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- 2015_東アジアカップ(その5)・・まあラッキーな引き分け・・でも、日本の優れた組織サッカーを誇示できた時間帯もあった・・また、ハリルホジッチの、積極的なタテへの仕掛けというテーマも・・(日本vs韓国、1-1)・・(2015年8月5日、水曜日)
- まあ、皆さんも観られたとおり、紆余曲折はあったけれど(バー直撃シュートなど、韓国の決定的チャンスのことだよ!)、結局はラッキーな引き分けという結果に落ち着きました。
期待していたこともあって、ちょっとガッカリだったかな。
今回は、武漢の強烈な蒸し暑さと、それに対するコンディション調整の期間と状況があまりにも厳しすぎた(大会初日の数日前と、決勝の数日後にJマッチが組まれている!)ことも、大きく影響したよね。
試合・・
例えば韓国の8番とか、前半は、そんな相手の攻撃リーダーをうまく「抑え切れず」に最初の頃は苦労させられた。
でも、失点してから(後述)後半にかけては、拮抗した内容まで持ち直すことが出来た。
それは、それで、有意な成果(内容のある学習機会!)ではあった。
とにかく、後半の「動的な均衡状態」のなかで、実効レベルの高いシュートまで行かれてしまった(!)という意味で、内容的には、韓国に一日の長があったとするのがフェアな評価でしょ。
韓国は、中国戦から8人の選手を入れ替えてゲームに臨んだ。
そのことを聞かれたウリ・シュティーリケ(元ドイツのスーパースターでいまは韓国代表監督)は、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・
・・このトーナメントには、選手たちの持久力を推し量るためにきたのではない・・私は、全員にアピールのチャンスを与えるつもりだ・・そこで彼らが経験を積むことが大事なのだ・・
・・とにかく私は、(チームがガラリと変わったにもかかわらず)最後の最後まで集中して闘いつづけた選手たちのメンタリティーに、とても満足している・・
フムフム・・。
前回コラムでも書いたけれど、韓国チームは、攻守の基本を、とても忠実に(主体的に)、そしてダイナミックに(全力で)遂行しつづける。だから、強い。
そのプレー姿勢には、本当にアタマが下がる思いだ。
まあ、この「韓国選手たちの極限の闘う姿勢」というテーマについては、これまでも、何度となく取りあげてきたし、日本は、「それ」を見習わなければならないとも主張しつづけたつもりでいる。
まあ、いいさ・・
ということでテーマ。
このコラムでは、二つ、取りあげたい。
一つは、北朝鮮戦、そしてこの韓国戦を通して、日本らしい立派なサッカー「も」前面に押し出せた時間帯があった・・というポイント。
北朝鮮戦では、言うまでもなく、前半の30分あたりまでのダイナミックサッカー。
皆さんもご覧になった通り、その時間帯の日本代表は、素晴らしい組織サッカーを展開し、何度も決定的な流れとチャンスを作り出した。
また、この韓国戦でも、PKで先制ゴールを決められてから(前半27分あたりから)同点ゴールを奪うまでの10分間ほど、まさに「これぞ日本サッカー」っちゅう、組織プレーと個人勝負が高みでバランスした高質なサッカーを展開したんだよ。
でもそれ以外では、その「日本らしい」サッカーを展開できていた時間帯じゃなかったけれど、何度かは、「弱気のパスミス」が原因で、韓国にカウンターチャンスをもぎ取られてしまったシーンもあったよね。
その弱気のパスミス・・
ちょっと考えたけれど、本人のためにも、ここは言っておかなきゃいけない・・と、名指しすることにした。
永井謙佑。彼の勝負チャンスで、とても不満がつのったシーンがあったんだ。
右サイドでボールを持った永井謙佑。
自分の前には、カバーリングも含めて二人の韓国選手がいる。だから彼は、センターゾーンへ切り返して展開パスを狙う。でもパスコースが空かない。
そんな状況じゃ、もう「エイヤッ!!」で、ドリブル勝負をブチかますしかないでしょ。
でも彼は、横パスに「逃げ」、それを相手にカットされて決定的なカウンターを喰らってしまったんだよ。
そのシーンでは、パスレシーバーだった倉田秋がタテへ抜け出したことで、コンビネーションの呼吸が合わなかった。
でも永井謙佑にとっては、あんな(相手守備にとって)ミエミエのシーンなんだし、倉田秋がタテへ走ったことで韓国ディフェンダーが釣られたわけだから、まさに最高のドリブル勝負チャンスだったんだよ。
でも彼は、倉田秋がタテへ抜け出したことで「もぬけの殻」になったスペースへパスをしてしまった。もちろんボールは相手に奪われてしまった。
そう、例によっての「ケツパス」。
後半にも、それと同じような「弱気シーン」があった。
そんな「イライラ・シーン」を観ながら、「弱気マインド」こそが、永井謙佑の、これから越えていかなければならない「厚い壁」だと思っていた。
あっと、日本らしいサッカーを前面に押し出せた時間帯もあった・・というテーマだった。
まあ、長いゲームのなかには、サッカーの質と内容について、「色々な波があった・・」ということが言いたかった。
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次が、「ハリルホジッチのサッカーでは、積極的にタテへ仕掛けていく・・」というテーマ。
このハリルホジッチの志向性が、「どうも、うまく理解されていないのかもしれない・・」と感じたから、それをテーマに、とても注意深く、少し書いてみる気になった。
その背景には、試合後の記者会見で、「この試合では、監督が意図するタテへの素早い仕掛けではなく、後方でボールを動かすシーンがつづいたが、それはハリルホジッチ監督のイメージとは違うのでは?」、なんていう質問が飛んだこともありました。
決してハリルホジッチ監督は、ガムシャラに、何が何でも「タテへ〜っ!!」ってなコトを強要しているわけじゃないんだよ。
そうではなく、「状況に応じて最善の策を講じる・・」というチーム戦術の基本的な発想には、何ら変わりはないんだよ。
その基本的な発想を絶対的ベースに、ハリルホジッチの場合は、選手たちに、より強く、「タテへ仕掛けていく可能性を常にアタマに描写している・・」ことを要求しているんだ。
そりゃ、ショートカウンターのチャンスに「勝負のタテパスを出さないのは犯罪」だよね。
でも、その勝負のタテパスを出すための「受け手の動き」が連動していなかったら、タテの決定的スペースへタテパスを出したって無駄(ミスパス)になっちゃうでしょ。
ハリルホジッチは、そんなチャンスにおける「両者の勝負イメージ」を、より強くシンクロ(連動)させようとしているだけじゃなく、そのチャンスを、より積極的に探そうとする意志を活性化させようとしていると思うわけだ。
要は、スペースを攻略してシュートまでもっていくための最善の策・・ということだよね。
だから、選手たちに、常に、「まず」タテへの仕掛けを意識させるっちゅうわけだ。
そのイメージを、チーム全体がシェアしなきゃ、前述したように、「ココゾッ!」のシーンで、バスレシーバーが「寝入ってしまう」ような無様なコトだって起きちゃうでしょ。
逆に、パスを出す方も、受ける方も、常に、次のシチュエーションを(その可能性を!!)アタマに描けてさえいれば、最高のテンションで、最終勝負シーンを「自ら探し出せる」ようになる。
ハリルホジッチは、「行けるとき」に「行かない」のは悪いプレー(発想)であるという理解を、チーム内に徹底させているに違いない。
たしかに、それこそ、いまの日本に欠けている「積極的なリスクチャレンジの姿勢」だと思う。
サッカーでは、「行かなきゃ」、決してミスをすることはないから・・サ。そして、そんな「隠れたアリバイプレー」が非難の対象になることは希っちゅうわけだ。
フンッ・・
ハリルホジッチは、そんな「心理メカニズム」を強調しているに過ぎないと思うのですよ。
そして、ハリルホジッチが代表監督に就任してから、ボールタッチ&キープの時間が短くなり(素早い球離れ≒素早いパス回し)、そしてタテへの仕掛けパスが増えた。
でも、「それ」は、ハリルホジッチが選手たちに「意識させた」プレーの一端に過ぎないと思う。
もちろん「タテ」へ仕掛けていけないコトも多いわけで、そのときは、なるべく素早いボールタッチ&キープで(!)しっかりとボールを保持し、人とボールの動きを加速させるっちゅうわけだ。
だから、本田圭佑にしたって、状況に応じて、彼が得意の、そしてその多くが効果的な「タメ」を演出したっていいし、宇佐美貴史は、(傍目にはエゴイストと映ったとしても!)爆発ドリブル勝負にチャレンジしていってもいいっちゅうわけだ。
あっと・・その宇佐美貴史・・
交替してグラウンドに立ってから、私の、彼に対する期待が天井知らず・・っちゅうことになったんだよ。
何せ、あの蒸し暑さだから、両チームともに(特にディフェンス!)は、かなり疲労しているでしょ。だからこそ、彼のスーパー勝負ドリブルが、最高の武器になる・・っちゅうわけだ。
でも・・
そう、一度だけ、彼が、そのドリブル勝負にチャレンジするチャンスがあったんだよ。でも彼は、ビビって(!?)ボールを持ち直し、横パスへ逃げてしまった。
そのとき私は、記者席のテーブルを、ブチ割らんばかりにブッ叩いた。アタマにきたんだ。
あれほどの見せ場チャンスなんて二度と来ないのに、それを・・
たしかに彼の前には二人の韓国ディフェンダーがいた。でも、だからこそ、勝負ドリブルで突っ掛けていく最大のチャンスだったんだよ。
相手は疲れているからね、組織的に(チャレンジ&カバーを駆使して!)対応することが難しかったに違いなかったんだよ。それなのに・・。フ〜〜・・
あっと・・、またまたテーマから逸れた。スミマセン・・
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ということで、男女ともに、中国戦のゲーム内容と結果に注目が集まることになりました。
気候順応というファクターや、選手たちの意地も含めて、最終日の中国戦が楽しみで仕方なくなったじゃありませんか。
では、また。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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