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2018_WMの5・・本番だからこそ、西野朗の「本質的な志向ベクトル」が明確に見えてきた・・(コロンビアvs日本、1-2)・・(2018年6月19日、火曜日)

やった〜・・

たしかに、全体的なサッカー内容(特に局面デュエルの内実や、ボールがないところでの動きの量と質)では、コロンビアに一日の長がある。

にも関わらずの、日本の勝利という結果は、とりもなおさず、数的に優位な状況でゲームを進められたことに拠るんだろうね。

それも、前半立ち上がりの3分過ぎに起きた退場劇だったわけだから・・

ところで、そこから日本代表が獲得した、数的に優位な状況だけれど・・

もちろん、皆さんもご存じのように、数的優位が、絶対的に優位だとは言い切れない。

これまでの歴史を見れば、退場というドラマの後、数的に優位に立ったチームのサッカーがボロボロになる・・そして負けてしまう・・なんていうコトは日常茶飯事だったわけさ。

たしかに日本代表も、数的に優位になり、PKを決めてリードを奪ってからというもの、歴史の例に漏れず、チト「様子見の姿勢」に陥ってしまったよね。

そうではなく・・

退場によって数的に優位な状況になったときの、もっとも重要な成功へのファクターは、何といっても、守備(ボール奪取プロセス)の勢いを、何倍にもアップさせることなんだよ。

数的に優位であれば、ボール奪取プロセスへアクティブに参加していく人数は、効果的にポジショニングを調整しながら確実に増やせるというわけだ。

もちろん攻撃でも、決定的スペースへ飛び出していく、3人目、4人目というふうに、効果的に人数を増やしていける。

でも発想のスタートラインは、何といっても、守備プロセスの活性化なのだよ。

それがあって初めて、次の攻撃での、ボールがないところでの動きの量と質もアップさせられるんだ。

でも・・

そう、前半の日本代表は、そんな、戦術的(心理的)メカニズムの基本を、効果的に機能させられていなかったんだ。

一点リードしていることで、「大事にいこう・・落ち着いていこう・・」なんていう受け身のマインドが見え隠れしていたっちゅうことなんだろうね。

不確実なファクターが満載のサッカーでは、よいサッカーを展開するために、積極的にリスクチャレンジにトライしたり、自分たちから「バランス」を崩していったりしなきゃいけない。

それがなければ、決して、進化や深化など望めないことは、歴史が証明している。

とにかく、「それ」が、サッカーの基本メカニズムということが言いたかった。

そんな、攻撃的な創造性マインドが、かなり失われてしまった「前半の日本代表」。

でも・・

そう、ハーフタイムに西野朗が動いたんだ。

このゲームに臨むうえでの、西野朗が押し出した基本的なゲーム戦術イメージは、守備的に闘うのではなく、あくまでも中盤で(ボールを奪い返すプロセスの内実をアップさせることによって!?)イニシアチブを握るサッカーということだった。

それが、ゲームがはじまって3分も経たないうちに、相手が一人退場になり、PKも決めてリードを奪ってしまったのですよ。

たしかに、それじゃ、少し気概が殺がれるのも道理だよな。

そこでは、いくら長谷部誠や長友佑都、はたまた吉田麻也といったリーダーたちが、西野朗監督が望むように(!?)、「攻守にわたって積極的に仕掛けていくゾ・・」なんて「劇」を飛ばしても、笛吹けど踊らず・・ってなことになってしまうのが道理だろうね。

あっ・・と、いまの日本代表で、心理的なリーダーシップを握っているのは、彼らだよね!?

まあ、チームの内実は、外様には分からないけれど・・サ。

とにかく、そんな前半の「体たらく」に不満をもっていた西野朗が、明確に、後半のサッカーのやり方を指示したっちゅうわけだ。

そう、攻守ハードワーク豊富に、積極的に仕掛けていくダイナミックサッカー・・

そして、後半の日本代表のサッカーが変わった。

もちろん、前半に同点ゴールを奪われという心的な背景もあったはず。

それでも、数的に優位な状況は変わらないわけだから、西野朗は、その数的優位というアドバンテージを、ゲームを勝ち切るために、うまく使い切ろうとしたわけだ。

繰り返しになるかも知れないけれど、この勝負マッチに臨んだ西野朗は、守ってカウンターなどといった受け身で消極的なサッカーを明確に否定し、中盤でイニシアチブを握る(積極的&攻撃的!?)サッカーを志向してたっちゅうことだね。

そう、美しく勝つサッカー・・

そして・・

その方向性について、中盤での攻守ハードワークを積み重ねる選手たちが、アグリーし、レスペクトしていることは、観ていて、ビンビンと伝わってくる。

だからこそ、先発メンバーも、「この人選」になったというわけだ。

とはいっても・・

もちろん、前半の「あのタイミングの退場劇」という、予想だにしない出来事もあって、前半のプレー姿勢は、少し低調になったけれど、ハーフタイムの西野朗の指示によって、彼らが目指すサッカーが甦ったというわけさ。

監督と選手との間に、基本的なアグリーメントとレスペクトがなければ、決して、言葉だけで、サッカーが好転することはない。

いいね・・西野朗・・

最後に、少し視点を変えて、西野朗の「個人的なこだわり」っちゅうディスカッションにも簡単に入っていこうかな。

要は、アトランタオリンピックでの「マイアミの奇跡」のあと、その奇跡を結果につなげようと、彼自身が「守りに入った」という視点。

でも結果は、とても残念なモノになった。

その後、「Jリーグ」での西野朗は、常に、「美しく勝つサッカー」を志向していた(・・と思う)。

だから私は、今回のワールドカップには、彼にとっての「総決算」という意味合いも内包されているのかもしれないと思えるようになってきたんだ。

だから、意地でも、リトリートするような「守備的なサッカー」などには入っていかない。

さて、ということで残りのリーグ戦・・

第一戦は、ツキにも恵まれたけれど、2戦目の(先ほどポーランドに勝利した!)セネガルにしても、グループリーグ最終戦の実力チーム、ポーランドにしても、イニシアチブを握って勝つことは、とても難しい作業だと、誰もが分かっている。

だからこそ西野朗は、自分たちがイニシアチブを握るサッカーへのチャレンジを貫くことで、世界中から、「へ〜〜ッ!?」ってな高い評価を引き寄せようとしている。

私は、西野朗が代表監督に就任してからの経緯を観ながら、そう確信しているんだ。

そう、守備的なカウンターサッカーで勝っても、誰も評価しないし、歴史にも刻み込まれないからね。


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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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