湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第17節(2017年7月2日、日曜日)
- 素晴らしく美しい組織サッカーを魅せたレイソル・・個の能力ベースの勝負強さをブチかましたアントラーズ・・(レイソルvsアントラーズ、2-3)
- レビュー
-
- たしかに、今のレイソルは、ガンバ、フロンターレ、レッズと並び、内容では、リーグ最高峰のサッカーを展開している。
このゲームでは、結果とは関係なく、その事実を、再認識させられた。
フ〜〜ッ・・ホントに、下平レイソルは、美しく、そして強い。
そう、すべてのサッカーコーチが志向すべき、美しく勝つサッカーのことだよ。
そのコノテーション(言外に含蓄される意味)については、ホントにしつこいけれど、「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照してください・・ネ。
・・サッカーの基本はパスゲーム・・だからこそ、攻守にわたって、ボールがないところで勝負が決まる・・
・・攻撃の目的はシュートを打つこと・・ゴールは単なる結果にしか過ぎない・・
・・そして、そのシュートへ至るまでの当面の目標イメージが、スペースの攻略・・
・・それも、個のドリブル勝負で相手を置き去りにしてスペースに入り込む「だけ」じゃなく、ダイレクトパスを駆使した組織コンビネーション「でも」、スペースを突くんだよ・・
・・スペースの攻略・・
・・その意味は、言わずもがなだけれど、相手ゴールに近いゾーンで、フリーでポールをもつ選手を(最終勝負の仕掛けの起点!!)を創りだすということ・・
・・そして、そこに至るプロセスの「王道」こそが、人とボールをしっかりと動かす組織コンビネーションっちゅうわけだ・・
・・だからこそ、なるべく多く、数的に優位なカタチを演出しつづけるという目標イメージを、チーム全員がシェアしていなきゃいけない・・
もちろん、「組織プレー」と「個の勝負プレー」のハイレベルなバランス・・というコンセプト(基本的な考え方)は、大原則だよ。
そう、どちらかに偏り過ぎるのは、様々な意味で、物理的にも心理・精神的にも、健康的じゃないっちゅうことサ。
念のため、断っておくけれど・・ネ。
へへっ・・
ということで、この試合は、(大枠の傾向として!!)「組織サッカー」が、個の才能を前面に押し出す「個の勝負のブツ切りサッカー」と対峙する・・っちゅう構図になった。
そりゃ、金崎夢生、ペドロ・ジュニオール、レアンドロ、レオ・シルバ・・なんていう、蒼々(そうそう)たる個の才能を擁しているんだから、彼らの才能を「最大限、効果的に活かすサッカー」をやらない手はない。
それは、よく分かるんだ。
実際、大岩剛新監督が就任してからのアントラーズは、負けていないからね。
でも・・
そう、そんな優れた個の才能を擁しているからこそ、組織サッカーのエッセンスを「もっと」採り入れるべきだと思っているわけなのさ。
こんな見方をしているのは、私だけじゃないと思いますよ。
ということで、レイソル・・
それにしても、彼らのサッカーは、ホントに良いね。例えば攻撃陣のイメージ。
最初は、ゼロトップでスタート。
クリスティアーノ、伊東純也、武富孝介、そして「あの」突貫小僧、中川寛斗が、まさに縦横無尽に動き回り、攻守にわたって躍動するんだよ。
そんなふうに「ポジションなし」ってな感じになったら、互いの、ポジショニング&人数のバランスが崩れ気味になってしまう・・!?
いやいや、そこが、レイソルの凄いところなんだ。
彼らの場合は、必要に応じて、人の「集散」が、ものすごく高い実効レベルで、創造的に「回り」つづけるんだ。
観ているだけで、惚れ惚れさせられる。
それでいて、前述したように、必要に応じて、ボールホルダーへ(次のパスレシーバーへ!?)スッと寄ってサポートしたり、逆に、スッと離れて、逆サイドのスペースへ入り込んだり。
レイソルが織りなす、人とボールの動きの量と質は、まさに天下一品だね。
そういえば、そんなレイソルについて、何度か、賞賛のコラムをアップしたことがあった。
そこでは、彼らのサッカーが、リーグ最高峰であると素直に認めた上での質問もあった。
そのことについては、第13節(レソイルvsアルディージャ、4-2)のコラムを参照してください。そこでは、第11節(FC東京戦)のコラムへのリンクボタンもありまっせ。
あっと、「ゼロトップ」でスタートしたレイソル・・という話題だった。
そのレイソル前戦が、ディエゴ・オリヴェイラを投入したことで、かなりエッジの立った「ワントップ」へと変容したんだよ。
ディエゴ・オリヴェイラだけれど、隣同士でおしゃべりしながら観ていた大住良之さんも、「ディエゴ・オリヴェイラは、イメチェンだね・・あれほど出来るとは・・以前観たときと大きく様変わりしたね・・」なんて言っていた。
私も同感。彼が入ったことで、レイソルの攻め方イメージにも、変化が出た。
だから、アントラーズ守備ブロックの「イメージ」も、少し混乱しかけた!?
そう、その攻め方イメージの「変化」が、何度かの決定的チャンスにつながったんだよ。
この、レイソルが仕掛けた、実効レベルの高い戦術イメージ的な「変容」は、私の学習機会としても、とてもインプレッシブだった。
ところで、アントラーズ・・
私は、アントラーズの勝利を腐(くさ)すつもりなど、毛頭ないよ。
彼らもまた、自分たちの底流にある伝統の勝負強さを魅せたわけだし、そのことについては、下平隆宏さんも素直に認めていた。
まあ、でも・・
そう、あれ程の才能を擁しているんだから、もっともっと高いレベルのサッカーを目指すべきだと思っているのは私だけじゃないというテーマは、押さえておく必要があると思うのさ。
大岩剛さんも、そのテーマを考えていないはずがない。でも今は、「勝ち点」の方が大事・・!?
とにかく、その視点でも、今後のアントラーズに注目していきましょう。
============
最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
-
===============
重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
==============
ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
-
-
-
-