トピックス


2014_W杯(4)・・またまた、「世界との最後の僅差」を体感させられて・・(日本vsコートジボワール、1-2 )・・(2014年6月14日、土曜日)

「コートジボワールは、本当に強いチームだぜ・・チーム戦術的にも、とても洗練されている・・たぶんスマートさでは、アフリカでも群を抜いているはずだ・・まあ、とはいっても、個のチカラが素晴らし過ぎることで、組織プレーの流れを阻害することもあるけれどネ・・」

アフリカの事情に詳しいドイツ人プロコーチが、そんなコトを話していた。

そう、コートジボワールは、とても強いチームなんだよ。このゲームでも、誰もがそのことを感じたに違いない。

彼らは、優れた組織サッカーの流れのなかに、タイミングよく個人勝負プレーを効果的にミックスしていく。まあ、たしかに、一時期よりは、組織プレーと個人勝負プレーの「メリハリ」に、ちょっとギクシャクしたトコロも見受けられるようになってしまったけれど・・。

でも、基本的には、アフリカでも屈指の「スマート」なチームなんだ。

その意味は、アフリカの原点であるフィジカルの強さを、かなりレベルで、戦術的な「価値」として転換できていたということ。

要は、アフリカのなかでも、組織サッカー志向が強いチームということです。だからこそ、個のチカラ「も」存分に発揮される。

それに対して他のアフリカチームでは、フィジカルが強いから、そればかり(スピードやパワーにモノを言わせた個人勝負!?)を前面に押し出しすぎるケースが目立つのですよ。

そんな「とても強い」コートジボワールだから、かなり心配していた。日本代表が、歯が立たないようなゲーム展開になることを心配していた。

たしかに、スローインからの展開で本田圭佑が、抜群の「タイミング・シュート」で先制ゴールを叩き込んだけれど、その後は、何度も、決定的なチャンスを作りだされたよね。

要は、チャンスの量と質という視点じゃ、誰もが「1点差で終わってよかった・・」と思ったに違いないということです。

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ということで、このゲームのテーマ。

まず、ドリブル勝負という視点から入ろうか。

以前から何度も書いているように、日本では、ヤヤ・トゥーレやドログバが見せつけたような、「突き抜けるドリブル勝負」は、まだ難しい・・というか、まったく無理だよね。日本には「ホンモノのドリブラー」が、育っていないから。

だからこそ、「なでしこ」のように、組織プレーに徹するしか選択肢がないんだ。

攻撃の目的はシュートを打つこと。そのためにスペースを攻略していく。

そんな目的・目標を成就させるために、日本の場合は、組織パスコンビネーションが、もっとも効果的な武器というわけだ。

でも、このゲームでは、3人目、4人目のフリーランニングが、ほとんど連動していなかった。

相手の「イメージのウラ」を突いていくためには、単純なコンビネーション「だけ」では足りない。組織サッカー的な「プラスアルファ」が必要なのですよ。

二つ目・・

それは、ザッケローニが、「本田圭佑のお家」と心中している・・という視点。

この試合での本田圭佑は、しっかりと守備でも貢献しようとしていた。でも攻撃となったら、どうしても自分のお家に引きこもりがちになっちゃう。

そして、「オイ・・オレにボールを渡して、オマエは走れ・・」ってなプレー姿勢。

もう何度も書いたように、彼の特長を活かすために、周りも、彼に攻守のハードワークを積極的に要求しようとはしていないっちゅうことなんだろうね。

でもサ、そのことによって、様々な意味合いを内包する「組織プレー・エッセンス」が減退していくというマイナス面も無視できないんだよ。

前述したように、組織(パス)コンビネーションサッカーの機能性を高めていくためには、何といっても、ポジションチェンジに代表される、攻撃の変化が必要になるんだ。

もちろんコートジボワールのような必殺ドリブラーがいれば、「個の勝負プレー」でも、守備のイメージを混乱させられるような「変化」を演出できるよね。

でも日本の場合は、そんな「ホンモノのドリブラー」がいない。だからこそ組織サッカー。だからこそ、縦横無尽のポジションチェンジ性能のアップ。でも・・フ〜〜・・

三つ目・・

大久保嘉人が出てきてから、効果的なポジションチェンジが出てくるようになった・・というポイント。

以前にも何度か書いたけれど、南アW杯でも、この二人(本田圭佑と大久保嘉人)は、かなり積極的にポジションを変えていた。

でもそのときは、岡田武史が、本田圭佑に、ワントップというプレーイメージを植えつけていた。

だからこそ、大久保嘉人や松井大輔たちと(また、後方から押し上げてくる長谷部誠や遠藤保仁とも!)スムーズにポジションを変えられていた。

でも、まあ、この試合では、大久保嘉人がワントップということで投入された。でも、そんなことにはお構いなしに(まさにフロンターレでのプレーイメージで!?)強引にポジションを変えていた。

そして、そんな「動き」が出てきたからこそ、香川真司や岡ア慎司の、ボールがないところでの動きの量と質も、より効果的に活かされるようになったと感じていた。

そう、いつも書いているように、本田圭佑のワントップに、動きのある2列目トリオを組ませるっちゅうわけだ。

でもザッケローニは、この試合でも、大迫勇也を先発させ。たしかに動きの量と質という視点では柿谷曜一朗よりも良いから、「トップと2列目センターによるタテ方向の二重ブタ」という極端なマイナス現象は少なくなった。

でも、やはり、大久保嘉人が入ってからの前線の「変化」の方が、相手守備のイメージを攪乱するという視点で、より効果的だったと感じるんだよ。

さて〜〜・・

そして最後のポイントが、逆転されてからのゲーム展開。

要は、このままでは負けてしまう・・という状況にもかかわらず、同点にするだけの「勢い」を醸(かも)し出せなかった・・という視点です。

もちろん、コートジボワールの守備ブロックは、とても屈強だし、とても巧みだよね。だから、そこを突破していくのは至難の業だとは思う。

でも、最後まで突破し切れなくても、コートジボワール守備ブロックを攪乱し、崩していけるかもしれない・・ってな雰囲気さえ醸し出せないのでは・・

私は、その時間帯のサッカーにこそ、「世界との最後の僅差」の本質が内包されていたと感じていたんですよ。

フィジカルしかり、テクニックしかり、戦術しかり、心理・精神的な側面(闘う意志!?)しかり。それら全てのポイントで、少しずつ落ちる・・

まあ、世界との最後の僅差というテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」もご参照アレ。

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とにかく、「ここ」からだぜ。

日本代表には、意地でも頑張ってもらいたい。これまでのように、頑張って立派に闘ったけれど・・ってなコトは、もう沢山だ。

負けたっていいじゃないか。そこに、進化のコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されていれば・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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