湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第19節(2012年7月28日、土曜日)

 

完勝のレッズ・・でも、ミハイロの(課題をクリアしていく)挑戦はつづく・・(RvsJU、 2-0)

 

レビュー
 
 今日は、レッズの完勝。

 相手が「強いはず」のジュビロだから、レッズが進化するための試練として、かなりゲーム内容に期待していた。でもフタを開けてみたら、ちょっと拍子抜け。

 ジュビロの森下仁志監督が、(試合前のイメージ作りで!?)選手たちに勇気を与えられなかった・・と言っていた。多分その意味は、守備(ボールを奪い返すプロセス)をもっと勇気をもってアグレッシブに「行かせ」たかった・・ということでしょ。

 たしかにジュビロの守備アプローチ(チェイス&チェック)からは、強烈な勢い(≒十分な意志のポテンシャル)が感じられなかった。だから、次、その次・・というボール奪取プロセスの勝負所でも、エネルギーの高揚が感じられない。

 要は、ボールへの詰めが甘かったから(勇気をもったチェイス&チェックが緩かったから)、周りの味方も次のボール奪取へのアプローチに対する勝負イメージを脳裏に描写し難かった・・っちゅうことでしょ。

 そんな(ある意味で、消極的&受け身の!?)ジュビロに対し、例によってレッズは、とてもダイナミックなボール奪取プロセス(組織ディフェンス)を展開した。

 スリーバックと両サイドバック(サイドハーフ)、両ボランチ、そして最前線から忠実に「追いかけ」つづけるトップトリオの守備コンビネーションが、とてもスムーズに連動しつづけていたんだよ。

 そんなだから、ジュビロの攻撃が寸詰まりになってしまうのも道理。この試合でのジュビロは、まったくといっていいほどレッズ守備ブロックの「ウラの決定的スペース」を突いていけなかったんだ。

 結局ジュビロは、個のドリブル突破トライで「追い詰められた」勝負を仕掛けていったり、セットプレーやミドルシュートでゴールに迫るのがやっとだった。

 ここで言いたかったことは、ミハイロ・ペトロヴィッチも言っていたように、全体としては、レッズがゲームをコントロールした・・そして「その現象」のもっとも重要なバックボーンが、両チームの「ディフェンスの量と質」にあった・・ということでっせ。

 まあ、言うまでもないけれど、サッカーの絶対的なベースは、守備にあり・・ということなんだよ。そう、爆発的なチェイス&チェックや、(予想ベースの!)パスインターセプトなど、勇気ある(守備での)リスクチャレンジと忠実な汗かきアクションの量と質。

 だからこのゲームでは、そのポイントでも、レッズが(ジュビロに)一日の長を見せつけて完勝を収めた・・とするのがフェアな評価だと思うわけです。

 ところで、ミハイロ・ペトロヴィッチ。彼に、こんな質問を投げた。

 ・・とても良いゲームだった・・ところで、いまのレッズの強さのバックボーンだけれど、私は、それには二つあると思っている・・一つは、言わずもがなの ダイナミックな守備・・全員が、とても素晴らしいハーモニーを魅せている(うまく組織的に連動している!)・・まあ、攻撃的な守備とも言える・・

 ・・そして二つ目が、前戦のトリオが、攻守にわたる汗かきアクションも含め、とても効果的なコンビネーションを魅せているということだ・・もちろん、両 サイドバック(ハーフ)の攻守にわたる忠実な汗かきアクション(激しい前後の動き!)も含めてネ・・そこで質問だが、ミハイロさんは、ここから進化してい く上での具体的な内容を、どのようにイメージしているのか?・・

 そんな私の長〜い質問に、例によってミハイロ・ペトロヴィッチが、真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・そう、わたしも、前戦の3人が、攻守にわたって頑張っていることを高く評価しているし、チームは、守備意識の何たるか(組織ディフェンスを機能させ ることの重要性)をしっかりと理解していると思う・・そこまでは順調に発展してきた・・ただ、まだまだ課題も多いんだ・・

 ・・例えば攻守の切り替えだが、もっと素早く、効果的なモノにしなければいけない・・そこでは、しっかりと「相手の次の展開を読んだ」優れた守備(ボール奪取)から、いかに素早く、効果的にボールを前へ運んでいくのかというのがテーマだ・・

 ・・また、サイドバック(サイドハーフ)の攻撃参加の量と質も含め、サイドからの仕掛けも重要な課題だ・・もちろんサイド攻撃は進化している・・ただそ こには、クロスの質をもっと高めなければならないという課題も横たわっている・・クロスの精度アップというポイントだけれど、もちろんそこには、中央ゾー ンで待つ受け手のアクションの量と質を高めていくというポイントもある(クロスでのイメージシンクロ)・・

 ・・これまで選手たちは、(攻守にわたる組織サッカーにおいて!?)基盤になるクリティカルポイント(要所)は、とてもうまくクリアしてきたと思ってい る・・ここからは、ボール奪取にしてもシュートにしても、その精度を、もっともっと高めていかなければならない・・そう、最後の最後まで集中を切らさず、 しっかりとゲームを勝ち切るというメンタリティーを高めていくというポイントも含めてネ・・

 いまのレッズの進化プロセスは、私にとっても、とても興味深い学習機会なんだよ。

 これから「なでしこ」のビデオを観てコラムをかかなくちゃならないから、今日は、こんなところでご容赦アレ〜・・じゃ、また〜・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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