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2015_カナダ女子W杯(その5)・・全力を出し尽くした「なでしこ」・・いまは、レスペクトと感謝しかない・・(なでしこvsUSA、2-5)・・(2015年7月6日、月曜日)


フ〜〜〜ッ!・・まあ、仕方ない。

私は、「なでしこ」が、アメリカ相手に、持ち前の「粘りの組織サッカー」で互角の勝負を展開することを期待していたわけだから、立ち上がりセットプレーからの2失点シーンでは、もちろん奈落の底に突き落とされた。

奈落の落胆・・

その背景には、「なでしこ」が、サッカー内容的に大きく盛りかえしていた(だから期待が高まった!)からこその悔しさだけじゃなく、2点ビハインドから(あの)USAに追いつき、逆転していくことは、いまの「なでしこ」には、とてもキツイ道程だという自覚もあった。

まあ「なでしこ」に、そんな爆発力が備わっていないコトは、読者の皆さんにとっても、言わずもがな・・の感覚的な現実だったと思う。

ところで、セットプレーからロイドが挙げた先制の2ゴールだけれど・・

「あれ」は、まさにトレーニングの賜物(たまもの)だったんだろうね。アメリカは、そんなセットプレーのパターンを繰り返し練習していたに違いないんだよ。

アメリカは、「なでしこ」とのゲームが、「動的な均衡状態」になることほど危険な「展開」はない・・と肝に銘じていた。

だからこそ、ゲーム展開とは「関係のない!」セットプレーで仕留めることに重きを置いた。

アメリカには、もちろん高さとパワーがある。

でも彼女たちは、ファーストボールを直接決めるという「それ」に頼り切らず、ファーストボールを「流して次を決める・・」とか、「鋭いグラウンダーのボー ルをニアポストスペースへ向けてビシッと突き刺す・・」等といった、変化に富んだイメージで「も」セットプレーのトレーニングを積み重ねたに違いない。

だからこそ、ロイド。

彼女のスターティングポジションは、いつも「後方センター」だった。

「そこ」から彼女は、セカンドボールが流れて落ちてくる(こぼれ球を狙う!)タイミングでゴール前へ飛び込んだり、「ビシッ」と突き刺すような鋭いグラウ ンダーのクロスボールを、ニアポストスペースで「引っかけ」たりするっちゅうイメージで飛び込んでいったんだよ。そう、忠実に。

そのロイドが決めた先制ゴールシーン。そこでは、最初から、後方からニアポストゾーンへ飛び込んでいく(かなり長い距離をスプリントしていった!!)という勝負イメージだった。

その後の展開・・

私は、4対0へとリードを広げていった(ある意味で偶発ファクターの方が大きな!?)二つの追加ゴールではなく、アメリカが、その間に(カウンター気味に!?)作り出した、いくつかの決定的チャンスに注目していた。

スルーパスとドリブルを効果的に組み合わせたコンビネーションチャンス・・クロスボールを直接たたいた決定的ヘディングシュート・・等など。

やはりアメリカは、チカラがある・・というか、不断の努力によって間断なく発展している・・と言った方がフェアな評価だと思う。

彼女たちは、グループリーグでは、ゴリ押し勝負ばかり・・という印象の方が強かった。

でも、ゲームを積み重ねていくなかで、組織プレーと個人の勝負プレーが「高み」でバランスするようになっていったと感じた。

そんな彼女たちは、準決勝ドイツ戦で、自分たちの「進化&深化の内実」を、世界中にデモンストレートした。彼女たちは、「あの」ドイツを、内容でも結果でも凌駕したんだよ。

そのゲーム内容は、私にとっても、ちょっとショッキングなモノだった。

何せ、フィジカルに(もちろん精神的なファクターである意志でも)優れる彼女たちが、「あの」ドイツ以上に、洗練されたテクニックとチーム戦術を自在に駆使するようになったのだから。

そのテーマについては、新連載「The Core Column」で以前に発表した「このコラム」もご参照ください。

そんなアメリカやドイツだけじゃなく、伝統的な強さを秘める北欧諸国、スイスやオランダ、オーストラリア、はたまたイングランドといった「下克上ネーション」。そして、たぶん今大会でトップの実力を秘めていたフランスとブラジル。

とにかく、「なでしこ」がトライしつづける世界挑戦へのハードルが、どんどん高くなっているのは確かな事実だと思うわけだ。

でも・・

そう、「なでしこ」には、優れたテクニック(スキル)と組織サッカー(組織マインド)がある。

プレイヤー全員が、脇目も振らずに「それを目指して集中」できる、具体的なターゲットイメージがあるんだよ。

これから世代交代に入っていく「新生なでしこ」。彼女たちについては、8月に中国(武漢)で開催される東アジアカップで、しっかりと観察しよう。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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