ」の演出で、一味も、二味も足りないんだよ。

それでは、サンフレッチェを押し込んだとしても、チャンスを作り出せるはずがない。

そんな東京に対し、サンフレッチェは、何度も、「ザ・ヒロシマ」と呼ばれる、恐怖の「一発タテ勝負パス」を決めかけちゃうんだよ。

具体的なシュートまでいかなかったから、テレビのVTRで注目されることはなかったけれど、そんな「ザ・ヒロシマ」と対峙した、FC東京のディフェンダーは肝を冷やしたに違いない。

そのことは、彼らの表情からも読み取れた。

・・ラッキーにも(スライディングで!)止められたけれど、ヒサトに走られ、そこにパスを合わされちゃったよな・・そしてダイレクトで落とされ、そのボールを思い切りシュートされかけた・・

・・あのシーンは、完璧に崩されたと同じじゃないか・・やっぱりサンフレッチェの一発タテ勝負は、危険なこと、この上ない・・

そんな、一発勝負のタテパスは、主に、森崎和幸や青山敏弘から出されていた。

彼らは、最前線プレイヤーたちと、完璧な「あ・うん」の呼吸がある。そう、イメージ・シンクロ・コンビネーション。

また、こんなシーンも目撃した。

・・高萩洋次郎が、相手にボールを当ててしまい、そのボールが後方へ点々と転がっていく・・でも高萩洋次郎は、そのボールを追い掛け、再び自分のモノにした・・

・・その瞬間、最前線の佐藤寿人が、爆発アクションをスタートした・・最初は斜めに走りながら、次の瞬間には急激に方向をチェンジし、相手守備ラインの背後に広がる決定的スペースへ飛び出していったのだ・・

・・佐藤寿人は、高萩洋次郎が、再びボールを自分のモノにすると確信したからこそ(たぶん、高萩洋次郎とアイコンタクトもあった!?)、タテへのフリーランニングを爆発させた・・

・・そして高萩洋次郎は、追いついたボールを止めることなく、振り向きざまに、佐藤寿人が抜け出していく決定的スペースへ、思い切りのタテパスを蹴った・・

結局、モノにはならなかったけれど、このシーンでも、東京ディフェンスは肝を冷やしたに違いない。

この、佐藤寿人と高萩洋次郎が魅せたイメージシンクロ・コンビネーションこそが、「ザ・ヒロシマ」の絶対的なバックボーンなのだ。そう、共通の勝負イメージング能力。

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ところで、ランコ・ポポヴィッチが連発したコメントに刺激され、こんな質問を投げかけた。

・・いまランコさんは、日本サッカーが発展するためには、攻撃的で魅力的なサッカーが必要だと言った・・まさに、私も同感だ・・

・・世界中のコーチは、美しく勝つことを志向しているモノだ・・そのためにこそ、ランコさんが言うように、常に、リスクにチャレンジしていく姿勢が大事だと思う・・

・・そこで質問だが・・ランコさんは、もう、かなり長く日本にいる・・その間の日本サッカーの推移だが、昔と比べて、リスクにチャレンジしていく姿勢は向上しているのだろうか?・・

それに対して、ランコ・ポポヴィッチは、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・もちろん日本のサッカーは、大きく発展している・・日本代表も、一流の外国代表チームと立派に渡り合えるようになった・・

・・それでも今日のような内容のゲームを(まだ!?)やっていることは大きな問題だ・・それでは未来につながらない・・

・・たしかに良いサッカーを目指したら、負ける可能性が大きくなるかもしれない・・私のチームも、良いサッカーで相手を凌駕していても、結局は(一発カウンターで!?)失点して負けてしまうことも多かった・・でも、それもサッカーなんだ・・

・・我々は、それでも・・と考えるべきなんだ・・とにかく我々は、良いサッカーで勝てるようになるためのチャレンジを止めてはならないんだ・・

プロコーチ、ランコ・ポポヴィッチ。

日本サッカーにとって、とても大事な存在だと思う。その彼が、新しいチームに迎えられた(その予定!?)ことを、心から喜んでいる筆者なのです。

・・ランコ・・今度は、セレッソのゲームを見に行くよ・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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