湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第17節(2012年7月7日、土曜日)
- レッズは、プラスとマイナスの貴重な体感を積んだ・・(Rvs鳥栖、 4-3)
- レビュー
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- またまた、中途半端なカメラワーク・・
たしかに、以前よりは「引く」ようにはなったけれど、どうせ引くなら(どうせ選手たちの顔など確認できないんだから!?)、もっと、ちゃんと引いてくだ
さいよ。「EUROのカメラワーク」など、まったく参考にしていないんだな、彼らは。まあ「EURO」の決勝や準決勝など、ちょっと微妙に寄り過ぎのカメラワーク
もあったけれど(イングランド人だったりして!?)全体としては、とても高質なカメラワークだったんですよ。
要は、ボールがあるゾーンとは遠いところで「も」興味深い駆け引きがあるということなんです。こちらは、同時に「それ」も観たい。でも、「ぶん回す」カメラワークだから、結局は、ボールがないところでの駆け引きアクションの「結果」しか観られない。
フラストレーションが溜まる。それも、レッズのホームゲームでのカメラワーク(ディレクターとカメラマンの仕事!?)だから、ホントに心配になる。コンサドーレ対アル
ビレックスのカメラワークもひどかったけれど、このゲームは、Jリーグを代表する埼スタでのゲームだぜ。ホント、心配になる。
でも、ゲームだけは最後まで見届けなければ・・と、気を取り直す筆者だったのです。フ〜〜・・
さて・・試合。
レッズは、例によって、「まず」しっかりと後方から組み立てる。そして仕掛け段階に入ったら、軽快な組織パスコンビネーションと大きな展開パス(サイド
チェンジやウラ突きのロングパスなど)、そしてタイミングのよい勝負ドリブル等をうまく組み合わせることで、スペースを攻略していく。
人とボールの動きでは、「ショート&ショート&ロング」なんていう組織パスのリズムがいい。まあ、豊富なバリエーション。
もちろんたまには、「ワンツースリーフォー」なんていう素敵な連続コンビネーションも魅せてくれるけれど、そこでのキーポイントは、言わずと知れた3人目、4人目のフリーランニングでっせ。
いいね。互いの信頼関係がアップしていると感じさせてくれる。だからこそ、フリーランニングの量と質がアップする。だからこそ、パスをもらえなくても、「次」のアクションに対するモティベーションがダウンすることがない。
そんな「相互信頼関係」の絶対的なベースは、言わずもがなだけれど、チームに深く浸透している「守備意識」だよ。そう、汗かきプレーに対する意志の内実と、それに対する相互信頼。
とにかく、チーム内には、攻守にわたる「クリエイティブな無駄走りの文化」が定着しつつある・・それこそがハードワークと呼ばれるモノの本質なんだ〜!・・なんてね。
ところで、この試合で何度も魅せた、最終勝負シーンでの魅惑的なコンビネーション(相手守備イメージのウラを突く人とボールの動き!)。
そう、パス&ムーブも含むトントント〜ンというダイレクトコンビネーションのなかで、しっかりと3人目の選手がスペースへ入り込んでいるんだよ。そして「そこ」にパスが回されてくる。
鳥栖のディフェンスが強いことは周知の事実だよね。しっかりとしたブロックを形成し、相手の仕掛けを効果的に潰しつづける。でも、この試合でのレッズ攻
撃には、そんな強力な鳥栖ディフェンスをも粉砕してしまえるだけのダイナミズム(人とボールの動き≒高質なイメージシンクロ)が内包されていた。
ところで、鳥栖。いまの彼らは守備だけじゃない。攻撃でも、しっかりと人数をかけて存在感を発揮する。たぶん、(ベガルタのように!?)組織ディフェン
スが高質に機能しつづけていることで自信を深め(!?)、そのことが次の攻撃エネルギーを増幅させている・・っちゅうことですかね。もちろん、素早く効果
的な攻守の切り替えは言うまでもない。
要は、強い鳥栖を相手にしたレッズが、攻守にわたって、持てるチカラを存分に発揮した・・っちゅうことが言いたかった。
それにしても後半の追加ゴールシーンは秀逸だった。そう、必殺のカウンター。
後半の鳥栖は、仕掛けていくしかなかった。それに対してレッズは、彼らの前掛かりエネルギーの逆を突くように、タイミングの良いボール奪取から、素早いドリブルやスペースパスを駆使して相手ディフェンスの「ウラ」を攻略し、最後のフィニッシュまで決めちゃった。
特に、原口元気にゴールが生まれたことが大きい(柏木陽介のラストパスにも拍手!)。これをキッカケに、調子をアップさせていった欲しい。とはいって
も、サッカーは、最終的には自由にプレーせざるを得ないという「主体的なスポーツ」だからね、彼も、もっともっと自分から、攻守にわたって「仕事」を探せ
なければならない。
もちろん、攻守にわたる汗かきの仕事。要は、意志の問題ということです。汗かきの仕事を積極的に探し、それを十分にこなすことが、彼の才能を存分に表現する(活躍の)場を格段に増幅させる。その「メカニズム」を、しっかりと体感しつづけることが大事なんだよ。
なんといっても彼は、「あの」ディエゴ・マラドーナじゃないんだから・・
ということで、鳥栖が1点差まで迫った最後の時間帯。まあ、雨の影響もあったんだろうけれど、最後はものすごいドラマになった。
レッズは、鳥栖の連続3ゴールで、(ちょっと気が抜けた!?)楽勝ムードから、一気に奈落の底へたたき落とされた。だからこそ、最後の時間帯が興味深かった。
鳥栖の勢いは止まらない。そしてレッズは、決定的ダイビングヘッドシュートのシーンを演出されるなど、何度かピンチに見舞われた。それでも、何とか逃げ切った。
レッズ選手は、この時間帯での「心のなかの揺動」を、ビデオを見返すことで、しっかりと脳裏のイメージタンクに貯蔵しなければならない。それがあって初めて、価値ある「体感」として、「次」に活きてくる。
鳥栖の連続3ゴールは、たしかに幸運に恵まれた部分もあっただろうけれど、レッズ守備陣にとっては、ボールがないところでの守備アクションの量と質という側面も含め、「最後の半歩が出ない」状態だったのは確かな事実だからね。
だからこそ、「それ」を、ホンモノの体感・経験としてイメージタンクに記憶しておくことには、とても大きな意味があるんだよ。
この試合でのレッズは、サッカー内容的にも、結果でも、また自分たちの油断という視点でも、プラス面とマイナス面で、とても貴重な体感を積み重ねられたと思う。良かった、良かった・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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