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2013_XEROX・・サンフレッチェが魅せた、最終ラインと前気味リベロの素晴らしいポジショニングマネージメント・・(サンフレッチェvsレイソル、 1-0)・・(2013年2月23日、土曜日)

最後の時間帯は、レイソルの仕掛けの勢いが増幅していったことで(その内容については後述)、とてもエキサイティングな展開へとゲームが成長していった。

 でも、「そこ」へ至るまでは、サンフレッチェの「一日の長」が目立つといった展開だったね。

 たしかに両チームともにチャンスを作り出したし、シュート数も互角だった。でも、そのチャンスの「本当の内容」で、サンフレッチェが上回っていたっちゅうことです。

 もちろん後半のレイソルは、一点リードされていることで、より積極的に攻め上がっていった。

 とはいっても、そんな(レイソルにとって)押せ押せの展開でも、彼らが作りだした「本物のチャンス」は、ホント、数えるほどしかなかったよね。逆に、サンフレッチェに効果的なカウンターを仕掛けられてピンチに陥ったシーンの方が印象に残った。フムフム・・

 そんな「有為差」だけれど、サンフレッチェの場合、チーム戦術が、選手のなかで完璧に「消化」されているっちゅうことなんだろうね。

 だからこそ、「それ」に基づいた選手たち自身のアイデアによって(彼らが積極的に考えつづけるなかで)、基本的なチーム戦術がアレンジされ、より効果的な仕掛けにつながっていった結果ということだろうね。

 そんなサンフレッチェを観ていると、継続こそチカラなり・・っちゅう普遍的コンセプトの正しさを再認識できる。いいね・・

 ということで、前述した「僅差」は、やはり、チーム戦術の「熟成度の差」っちゅう結論に落ち着きそうだよね。何せサンフレッチェのメンバーは、もちろん何人かは抜けたとはいえ、骨子となる「機能性プレイヤーの組み合わせ」には、まったく変化はないわけだから。

 そう、森崎兄弟、高萩洋次郎、そして佐藤寿人。それに、このゲームじゃ、左サイドバックの清水航平も、抜群の「気」を吐いていた。まるで、長友佑都・・!? あははっ・・

 さて、この試合からピックアップできるテーマ。まあ・・二つくらいですかね。

 最初は、何といっても、サンフレッチェのスリーバックの機能性からスタートしなければいけない。

 要は、最終ラインの3人と守備的ハーフコンビ(青山敏弘と森崎浩司)による、相互カバーリングの機能性が、素晴らしかったというテーマです。

 まあ、いまのレッズのやり方とかなり近い。それを簡単に表現したら、こんな感じですかね。

 サンフレッチェが攻めるシーンでは、もちろん、水本裕貴、千葉和彦、塩谷司で組むスリーバックは、グラウンドの横幅いっぱいに大きく開く。そうなったら、最終ラインの「横の間隔が広がる」ことで、スペース(隙間)ができちゃう。

 でも、彼らの場合は、主に青山敏弘なんだけれど、その「隙間」を、うまく埋めるんだよ。そして、グラウンド全体をうまくカバーする、限りなくフォーバックに近いポジショニングバランスを演出しちゃうんだ。

 ということで、私にとって青山敏弘と森崎浩司の守備的ハーフ(ボランチ)コンビは、前気味のリベロコンビ・・っちゅうことになる。

 だから、両サイドバックは、攻めとなったら、まさにウイングのように最前線のタッチライン際ゾーンまで張り出していっちゃうんだ。

 それだけじゃなく、水本裕貴のオーバーラップに代表されるように、最終ラインから1人は、いつも前へ押し上げていくんだよ。それが、決勝ゴール場面での、水本の「フリックヘッド(流しヘッド)」として結果につながったんだから素晴らしい。

 水本裕貴は、セットプレー場面だけじゃなく、とても頻繁に、流れのなかでもオーバーラップしていた。前半には、前述のフリックヘッド・アシストだけじゃなく、後方から決定的ミドルシュートまでブチかましたからね。

 とにかく、サンフレッチェの「前気味のリベロコンビ」の機能性は、まさに、完璧に浸透したチーム戦術・・ってな感じなんだよ。

 別な表現をすれば、その「前気味のリベロコンビ」は、タテのポジションチェンジの仕掛け人(マネージャー)とも言えそうだね。何せ、水本裕貴にしても、 両サイドバック(清水航平と塩谷司)にしても、まったく後ろ髪ひかれることなく、仕掛けの最終シーンまで押し上げていっちゃうんだからね。

 「その機能性」の見え方は、レッズの「前気味リベロコンビ」、阿部勇気と鈴木啓太に、とても似通っている。やっぱり、そのチーム戦術アイデアは、ミハイロ・ペトロヴィッチゆずりなのかな・・!?

 そんなサンフレッチェに対し、同じスリーバックで試合に臨んだレイソルだけれど、その、最終ラインと守備的ハーフコンビの「タテの関係」は、まったく違った。

 レイソルの守備的ハーフコンビ、茨田陽生と大谷秀和のイメージは、最終ラインの前でプレーするというもの。だから両ラインの、柔軟なタテのポジショニン グコンビネーションは、ほとんどない。だから、最終ラインから、流れのなかでオーバーラップする選手は、ほとんど見掛けなかった。

 あっと・・冒頭で書いた、ゲーム終盤でのレイソルの仕掛けの勢いの増幅・・という現象だけれど、それは、後半34分から登場した田中順也の、ボールがないところでのダイナミックなアクションがキッカケだった・・と思う。

 その「動き」によって、工藤壮人やレアンドロ・ドミンゲス、はたまた両サイドバックによる、ウラの決定的スペースを突いていくコンビネーションが大きく改善したと感じたのですよ。そう、今年の天皇杯ファイナルの時のようにね・・

 ということで、その現象についてネルシーニョ監督に質問した。ネルシーニョさんは、例によって誠実に、こんな内容をコメントしてくれたっけ。曰く・・

 ・・クレオの場合、最前線にターゲットマンを置くという考え方が基本だ・・私は、クレオの実力をよく知っている・・とにかく彼は、確かなクオリティーの選手なんだ・・ ただ、コンディションが戻っていない・・だから満足に身体が動いていなかった・・

 ・・そのコンディションは、これから良くなっていくから、それに伴ってプレー内容もアップしていくはずだ・・彼にはターゲットマンとしてのポストプレーと高さを期待している・・

 ・・あっと、もちろん田中順也のプレー内容は、いつものようにハイクオリティーだった(だから、アンタのいう、彼によってサッカー内容がよくなったとい う指摘は、正しいかもしれない!?)・・とにかく、いまは、まだまだ道半ばなんだよ・・これから、もっとよくなる・・よくなる・・

 ・・ということでした〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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