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2013_UCL・・強い「ドイツ」・・(2013年4月25日、木曜日)

まだ準決勝の第一戦だからね、コラムを書くつもりはなかった。でも・・

 そう、「ドイツ」が、それも「スペイン」に対して、これほどの「強さ」をブチかますとは・・

 でも、準決勝の2ゲームともに、「ドイツ」が第一戦の舞台になったということで、まずテレビ中継のカメラワークから。

 このところ、ブンデスリーガも含め、ドイツでのテレビ中継カメラワークが「寄り過ぎ」だと、不満タラタラなんですよ。

 ドイツサッカーのコンセプトは、まさに「ボールのないところで勝負は決まる・・」というものじゃないですか。わたしもドイツ留学中は、そんな、組織サッカーの「何たるか・・」を中心的に学んだつもりだったんですよ。それが・・

 どういうことなんだろうね・・

 聞くところによると、ドイツ全般のサッカー中継を、外国のエージェントに任せた・・それも、アメリカ・・なんていうことになっているらしい。今度たしかめてみよう。

 こちらは、ボールがないところでの、攻守のせめぎ合いが観たいわけです。そう、ボールから離れた最前線での、攻守両方の「小さなアクションの積み重ね」。

 それが、「このカメラワーク」じゃ、まったくといっていいほど「結果」しか確認できない。

 まあ、「何か」が起きたら、VTRで、「広い視野のシーン」をみせてくれるけれど、こちらは、それを「ライブ」で観たいんだよ。

 ドイツを、サッカー的な第二の故郷だと思っている筆者だから、この傾向に対して、とても、とても落胆しているのです。以前は、まったく違ったのに・・

 まあ・・仕方ない・・ということで「ドイツ」というテーマ・・

 まず、全体的なサッカー内容という視点。その傾向として、やはり「ドイツ」対「スペイン」という構図が、そこにはあった・・と思っています。

 バイエルン対バルサにしても、ドルトムント対レアルにしても、ポゼッション(ボール保持)では、スペインに軍配が上がる。要は、パスの総数では、スペインが上回っていたということです。でも・・

 そう、チャンスの量と質では、ホームの「ドイツ」が上回っていた。まあ、ドルトムントの場合は、かなり拮抗してはいたけれどネ・・

 まず守備から・・

 そこで注目されるのが、何といっても、相手からボールを「どのように奪い返すのか」という共有イメージ。

 バイエルンにしてもドルトムントにしても(まあ、このところのドルトムントの場合は、ちょっと変化してきてはいるけれど・・)、国内リーグの、それもホームゲームのときのように、最前線から積極的なプレッシングをブチかましていく・・というモノじゃなかった。

 もちろん、相手が相手だから・・という見方もあるよね。そりゃ、そうだ。相手は、「あの」バルサとレアルなんだから・・

 要は、チェイス(または相手ボールホルダーへの寄せ)&チェックを仕掛けていく「高さ」を、ちょっと「引き気味」にしていた・・ということです。

 もちろん、「リトリート」というニュアンスではなく、あくまでも、ちょっと前線プレッシングを落ち着き気味にした・・とか、組織守備の「爆発ゾーン」をちょっと下げた・・なんていう意味合いかな。

 だから、集中ディフェンスの「エネルギー集約度」が、とても強くなった。そう、ボール奪取ゾーンを、ちょっと下げることで(もちろん最終ラインの位置は変わらない!)、「コンパクト」の度合いを意識的にアップさせた・・っちゅうニュアンスですかネ。

 そんな、メリハリの効いた集中ディフェンスが、両ゲームにおいて、殊のほか効果的に機能した。

 そして、ボールを奪い返した直後からはじまる、エネルギッシュな攻撃。それは、まさにドイツ的。

 寄り道をせずに、素早く相手ゴールへ迫っていく。

 そのプロセスは、もちろん千差万別。

 直線的にタテのスペースをつないでいく高速ドリブルあり、「ズバッ」という速射砲みたいなタテへのグラウンダーパスあり、(相手守備のウラに広がる)決 定的スペースへの一発ロングあり、素早くタテの「人」をつないでいくダイレクトパス(コンビネーション)の積み重ねあり・・などなど・・

 それでも、無為に後方でパスをつなぐというシーンは希だったね。

 とにかく、彼らが脳裏に描く、「エネルギッシュにタテへ仕掛け、素早く相手ゴールへ迫る・・」というイメージが、チーム全体で、深く共有されている。だから、仕掛けとなったら、全員が、同じ「リズムのイメージ」で攻め上がっていける。それが、強みということか。

 そしてフィニッシュ。

 ・・セットプレーや放り込みも含めた、ピンポイントで活用する「高さ」あり・・例えばニアポストゾーンで勝負する、高速ラストパス&ピンポイントのウラ 取りアクションの抜群コラボレーションあり・・例えば、「ココゾッ」のドリブル勝負&シュート(ラストパス)あり・・例えば、シンプルなタイミングでブチ かます危険なミドルシュートあり・・などなど・・

 ということで、「ドイツ」が、両ゲームで、「スペイン」を、内容でも結果でも凌駕してしまった。

 もちろん、そこはサッカー。だから、まだ何も決まっちゃいない。

 とにかく、来週のリターンマッチで起きるであろう、血湧き肉躍る「ギリギリのドラマ」に期待しましょう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

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