湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第16節(2010年8月1日、日曜日)
- 高畠勉監督の素晴らしい「采配」・・(FRvsVE, 3-2)
- レビュー
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- 「素晴らしいタイミングの交替というか・・とにかく高畠さんの采配がピタリと当たったのは確かなことだと思いますよ・・ご自分でも、そのことを明確に意識されていたに違いない・・心のなかでは、快哉を叫んでいたに違いないと思うのですが・・」
「いえ・・この成果は、あくまでも選手たちが最後まで闘って勝ち取ったものですから・・」
この見事な逆転ドラマでは、やはり高畠勉監督の「手腕」にスポットを当てるしかないでしょう・・。
高畠勉監督の決断。まず何といっても、スターティングメンバーから、様々な戦術的意味合いを内包する「コンビネーションの機能性」を熟考して(!?)レナチーニョを外したことが目立っていたよね。
昨シーズンは、攻守にわたる組織的な(汗かき)チームプレーにも精進していたレナチーニョだったけれど、今シーズンは、どうもタガが外れ気味になっているようで、汗かきをサボるような姿勢が目立っていたからネ。
そこへ、ジュニーニョが復帰してきた。わたしも、ちょっと、昨シーズンのような、攻守にわたるダイナミックなコンビネーションは「まだ」望めないんじゃないかな・・なんて不安に思っていたところだったのですよ。そんなことを考えながらスタジアムに到着し、高畠勉監督の決断が記載された先発メンバー票を見たというわけです。ちょっとビックリしながらも、高畠さんの「意志を貫くマネージメント姿勢」に、心のなかで拍手を贈っていたものです。
また、パフォーマンスが十分ではないし、集中力を欠いたプレーも目立つ・・という臨機応変の判断によって、稲本潤一を、スパッと、横山知伸と交代させてしまう。
「名前やイメージ」などではなく、それぞれの戦術的な状況や意図をベースにした、完璧な「現状パフォーマンス」の評価。そんな、高畠勉監督の「強固な意志ベースの采配」を見ながら、これだったらチームがまとまるはずだよな・・なんて思っていた。
そして、高畠勉監督による、クリエイティブで実効ある(勇気と決断力の)采配がつづく。
まず、勝負を懸け、楠神順平に代えてレナチーニョを投入する(先ほど送り込んだ横山知伸を守備的ハーフ=アンカー=のポジションに就かせる!)。そして、その10分後には、疲れの見えた黒津勝を下げ、本来は守備的ハーフの谷口博之を投入するのですよ。
これには、舌を巻いた。そして、心の底から納得し、またまた拍手していた。
高畠勉監督が試合後の記者会見で(珍しく気合いを込めて≒声の張りが違ったよな〜)語っていた。「谷口博之の、ゴール前での得点に絡むプレーには特筆のセンスがあるのですよ。それに、彼ならば、最前線からのディフェンスでも存在感を発揮するだろうし・・」
そんな高畠勉監督の発言の裏側には、「彼だったら、レナチーニョの守備でのサボリや、攻撃でのボールがないところの緩慢な動きもカバーしてくれるに違いない・・」なんていう期待も込められていた(!?)・・あははっ・・
そしてその交替が、ビックリするくらい見事に功を奏してしまう。その、レナチーニョと谷口博之のコンビ「だけ」で、決勝ゴールを叩き込んでしまったのです。
・・後半39分・・谷口からレナチーニョへパスが回される・・ボールを受けたレナチーニョは、例によって(分析の仕方によってはボールの動きの停滞とも捉えられる・・無為な!?)ボールキープ・・でもそのときは、相手が安易にアタックを仕掛けてきたことが、レナチーニョにとってポジティブな現象を引き起こしてしまう・・スッと、そのアタックを外し、どんどん中へドリブルで切れ込んでいくレナチーニョ・・そこには、驚くことに、ドリブルのコースが空いていた・・
・・そして、ボールを持ち込んだレナチーニョは、迷わず左足一閃!!・・キャノンシュートが、ベガルタGKを襲う・・強烈なシュート・・瞬間、ベガルタGKが、そのシュートをファンブルし、前へこぼしてしまう・・そして、そんな現象を(たぶん!?)イメージしていた谷口博之が飛び出して最初にボールに触り、ベガルタゴールへ叩き込む・・
昨日の(レッズに関する)コラムで書いたけれど、そんな、とても「薄い可能性に懸けて動きつづけるアクション」を起こさせるような強烈な意志こそが、成功の(チャンスを実際のゴールに結びつける)原動力なんだよ・・ホントに・・。
そして「その後」は、もちろん谷口博之は、本来の守備的ハーフの位置に入ることで、ベガルタの最後の反撃を断ち切ってしまうのです。
このような、勝敗を分けた「水面下の采配プロセス」を、優れたマネージメントと言わずして、どのように表現するのですか?・・そうか、そうなんだ〜〜・・高畠さんにとっちゃ、選手が、全力で闘いつづけたからこその成果っていうことなんだ〜〜・・まあ・・ネ・・そうとも言えるけれどサ・・でも、まあ・・こちらは(自分勝手な!?)評価者だから、『我かく思えり!』で、上記のように表現しちゃったわけです・・誰か、文句ありますか??・・あははっ・・
とにかく、高畠勉監督の優れた「采配」に対し、心からの拍手を贈っていた筆者だったということが言いたかったわけでした。
ところでベガルタ仙台。
手倉森誠監督は、相変わらず、良い仕事をしていると思いますよ。とにかく、彼らが最後まで魅せつづけた「一体となった(多くのシーンで協力プレッシングを仕掛けつづけるような!)ダイナミックな組織ディフェンス」には、本当に感動させられたからね。
また攻撃でも、そんなダイナミックな協力プレス守備が機能しているからこその、スペースを使い切る、力強い組織プレーが随所に観られた。また、そんな組織プレーだけではなく、自信にあふれた個人勝負プレーも特筆だった。
フロンターレが逆転リードを奪う直前に飛び出した、フロンターレゴール左ポストを直撃するスーパーカーブシュート。それは、右サイドでボールを持った関口訓充が、エイヤッ!という掛け声が聞こえてきそうなフッ切れたドリブル勝負で中央ゾーンへ切れ込んでいったことで放たれた素晴らしいシュートだった。でも、跳ね返ったボールに(仙台の誰かが)反応した決定的シュートは、わずかにフロンターレゴールを外れていったっけ・・。
とはいっても、全体的なサッカー内容では、やはりフロンターレに一日の長があった。だから、順当な結果だとは思う。それでも、二ゴールを先制されてからの逆転ドラマだからね。そこに、フロンターレの底力を感じるわけです。
ちょっと尻切れトンボ気味。でも、少し疲れ気味だから、ご容赦・・
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ところで、またまた、出版のお知らせです。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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