湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第26節(2010年10月17日、日曜日)
- 木村和司監督との対話・・(MvsVI, 1-0)
- レビュー
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- 「ふざけた内容のサッカーになってしまった・・ベンチで観ていて、本当に恥ずかしかった・・たしかに結果は良かったけれど、楽しむというコンセプトが、まったく実践できていなかった・・」
会見室の壇上に登るなり、いきなり怒りのコメントを吐き出す木村和司監督なのでありました。だから聞いた。あっと・・、例によって、私と木村和司の発言については、行間ニュアンスも含めて「編集」しました。ということで、ご容赦アレ・・。
「木村さんの怒りは、ホントによく分かる・・わたしも(面白くないことで、半分寝ながら!?)アタマにきていた・・こんな退屈なサッカーは久しぶりだった・・そこで質問・・そんなサッカーになってしまったのは、詰まるところ、木村さんの責任なんですよね??」
「もちろん全ては私の責任です・・そのことは言うまでもない・・」
そこで言葉を切った木村和司がつづけます。
「狩野健太の交代についても、彼自身、何故あんなカタチで交替させられたのか分かっていないと思う(後半33分にチャンスを与えられた=交代出場した=狩野だったが、最後のタイミングで清水範久と交代させられた!)・・とにかく我々は、しっかりとサッカーの内容を締めることで、お客さんに、次にまた来たいと思ってもらわなければならない・・この試合ではヴィッセルの攻撃が単調だったから助かった部分もあったわけだが、とにかく内容がなっていなかった・・とはいっても、決勝ゴールについては、最前線プレイヤーたちによるコンビネーションを意識して繰り返してきたトレーニングが実を結んだと高く評価することは出来るけれど・・とにかく我々はプロなのだから、結果だけではなく、内容も、とても大事なのだ・・」
「その狩野健太のショッキングな交代劇だが、それは、木村さんの(心理)マネージメント姿勢を如実に現したモノだと思う・・もちろん選手たちも、それを体感しているはずだし、その姿勢はシーズン当初から変わっていないと思っている・・先ほどは、木村監督の仕事に対してネガティブなニュアンスの質問になったが、シーズンを通せば、立派なマネージメントであり、それが現在の良い成績につながっていると思うが・・?」
「繰り返すが、結果だけではなく、サッカーの内容も、とても大事なのだ・・そのことに対する深い理解をもって次の鹿島に立ち向かっていかなければならないと思っている・・彼らに対抗するためには、そんな心の準備も重要なファクターなのだ・・監督としての私の考え方については、選手もしっかりと感じ取ってくれているはずだ・・勝ち点3が欲しい・・だから、バックパスや横パスに逃げることも含めて、そういう後ろ向きのサッカーになってしまう・・それでは、プロの資格はない・・」
いいね、木村和司。要は、リスクチャレンジのないところに進歩もない・・攻守わたる(ボールがないところでの汗かき仕事も含め!)しっかりと走りつづける積極プレーこそが、サッカーを本当の意味で楽しめるようになることの絶対的バックボーンなのだ・・という哲学が、彼の基本的な発想だということなんでしょう。そうだよね・・木村さん・・!?
ということで、最後に、こんな質問をしてみた。この会見では、三つもの質問をしてしまった。それも、長い。スミマセン・・ね。
「木村監督に、お話しする機会を持っていただくという意味も含め、もう一つ質問させていただきます(場内・・冷笑も含めて、ちょっと和やかな雰囲気になった!?)・・木村監督が常日頃使われている表現に、サッカーを楽しむというモノがあります・・それは、とても大事なコンセプトだと思うのですが、そのことについて、もう少しご説明いただけませんか?」
しっかりと頷(うなづ)いた木村和司が話しはじめます。
「サッカーを楽しむ(楽しもうとする!)ことは根源的に大事な要素だと思う・・そして、楽しむために何をするかというテーマと取り組むことになる・・もちろん、楽しむための絶対的なベースは、高い技術だが、それを駆使して、個人でもグループでも、そしてチームとしても、攻守にわたって積極的に動きつづけることで、しっかりと個人プレーと組織チームプレーをバランスさせる・・」
「・・結果を意識し過ぎたら、自然な成り行きとして、バックパスや横パスといった安全プレーが横行するようになってしまう・・それでは、プロとして魅せる、楽しいサッカーにはならない・・やはり、リスクチャレンジが大事なのだ・・そんなチャレンジを繰り返していれば、サッカーの本質的な楽しさも、しっかりと理解できるようになるはず・・ボールポゼッションは高いけれど、相手守備ブロックのウラスペースを攻略できない・・ボールは支配するけれど、相手の守備ブロックをしっかりと崩せない・・そんな現象こそが、問題なのだ・・とにかく我々は、楽しいサッカーを追求する・・そして、もちろん勝ち切る・・そんな善循環を達成できれば、本物の楽しみも倍増するに違いないと確信している・・それが、楽しむという表現の意味だと思っている・・プロである以上・・ファンとサポーターのためにも、そんな楽しいサッカーを追求していかなければならない・・」
いいね・・木村和司。実は私の質問では、こんなニュアンスの内容も入れていた。
「シーズン立ち上がりの頃から、木村さんは、サッカーを楽しむという表現を使われていた・・その言葉を最初に聞いたとき、正直、わたしがコーチ現役当時の木村和司が楽しめるようなサッカーじゃ、お先真っ暗じゃネ〜〜か・・なんて思っていた・・でも、実際には、楽しむという表現の内容は、まったく違うモノだった・・」
そんな私の質問にも、ちょっと苦笑いを浮かべただけで、まったく動じることなく立派なコメントを出してくれた。フムフム・・
いまのマリノスには、狩野健太だけじゃなく、渡辺千真という、期待されながらも、持てる実力を発揮し切れていないプレイヤーがいる。彼らが、木村和司がブチかます「強烈な刺激」を内包した心理マネージメントによって、再びブレイクスルーのベクトルに乗れるかどうか・・。マリノスについては、チームの発展プロセスだけじゃなく、そんなテーマでも注目してみようかな。
最後に、長谷川アーリアジャスール。第21節のアルビレックス戦で、アーリアが最前線のポジションを取り、素晴らしいプレーを披露したことを受けて、木村和司に対してこんな質問を投げかけたっけ。「これからも、アーリアをトップで使いつづけるんですよね?」
それに対して木村和司が、明確に、「そのつもりだ」と答えた。そのゲームのコラムは「こちら」。でも、この試合では、アーリアは出場しなかった。ものすごく楽しみにしていた筆者だったから、そのことでも、ちょっとアタマに来ていた・・あっ、いや、ちょっと落胆していた。
まあ、チーム内の「実際の事情」については、外様のわたしに分かるはずがない。それもまた、木村和司による心理マネージメントの一環なのかもしれないしね。でも、やっぱり一言だけ・・。
「ホントに残念だったゼ〜〜・・カズシ〜〜・・!!」
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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