湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第22節(2010年9月12日、日曜日)
- レッズの勝者メンタリティーは着実にソリッドなカタチを魅せはじめている!?・・(FCTvsR, 0-1)
- レビュー
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- ホントに素晴らしかったネ〜、細貝萌と柏木陽介の守備的ハーフコンビ。もう、彼らのことは、クリエイティブ・リンクマン・コンビとか、ホンモノの「ダブル・ボランチ」なんて呼ぶことにしようか。
皆さんもご存じのように、わたしは『ブラジル』に敬意を表し、簡単には、ボランチという言葉を使わないようにしているのです。ホンモノのボランチとは、攻守にわたるチームの「ハンドル」だからね。それに相応しい働きが出来なければならないのですよ。そう・・もちろん、攻守にわたる「フルパワーの汗かき仕事」も含めてネ。
この試合で、何度、細貝と柏木の「ダブル・ボランチ」が、味方を何人も追い越して(!?)攻め上がる相手ボールホルダーを追いかけ続けただろうか(スーパーなチェイス&チェック!!)。それは、もう、ホントに、感動モノでした。
「それ」があるからこそ、チームメイトも、「次」や「その次」でのボール奪取勝負を狙うことが出来るのですよ。
特に細貝萌。わたしは、彼の闘う姿を、全盛期の鈴木啓太と重ね合わせていた。そんな細貝萌も、日本代表チームでのデビューを果たし、まさに、ホンモノの「ブレイクスルー」へつながるベクトル上にいると体感させられました。
もちろん、まだまだ、「チカラの配分」だけじゃなく、攻守にわたる、ボール絡みの競り合いやボールがないところでのポジショニングといった「細かなところ」でのミスや「意志の減退現象」もあるけれど、全体的な発展プロセスとしては、それらのミスを、「次のステップを踏むためのクリエイティブな(次につながる創造的な)失敗」だと捉えることができる。
とにかく、このダブルボランチには、観ていて、ワクワクさせられますよ。
また柏木陽介がコアになった仕掛けの流れも素晴らしかった。要は、彼のところから、『勝負のスタートサイン』とも言える、鋭いタテパスが、何度も、最前線へ供給されるのです。
わたしは、蒸し暑い日本の夏では、組み立てプロセスにおいて「ゆっくり」と「爆発」のメリハリをしっかりと演出するイメージが大事だと書きつづけてきました。そう・・、コントロールサッカー。いまのレッズは、とてもよい感じで、しっかりと自分たちの攻守の『リズム』をコントロール出来ていると思います。
後方で、ゆっくりと、そして確実にボールを動かしているなかで、後方の誰かが、パス&ムーブで、タテのスペースへ抜け出していったり、最前線で動く味方の足許へ、ビシッという正確で強烈なタテパスが通されたり(柏木陽介のタテパスですよ!)、はたまた、後方から、ドカンッ!といったロングパスが最前線に供給されたり・・
そんな「スタートサイン」をキッカケに、人とボールの動きが「爆発的にアップ」するわけです。そして、急激に「仕掛けのテンポ」もスピードアップする。
カウンターや「ショート・カウンター」、はたまたセットプレー以外で(組み立て・遅攻プロセスによって!)シュートチャンスを作り出すためには、そんな「仕掛けリズムの変化」がもっとも効果的なんだよね。
もちろん、チームのなかで、そんな「仕掛けリズムの急激な変化」に対するイメージが明確にシェアされていなければ、コトを成就させられるはずがない。そのために効果的なトレーニングがあり、そのために、監督やコーチの、分かりやすく明確な「キーワード指示」が、とても大事な意味をもってくるっちゅうわけです。そう・・監督やコーチの『指先のフィーリング』だね。
いまのレッズでは、コントロール・サッカーの機能性がアップしているだけじゃなく、「ゆっくり&確実なプレーリズム」と「爆発」のメリハリが、とても魅力的に演出されていると思う。良い、良い・・
あっと・・「爆発サインのタテパス」だけれど、もちろん柏木陽介だけじゃなく、細貝萌や、その他の選手からも出てくるよ。でも・・やっぱり、次の効果レベルを観察していたら、柏木と細貝の「仕掛けタテパス」は、とても魅力的で効果的だと感じている筆者なのでした。
ところでこのゲーム。「勝負」という視点からすれば、レッズにとって薄氷を踏むプロセスだったことも確かな事実だったと思いますよ。だから、フォルカー・フィンケに、こんな質問を投げてみた。
「たしかに、ゲームドミネーション(支配)という視点では、レッズに一日以上の長があった・・それは誰もが認めるところだろう・・でもレッズは、あれだけボールを支配していながら、うまくチャンスを作り出すところまでいけなかった・・逆にFC東京は、前半に飛び出した、梶山のポスト直撃シュートだけじゃなく、後半15分の、大黒のダイビングヘッドシュート、はたまた、一点を追うゲーム終盤でも、少なくとも2本は、決定的チャンスを作り出した・・」
長いね・・わたしの質問・・スミマセンね・・。「いつもだったら、そんな展開で、最後の最後に同点弾を喰らったり、逆転弾をブチ込まれてしまっていた・・でも、この試合では、しっかりと勝ち切ることができた・・そのことの意味について、簡単なキーワードをつかって、うまく表現してもらえないだろうか・・?」
まあ・・でも、質問をしっかりと限定することには意義ありだと思っている筆者なのですよ。ということで、フォルカー・フィンケが出したコメントの「行間ニュアンス」は、こんな感じでしたかネ・・
・・粘り強く勝ち切ることの重要性については(まあ・・勝者のメンタリティーについては)、そのことを意識しつづけるように、選手たちに対して繰り返しアプローチしている・・心理マネージメント的には、良いゲームと、その本質的な(意義深い!?)プレー内容を、ポジティブに、そして強く記憶に残るように、刺激とともに反芻させているということだ・・
・・例えば前節のアントラーズ戦・・サッカーの内容にしても闘う意志にしても、とても素晴らしかった・・でも結果はベストなものじゃなかった・・それでも、そんな内容のあるプレーをつづけていくこと、そして最後まで集中を切らさず、協力して(チーム一丸となって)粘り強くゲームを勝ち切るという意志を最高レベルまで高めることの大事さを、常に言いつづけている・・
・・そしてリーダーシップ・・このチームには、若く、ポテンシャルのある選手が多い・・彼らは、レッズの将来を担う、とても重要な存在だ・・そんな若い選手たちが、サッカーの内容だけじゃなく、結果でも成功を体感する・・そのことには、とても大事な意味があるし、そんな成功体感を積み重ねることで、ホンモノのリーダーシップだって育っていくモノだ・・とはいっても、山田暢久やポンテといったベテランも重要な存在だ・・彼らは、成功を積み重ねることで加速されるチームの効果的な若返りプロセスを、強力にサポートしてくれる存在なのだ・・
こんな感じでしたかネ、フォルカー・フィンケのコメントは。いいね・・
とにかく指揮官は、非論理的だって構わないから(選手たちが理不尽だと感じていたとしても!)、絶対に、結果に「も」強いこだわりを持たなければならないのですよ。そのことが言いたかった。
そして最後に、前回のアントラーズ戦コラムの最後に入れた文章を、ここでも使うことにします。それは、こんな感じの「締めの文章」でした・・
・・まあ・・とはいっても、前述したように、レッズに足りなかった「何か」が、着実に充填されはじめたことは確かなようだ。わたしは、ゲームを観ながら、そのことを「感じ取って」いた。そう、強烈な闘う意志の絶対的ベースになるはずの「何らかのこだわり」・・
・・ボールを奪い返すことに対する「こだわり」・・シュートチャンスを作り出す粘りと汗かきプレーに対する「こだわり」・・そのチャンスを、しっかりとゴールに結びつけることに対する「こだわり」・・そして、それが、勝者のメンタリティーを育んでいく・・
・・たしかに、レッズにとっては残念な「結末」になってしまった(アッ・・このクダリは蛇足だった・・この試合は勝ったんだっけ・・あははっ)・・でも、チームの「自覚の向上」とともに、サッカー内容が良い方向へ進んでいきはじめたことも確かな事実・・
・・だからこそ、強烈な闘う意志(≒何らかのこだわり≒勝者メンタリティー)をもって、粘り強く、勝ち点を積み重ねていくという「地道なプロセス」に対するモティベーションも、ポジティブに高揚していくと思う・・
・・とにかく、これからのレッズのキーワードは、強い意志を内包する「勝者のメンタリティー」と、「地道な勝ち点積み上げプロセスを着実に進んでいくための忍耐力」・・ということだ・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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