湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第13節(2020年8月30日、日曜日)

 

まあ、たしかに、「あの堅いサッカー」のセレッソだから、勝負には強いよな・・(横浜FCvsセレッソ、1-2)

 

レビュー
 
惜しかったネ〜・・横浜FC。

「あの勝負の流れ」だったら、もしかしたら同点まで・・なんて、期待がふくらんだよ。

そんな「希望の流れ」を創りだした一人が、交替出場した、中村俊輔。

もちろん全体的な運動量やスピードでは、衰えは隠せない。

でも・・

そう、ボールをもったら、例によっての「魔法の雰囲気」を放散する。

例えば、こんなシーン・・

後方でボールをもった中村俊輔に、複数の相手がプレッシャーをかけてくる。

そんな状況で、例によっての「ノールック」で、角度のあるタテパスを、正確に、前方でフリーになっているチームメイトの足許に通しちゃったりする。

また、組み立ての流れのなかで、これまたノールックで、相手の予測を超える、効果的な展開(スペース)パスを供給する。

ダゾン解説の中田浩二も、「上手いですね〜・・」なんて、感嘆の声を上げていたっけね。

まあ、わたしにとって中村俊輔は、ある時期、日本サッカーの完璧なアイデンティティ(誇りリソース)だったわけだから、どうしても、彼に肩入れしちゃう。

その中村俊輔については、かなり以前、「The Core Column」で、「こんなコラム」をアップしたことがあったから、そちらもご参照あれ。

ということで、試合。

とても優秀なストロングハンド、下平隆宏に率いられた横浜FC・・

彼らは、前年の「J2」で鍛えられた、現実的で、かつ積極的な「ボール奪取プロセス」を絶対ベースに、人数をかけた(勇気とリスクチャレンジあふれる!)攻撃を仕掛けていく。

その、「解放」されたサッカーには、下平隆宏の哲学が集約されている。

だから選手たちも、あくまでも自分主体に、攻守ハードワークとリスクチャレンジのチャンスを探しつづけている。

だから、観ている方にとっても、とても魅力的な攻撃サッカーっちゅうわけだ。

対するセレッソ・・

いままで何度か書いているように、攻守にわたって、「爆発」のない、石橋を叩いて渡るような「完璧バランス」を追い求める戦術サッカー。

私が、そう表現したことの意味合いは・・

あのレベルの選手能力からすれば、もっと魅力的な攻撃サッカーができるはずなのに・・っちゅう、どちらかといったら、ネガティブ方向に振れるマインドということサ。

魅力的な(攻守にわたる)攻撃サッカーへチャレンジしていくことは、選手たちに、喜びと進化&深化を与えてくれるでしょ。

それだけじゃなく、日本サッカーにとっても、大いなるプラスになる。

でも、セレッソ監督ロティーナには、そんな興味などない!?

そして、勝つこと「だけ」をターゲットに、クールに仕事をつづける・・

まあ、リーグ的(興行的!?)には・・

そんな、アンチテーゼとしての「戦術サッカー」があるからこそ、フロンターレ、マリノス、コンサドーレなどに代表される、美しい質実剛健サッカー(それを志向する攻撃サッカー!?)の価値がアップするというのも確かな事実ではあるけれど・・さ。

まあ、セレッソについては、「こんなコラム」「あんなコラム」も発表していますから、そちらもご参照あれ。

それにしても、たしかにセレッソの守備は、堅い。

そりゃ、そうだよね。

何せ・・

チーム全体が、互いのポジショニングバランスを極限まで崩さずに、また、決して爆発することなく(リスキーなアタックを仕掛けることなく!?)、最後の瞬間まで「我慢」しつづけるような、「安全志向」のボール奪取プロセスを展開するんだから。

まあ、とはいっても、セレッソ選手たちの忍耐力については、ロティーナの優れた(心理)マネージメントに拍手するしかないのも事実さ。

それにしても・・

優れたプロコーチ、下平隆宏に率いられた横浜FCのサッカーは、観ていて楽しいよね。

まあ、この試合では・・

堅いセレッソ守備に、その楽しさ(喜びの!)エッセンスを、ブッ潰されつづけてしまったわけだけれど・・さ。

それでも、たまに魅せる、ココゾの仕掛けには、様々な意味合いを内包する、「自由にプレーせざるを得ないサッカー」の核心が込められていた。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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