湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2017年4月30日、日曜日)

 

立派な粘り勝ちを収めたアルディージャ・・脅威と機会は表裏一体というコンセプトを再認識すべきレッズ・・(アルディージャvsレッズ、1-0)

 

レビュー
 
「この勝利が(その戦いのコンテンツが!?)次につながるかは、分かりませんが・・」

記者会見で、アルディージャを率いる優秀なプロコーチ、渋谷洋樹さんが、そんなことを言った。

だから、「これが最後の質問でした・・」って会見を終了しようとする司会の方に、(延長の!?)最後の質問をゴリ押ししようとした。でも結局は断られてしまった。チト残念・・

私がテーマにしたかったのは、この「次につながるかは分からない・・」という部分のコノテーション(言外に含蓄される意味)だった。

要は、渋谷洋樹さんが、今日のレッズとの闘いを、純粋な戦術サッカーと考えていたのかどうか・・という視点。

・・相手はとても強いレッズ・・また我々は、今シーズンまだ一勝も挙げられていない・・それに、このゲームは、とても重要な埼玉ダービーじゃないか・・

そんな(心理的・社会的・戦術的な!?)バックボーンがあったからこそ仕立て上げた「純粋な」ゲーム戦術だった!?

でも・・

そう、私は、アルディージャにとってこの勝利は、様々な意味合いで、とても大きな「心理的&戦術的ブレイクスルー」として機能するに違いないと確信しているのだよ。

決して、その場限りの(対レッズ用の!)戦術サッカーに過ぎなかったわけじゃありません。

強烈な意志をブチかます「ギリギリの闘い」で成果を挙げた。だからこそ、それが、自分たちがやってきた(考える、意志の)サッカーに対する自身と確信ベースになったと思うわけさ。

とにかく、渋谷洋樹さんに率いられたアルディージャは、とても立派な「粘りの戦術サッカー」を、最後の最後まで、全身全霊で貫きとおしたんだよ。

全身全霊プレー・・

もちろんソレは、局面での、ボールをめぐるデュエルや、カウンターチャンスに飛び出していく(多くの人数を掛ける!)リスクチャレンジ姿勢などなどに、如実に投影されてくる。

どうだろうね・・

このゲームでは、「実質的なゴールチャンスの量と質・・」という視点で、アルディージャが優っていたんじゃないだろう。

とにかく、カウンターチャンスを「感じた」アルディージャ選手は、誰かれ構わず、ガンガンと押し上げていったんだよ。そう、勇気(強烈な意志!)。

それも、まだボールを奪い返せるかどうか分からない時点で「既に」、前へ重心を移している。

もちろん、レッズが魅せる「局面デュエルの内実」も、十分なレベルにあったよ。

でも、自分たちにチャンスがありそうな局面で、アルディージャ選手たちがブチかましつづけた「爆発的なボール奪取エネルギー」には、次元を超えた「何か」を感じていたんだ。

たぶん、ボール奪取デュエルの内実(結果も含む!)では、レッズに軍配が挙がるでしょ。

でも、ボールを奪い返してからの、間髪を入れない前へ仕掛けていくアグレッシブな攻撃エネルギーという視点では、明らかにアルディージャに分があったと思うわけだ。

ということで、ここからは、レッズ・・

私は、決勝ゴールをブチ込まれるまでの彼らは、自分たちがゲームをコントロールしている(ポゼッションでは数段上という)体感ベースで、徐々に、その仕掛けプロセスが、緊張感のない「ステレオタイプ」に陥っていった・・と感じていた。

もちろんツボにはまれば、人とボールが、スムーズに、広く動く組織コンビネーションや(両サイドの)ドリブル突破などをベースに、とても危険な仕掛けプロセスから、何度かは決定的チャンスを創りだした。

でも、実質的な「ゲームコンテンツの推移」として、アルディージャ守備の、とても忠実で粘り強いプレーに、抑え込まれるシーンが増えていったコトも確かな事実。

そしてそのことで、全体的なゲームの(内容と勝負の!)イニシアチブも、アルディージャに握られるようになっていったんだ。

そして・・

そう、後半にペースアップしたアルディージャに決勝ゴールまでブチ込まれてしまうんだ。

でも・・

そう、そこから、やっと、本当にやっと、レッズが覚醒し、本来の「積極リスクチャレンジ」あふれる攻撃サッカーを展開しはじめたんだ。

もちろんベースは、人とボールが、スムーズに、広く動きつづける、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーション。

そして、それによって攻略したスペースから(ある程度フリーなボールホルダーが!!)、ラストパス(クロス)やドリブル突破を仕掛けていくんだよ。

そこには、レッズ本来の「迫力」が凝縮されていた。

FC東京戦で(そこでは立派な守備で勝ちきったけれど・・)書いたように、もし失点してしまうという「究極の刺激」によって、(落ち着き過ぎた!?)彼らの攻撃が、何倍にも活性化するかもしれない・・そんな気持ちの高揚が「次」につながる・・というわけさ。

どうだろうね・・

これから暑くなるし、(相手も含めて!)全体的な運動量はダウンしていくでしょ。

そんな厳しい環境のなかでは、効率的&効果的(!)にイニシアチブを握ることと、勝負所での急激なベースアップで、ダイレクトパス・コンビネーションを仕掛けていくような、メリハリの効いたサッカーが求められるよね。

でも、「落ち着き過ぎた」サッカーから、急激にテンポアップするのは、簡単じゃない。

何せ、フィールドプレイヤー10人の「仕掛けイメージ」を活性化し、十分にシンクロさせなきゃいけないわけだからさ。

だから、(フロンターレ対エスパルス戦で書いたように!)戦術サッカーと解放サッカーを、うまく使い分けられるようになること「も」、戦術レベルアップのターゲットかもしれないよね。

とにかく、素晴らしいサッカーで「J」を席巻しているレッズにとってこの敗戦は、まさに、アタマから冷や水をブチかまされたに等しいだろうね。

でもサ、そんな「ネガティブ刺激」によって、彼らのサッカーが、再び進化&深化ベクトルを突っ走りはじめることも確かだろうから・・ね。

そう、脅威と機会は表裏一体・・

だから、次のアントラーズとの「首位決戦」が、いまから楽しみで仕方ないっちゅうわけさ。

ということで、最後は、冒頭の発言とシンクロさせてください・・ね。

この立派な「粘りの勝利」は、心理・精神的にも、社会的にも、そしてチーム戦術的(リーグプロセスの戦略的!?)にも、確実に「次」につながりますよ、渋谷さん・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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