トピックス
- 2015_天皇杯準決勝・・「内容」を、しっかりと「結果」に結びつけたレッズ・・進化へのリスクチャレンジを志向するミハイロ・ペトロヴィッチに乾杯!!・・(レッズvsレイソル、1-0)・・(2015年12月29日、火曜日)
- ・・オレ自身は、何でもいいから(手段を選ばずに!?)タイトルを取りたいと思っているワケではないんだよ・・
ミハイロ・ペトロヴィッチが、私の質問に対して、そう切り出した。
私の質問は・・
・・レッズは、あんなに素晴らしい高質サッカーを展開しているのに、(重要な!?)タイトルには、どうしても手が届かない・・
・・そこには、内容と勝負(結果)の相克という視点もあるだろうれど、ミハイロさんは、そのことについて、どのように考えているのだろうか??・・どうし
て、まだタイトルを取れていないと分析しているのだろう?・・「ツキ」という視点を除いて、お答えいただければ嬉しいのだが・・
そんな質問に、ミハイロが、冒頭のように反応したっちゅうわけだ。彼は、つづける。
・・アンタは、オレの本音が聞きたいんだろ?・・
・・(もちろん、やり方によってはより結果を引き寄せられるだろうけれど!?)・・我々は、自分たちのスタイルを捨ててまで、タイトルを取りにいくという姿勢でサッカーをしているわけじゃない・・
・・ご存じのように、我々は、大金をはたいてスターを獲得するようなことはしない・・要は、クラブの事情にしっかりと配慮したうえで、なるべくカネを使わずに、チームとして優れた機能性を発揮できるような、内容のあるサッカーを追い求めているんだ・・
・・そのコンセプトを追求していけば、おのずと結果もついてくる・・それがオレの仕事のやり方だし、実際に、ある程度の成果も出している・・とにかく、その方向性を追求することが、オレの(そしてレッズを取り巻く人々の!?)プライドなんだよ・・
フムフム・・よく分かる。
- もちろん、これまでのミハイロ・ペトロヴィッチは、レッズとともに毎年、内容だけじゃなく、常に最高に「近い」結果も残している。でも、最後のところで、タイトルに届いていない。それもまた事実なんだ。だから、失礼を承知で、質問を投げたっちゅうわけさ。
もちろん、基本的に、「サッカー内容」というコンセプトを志向するミハイロでも、ゲーム展開が危急状況に陥ったら、柔軟な「采配」を魅せることもある。
彼のコンセプトからすれば、それは、究極のプラグマティズム(実際主義)とでも呼べるモノなんだろうね。
とはいっても、スタートラインは、あくまでも、「内容」が主導するチーム(ゲーム)戦術コンセプトということに変わりはない。
そう、リスクチャレンジのないところに進化もない・・のだ。
ミハイロは、こんなコトも言っていた。曰く・・
・・オレの師匠であるイビツァ・オシムも、同じ「哲学」でチームを進化させる仕事に全力で取り組んでいた・・それは、我々が、その方向性でのみ、日本サッカー(その根源的なサッカー内容)の進化に貢献できると思っているからなんだよ・・
このテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した、「このコラム」を参照していただければ幸いです。
それは、ものすごく難しく、深いテーマではあるよね。
そう、「美しく勝つ・・」という根源テーマ。
ミハイロ・ペトロヴィッチは、そのターゲット(目標)イメージが薄れてきたら、確実にサッカーの質と喜びが失われていく・・と確信しているということだね。
イレギュラーするボールを足で扱うことで、不確実な要素が「テンコ盛り」のサッカー。だからこそ、最後は「自由」に、そして勇気をもって、リスクにもチャレンジしていかなければならない。
そう、最後は、「自由にプレーせざるを得ない・・」のがサッカーなんだ。
勇気・・
ニーチェが、こんな(ニュアンスの!?)格言を残した。曰く・・
・・カネを失ったら、また稼げばいい・・名誉を失ったら、その回復に全力を尽くせばいい・・でも、勇気を失ったら、生まれてきた価値がない・・
フムフム・・
そして、「自由であること」が本質的なサッカーの魅力だからこそ、勇気をもって、その「自由」を自ら掴み取ることにチャレンジしなきゃいけない。
もちろん・・
本当の意味で「自由を謳歌する」ためには、様々なバックボーン要素を満足させなきゃいけないコトは言うまでもないよね。
とにかく、サッカーコーチが、様々に「相克」する要素をうまくバランスさせる、本当に難しい仕事にチャレンジしているということが言いたかった。
また、こんな見方もできる。
サッカーの本質的な「魅力と進化」を追求すればするほど、勝利(結果)を掴み取ることが「遠のいて」しまうケースが多い・・という事実。
でも、手段を選ばずに結果(だけ)を求めたら、サッカーにとっての本質的な魅力(進化していくためのリソース!)を失ってしまうという危険にさらされてしまう。
私は、ミハイロがこれまでに為してきた成果を、ものすごく高く評価しています。
たぶん、これまでの外国人プロコーチのなかでは、イビツァ・オシムと並び、屈指と称えられるほど素晴らしい成果を残していると思う。
だからこそ、レイソルとの準決勝で、最高の集中力と「意志」で叩き込んだ決勝ゴールの瞬間、心の底から湧き上がってくるガッツポーズに、身体が打ち震えた。ホントに嬉しかった。
試合では、絶対的なゲームメイカー柏木陽介のケガという、レッズにとっては、まさに致命的なアクシデントもあった。
彼が抜けてからのレッズは、中央ゾーンが「空いて」しまい、タテ方向のボールの動きや仕掛けのコンビネーションがままならないという、とてもネガティブな現象に見舞われ、うまく攻撃の流れを演出できなくなったのである。でも・・
そう、後半に入ってからのレッズは、「柏木陽介の不在」というアクシデントを、チーム全体でカバーできるように「成長」していったと思うんだ。
中央ゾーンの「空白地帯」は、武藤雄樹、阿部勇樹、はたまた青木拓矢たちが、交替交替で、効果的に機能させられるようになったと思うんだよ。
そんな、選手たちの「主体的な対応力」もまた、彼らに考えさせ、自分たち自身でリスクにもチャレンジしていけるだけの勇気、意識、そして意志を育ててきた「ストロング・ハンド」、ミハイロ・ペトロヴィッチの面目躍如と言えるでしょ。
ちょっと誉めすぎだろうか。
いや、私は、そうは思わない。
この試合でのレッズは、ミハイロがハーフタイムで(選手たちに対して!)言っていたように、攻守にわたって、我慢して粘り強く闘い、そして結果を出したのである。
それ以外にも・・
延長前半での選手交代(興梠慎三の登場で、仕掛け内容に変化をつけられるようになった!)、柏木陽介のケガで急遽グラウンドに登場した青木拓矢の、ゲーム
のなかでの成長(全体的には、まだまだ不満だけれどネ!!)などなど、まだまだテーマはあるけれど、まあ、ガンバとの決勝もあるからネ。
ということで、今日は、このあたりで・・
- PS:例によって、天皇杯の決勝は、ラジオ文化放送で解説しま〜す。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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