トピックス


2013_J2_第14節・・三浦泰年さん、安達亮さんとの対話・・(ヴェルディvsヴィッセル神戸、 2-1)・・(2013年5月12日、日曜日)

・・これは、ちょっと微妙な問いかけになるのですが・・

 試合後の、ヴェルディ三浦泰年監督の記者会見。そこで、こんな質問を投げてみた。

 ・・全体的には、ヴィッセルがゲームのイニシアチブを握っていたじゃないですか・・そのなかで、何度か、バーやポストを直撃するシュートを打たれるな ど、決定的ピンチも迎えた・・たぶん選手たちは、(タイムアップに向けて!?)気持ち的にも押しこまれていたと思うんですよ・・

 ・・でも、そんなネガティブな雰囲気が支配していたにもかかわらず、ヴェルディが決勝ゴールを挙げてしまう・・それを演出したのは、右サイドバックの森勇介と、シュートを決めた高原直泰というベテランコンビでしたよね・・

 ・・特に森勇介は、一山を(相手ディフェンダーの二人を!)越えれば、そこに高原直泰がフリーで待ち構えていると冷静に判断し、まさに、そのイメージどおりのクロスボールを送り込んだ・・

 ・・高原直泰の見事なボールコントロールとシュートもそうだけれど、この決勝ゴールは、チームの落ちこんだ雰囲気をブチ破るように、ベテラン二人が演出したわけですが、その意味についてコメントをいただけませんか?・・

 またまた長くなってしまったけれど、高原直泰が「エイヤッ!」という、直線的な高速勝負ドリブルを仕掛けたことで得たPKを、高原直泰自身が決めたヴェ ルディの先制ゴールにしても、高原直泰と森勇介が協力してブチ込んだ決勝ゴールにしても、大ベテランが存在感を発揮した。

 チーム(その若手たち!?)が全体的に受け身になっていく(積極性を奪われていく!)なかで、大ベテランの二人が、勝負所を深〜く意識し、冷徹に、その 機会を確実にモノにしてしまったという現象。そこには、本当に必要な課題に肉薄するコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されていた!?

 とにかく、その現象を、三浦泰年さんが、どのように表現するのか・・。興味があった。

 ちょっと間を置いた三浦泰年さんが、おもむろに話しはじめ、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・まず、高原直泰が、全ての2ゴールを挙げたことに触れたいと思います・・

 ・・それは、私にとっても大事な成果でした・・実は、試合前に、彼と話し合いの機会をもったんですよ・・このところ、自分で勝負していくだけじゃなく、 周りを活かすプレーも良くなってきている・・今度は、周りが、高原直泰を効果的に使えるような工夫もしよう・・ってね・・

 ・・決勝ゴールは、まさに、そのイメージを体現したモノだったと思うわけです・・

 ・・さて・・ということで、このゲームの勝ち方についてですが・・

 ・・実は、後半の時間が進んでいくなかでは、どのようにゴールを奪うのかというのではなく、少なくとも引き分けに持ち込もうという意識の方が強くなって いったんですよ・・でも、そんななかでベテランの二人が協力して決勝ゴールを挙げた・・素晴らしい成果だったのですが、それにしても、危ないシーンを乗り 切れたからこそだったと思っているんですよ・・

 ・・今後は、この決勝ゴールによって選手たちが体感したはずの「勝負所イメージ」を発展させていかなければなりません・・このような厳しい内容の勝負マッチでも、コンビネーションの内容を進化させることで勝ちをモノにできるようにね・・

 ・・あの決勝ゴールでは、高原直泰と森勇介という二人だけのコンビネーションでしたが、そこに、3人目、4人目がからんでいくとか・・これからは、そん な意識アップを目指すだけではなく、この試合での勝ち切ったという成功体感もベースに、トレーニングを積んでいかなければならないということです・・

 フムフム・・

 ところで、ヴィッセル神戸の安達亮さん。彼が、記者会見の冒頭コメントのなかで、何度も、「乱暴な戦い方もやった・・」なんていう表現を使ったんですよ。だから聞いた。

 ・・ヴィッセルでは、タテの関係にあるブラジル人トリオが、ゲームを作っていると感じます・・守備的ハーフのエステバン、攻撃的ハーフのマジーニョ、そして最前線のポポ・・この三人が、攻撃の流れをコントロールしていると思うのですよ・・

 ・・この三人は、もちろん、自分たち好みのリズムでゲームを組み立てようとしますよね・・

 ・・それも効果的なことは言うまでもないですが、ヴィッセルには、日本屈指のヘディングの強者である田代有三がいますよね・・この試合でも、後半には、素晴らしい高さのヘディングでクロスを折り返し、ビッグチャンスを演出したじゃないですか・・

 ・・だから、ヴィッセルのブラジル人トリオも、たまには「高さ」を積極的に使うなんていう攻撃の変化を演出してもいいのではと思うのですが・・

 そんな質問に対して、ヴィッセルの安達両監督が、こんなニュアンスの内容を、例によって誠実にコメントしてくれた。彼の話し方は、とてもインテリジェンスにあふれていた。曰く・・

 ・・ブラジルトリオにも、もちろん得意不得意のプレーはあります・・でも、きちんと話をすると、長いボールを使う仕掛けについても、理解してくれますよ・・彼らも、田代がJ2相手だと勝てるから、その高さが十分に武器になることを分かっているんです・・

 ・・あのチャンスシーンでは、セカンドボールを綺麗にマジーニョが拾い、前向きに仕掛けていきましたよね・・ただ、ロングボールやハイボールを使いすぎ ると、彼らも、自分たちのイメージでプレー出来なくなったり、十分にボールに触れないケースが増えていくこともあるんですよ・・

 ・・そうしたら、彼らもイライラしてきますからね・・そのへんのバランスを、もう少し上手くとれるよになればとは思います・・

 ・・とはいっても、どちらかに偏ることなく、ショートパスコンビネーションを基調に、そこに、タイミングよくロングパスを組み込んでいくなんていう良いバランスを保てるようになることが課題ということですかね・・

 ・・まあ、とはいっても、我々が、ブラジル人トリオという強力な武器をもっているのは確かなコトですからね・・そんな前線のタレントの特長を活かしなが ら、パスで崩す時と、大胆に攻める時・・あっと、先ほどは「乱暴」という表現を使っちゃいましたが、そんな大胆さを前面に押し出すように攻めるときとの両 方を、バランスよく判断して使い分けられるようなチームになっていきたいと思っています・・

 お二人との、とても面白い「対話」ではありました。

===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]