トピックス


2014_W杯(20)・・ブラジルとコロンビア・・(2014年6月28日、土曜日)

ウワッ!!!!!

そのとき、観ている誰もが、完璧にフリーズした。

チリが、延長後半ロスタイムに、まさに「ワンチャンス」という決定機を作りだしたのですよ。

アレクシス・サンチェスからのパスを、交替出場したピニジャが叩いたシュート。それは、ブラジルGKジュリオ・セザールも見送るような、誰もが、「あっ・・ゴールだっ!!」と確信するに十分な決定的シーンだった。

ただ次の瞬間、ブラジルゴールのバーが「バシンッ!!」という音ともに大きく揺れた。そう、そのシュートが、バーを直撃したんだ。

この試合だけれど、昨日のコラムで書いたように、こちらで知り合った「アカデミックな連中」とテレビ観戦することにしたのです。

そして、誰もが手に汗握って見つめていた、緊迫の延長後半。それは、まさに唐突に出現したチリの決定的チャンスだったのですよ。

誰もが目を疑い、その瞬間、人だけじゃなく、空気も含めて、部屋のなかにある全てが固まったと感じた。

心臓に悪い勝負マッチだよ、ホントに。

そしてなだれ込んだPK戦。

そこでも、こちらのスピリチュアルエネルギー全てが吸い取られるような、ギリギリのせめぎ合いが繰り広げられた(その展開も、筆舌に尽くしがたかった!!)。

最後の瞬間、私もふくめた部屋の中の全員が、あまりの喜びに、飛び上がって歓喜の雄叫びを上げたことは言うまでもないよね。

もちろん近所は、もうドンチャン騒ぎ。爆竹、ダンス、叫び、踊りまわる人々・・等など、何でもアリという爆発エネルギーの饗宴が繰り広げられたんです。

まさに、めくるめく歓喜と、奈落の失望を、繰り返し体感しつづけたからこそ深く根ざしている本物のサッカー文化ここにあり・・ってな感じ。

フ〜〜・・本当に疲れた。サスガに、W杯の決勝トーナメントだ。

その緊張感は、レベルを超えている。何せ、ホスト国ブラジルが、一試合のなかで歓喜と落胆の間を行ったり来たりしたんだからね。

もちろん私は、「ここでブラジルが敗れでもしたら・・」と、気が気ではなかった。だから、ブラジルがPK戦を制したときは、心の底から喜びがこみ上げてきた。

とにかく彼らには、(ベロ・オリゾンテでの歴史に残る勝負マッチになるに違いない!?)ドイツとの準決勝までは生き残っててもらわなければ・・なんて高慢なことは、まったく思っていなかったよ、念のため・・あははっ・・。

とにかく、神経痛が徐々に良くなっていることで、準々決勝からは、何とかフルに動き回ろうと思いはじめている筆者なのです。

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ところで、試合。

まず何といっても、チリがブチかましつづけた、ダイナミックな「粘り」のプレッシングサッカーを賞賛しなければいけない。

忠実で大パワーのチェイス&チェック・・そして機を見た連動プレス・・。素晴らしい。

彼らは、「それ」をベースに、アレクシス・サンチェスがコアになって、必殺のショートカウンターを繰り出していくんだよ。

たしかに(前半)ゲームのイニシアチブは、ブラジルが握っていた。

そこでのブラジルは、「ボールを持たされている・・」のではなく、明確にゲームをコントロールし、何度か、チリ守備ブロックの、ウラの決定的スペースを攻略するようなチャンスまで作りだした。

でも、そんなゲームの流れのなかでも、チリのプレス&ショートカウンターの勢いは、止まるところを知らなかったんだよ。私は、そんな彼らの忠実でダイナミックなチャレンジ姿勢に、心を動かされていた。

そんな展開を観ながら思った・・

・・チリの連中が、ここまでモティベーションを高くキープできるエネルギー源は何なのだろう・・もちろん相手がブラジルということもあるだろうけれど・・そんな様々なモティベーションのなかで、私は、ワンチャンスという希望があるからに違いないと思っていた・・

・・実際に、前半には二つも決定的なワンチャンスのカタチを作りだした・・それは、彼らの希望を光り輝かせるに十分なパワーを秘めていた・・

そして、1対1で迎えた後半。

今度は、チリが、ゲームの流れのイニシアチブを握りはじめるんだ。

ブラジルは疲れているのか!?

とにかく後半は、チリに主導権を握られる「流れ」がつづいたんだよ。にもかかわらず、十分に押し返していけないブラジル。もちろん、何本かは(フッキの幻のゴールも含めて!)決定機を作りだしはしたけれど・・。

今回のチームは、やはり何かが足りない。

私の、ブラジル人の知り合い連中も、異口同音にこんなことを言っていたっけ。

「今回は、期待はできそうにないよ・・何せ、ネイマールしかいないんだから・・」

まあ・・そういう見方もあるよな。とにかく、中盤のコマが足りないのは確かなだね。

フッキとネイマール、また両サイドバックは武器になっているけれど、オスカールとフレッジ、また守備的ハーフコンビ(ルイス・グスタヴォ、パウリーニョ、またフェルナンジーニョなど)も、チト精彩を欠いていると感じるのです。

チャンスには、もっと個人で勝負したり、タテへの勝負パスをガンガン供給したり・・等など、前への推進力を発揮しなければ・・。

あっと・・試合。

延長に入ってからは、再びブラジルがイニシアチブを握りはじめるんだ。

延長のほとんどの時間は、ブラジルがゲームを牛耳っている。でもチャンスを作りだすことはままならない。逆に・・

そう、冒頭の、誰をもフリーズされた(ブラジルの!)大ピンチシーン。

まさに、忠実なプレッシング&ショートカウンターサッカーを貫きとおすチリの面目躍如ってなシーンではありました。

PK戦でも、ブラジルは、天国と地獄を行ったり来たりした。フムフム・・

このブラジル代表は、「ここから」再生・発展していくのだろうか・・?? とても興味がある。

次は、強い、強い、ペケルマン率いるコロンビアだからね。彼らは、とても高質な組織サッカーを展開する。

その守備は、ハードワークと創造的な「連動ディフェンス」が、素晴らしい機能性を魅せつづけているのだけれど、それを絶対的なベースに、次の攻撃では、人とボールが動かしつづけ、相手の急所スペースを突いていくんだ。

彼らの追加ゴールのシーンが秀逸だった。

右から左へと、素早くスムーズにボールを動かし、最後は、左サイドでボールを持ったアルメロから、ファーサイドゾーンへ走り込んだクアドラードへ正確なク ロスボールが送り込まれ、それをヘッドで中央へ折り返したところに、ロドリゲスが、ベストタイミングで走り込み、ダイレクトシュートを決めたっちゅう具 合。

このゴールは、コロンビアの組織パスサッカーを象徴するモノだったと思う。いや、本当にヤツ等は強敵だよ。もちろん、ホストカントリーのブラジルにとってね。

またまた、楽しみが増えたじゃありませんか。

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何か、ちょっとアタマがふらついている。疲れが出たのかな。まだ22時を回ったところだけれど、今日はもう寝ようと思う。

では、また明日。

あっと明日は、レシフェで、コスタリカ対ギリシャをスタジアム観戦です。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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