湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2012年8月11日、土曜日)

 

強固なディフェンスブロックを崩していくための工夫が足りなかったレッズ・・(VIvsR、 1-0)

 

レビュー
 
 ヴィッセルには(西野朗さんには!?)申し訳ないのですが、このコラムでは、試合のイニシアチブを牛耳りつづけたレッズを中心にテーマを抽出します。

 まあ・・ネ、とはいっても、サッカーは相対ゲームだから、レッズを論じるためには、もちろんヴィッセルのプレー内容にも言及せざるを得ないわけだけれどね・・あははっ・・

 ところで、テレビ(スカパー)の映像作り(≒カメラワーク)。とても良くなっていると思う。だから、ボールがないところでの攻守のせめぎ合いも含め、様々な視点でゲームを楽しめたし、テーマも抽出できた。良かった・・

 あっと・・、今節は、所用が重なったことでテレビ観戦ということになってしまいました。悪しからず。

 それにしてもヴィッセル守備ブロックは、最後の最後まで、まったく集中力が途切れなかったね。だからこそ、ラッキーなシーンも「呼び込めた」・・!?

 そのように、ヴィッセル守備を高く評価できるのも、ボールがないところでのアクションまでも、しっかりと画面に捉えてくれるカメラワークがあったればこそだよ。あっと・・またまた蛇足・・

 ということで「幸運の呼び込み」だけれど、ホントに、積極的に仕事を探しつづけるという能動的なプレー姿勢を維持することで(要は、集中力を極限まで高めることで!)、不思議なことに、多くのケースで、ラッキーなシーンが増えていくんだよ。

 たぶん、ディフェンスの集中エネルギーの高まりによって、逆に攻める側の集中力(まあ・・最後の半歩を伸ばし切るような粘りマインド!?)が殺がれていくっちゅう心理的な背景メカニズムもあるんだろうね。

 そして、攻める側のボールがないところの反応も鈍くなっていく(諦めや様子見の状態が増えていく)!? まあ、そういうことなのかもしれないね。

 とにかく、あれほどゲームを支配していたレッズなのに、結局、同点ゴールを奪うための本物のチャンスは数えるほどしか作り出せなかったんだよ。

 最終勝負を仕掛けていくプロセスアクションの量と質がアップしていかない。だから決定的チャンスを作り出せないし、シュートも少ない。

 たぶん彼らは、確率の高いカタチ(決定的チャンス)を作り出そうとし過ぎていたんだろうね。「美しい」コンビネーションでヴィッセル守備ブロック背後の決定的スペースを攻略して「美しい」チャンスを作り出し、そして「美しい」シュートを決める・・ってなイメージ!?

 でもサ、美しさと勝負強さを高い次元でバランスさせるのは、とても難しいことなんだぜ。そう、全てのサッカーコーチが志向する究極のターゲットは、美しく勝つこと・・なんだよ。

 あっと、またまた蛇足。ということでレッズの最終勝負だけれど、ヴィッセル守備ブロックの眼前で、ワンツーを基盤にしたショートコンビネーションを仕掛 けていく等、ちょっと寸詰まり気味だったから、最高の集中力で守るヴィッセル守備ブロックも、あまり怖くなかったに違いない。

 まして、ヴィッセルは1人退場になっちゃったわけだからね、いやが上にも集中力が高まろうってなものだ。

 忠実なチェイス&チェックと、ボールがないところでの忠実マーキングなど、極限の集中ディフェンスを魅せつづけ、それをベースに危険なカウンターをブチかましていくヴィッセルなんだよ(まあ、彼らには「それ」しか選択肢がなかったわけだけれどネ)。

 とにかく、その守備アクションは、とても見応えがあった。サスガに西野朗・・ってなところなんだろうね。

 そんな強力ディフェンスに対し、拙攻を繰りかえすレッズ。そんなレッズを見ながら、こんなことを思っていた・・

 ・・積極的にミドルシュートをブチかましたり、アーリークロスを送り込んで「その」こぼれ球を狙うとか、もっとシンプルに仕掛けてもいい・・そんな泥臭 い仕掛けも「柔軟に&バランスよく」繰り出していけば、最終勝負のプロセス自体が、仕掛けの変化として、とても効果的になるんだ・・

 ・・そして、そんな攻撃の変化を効果的に繰り出していければ、ヴィッセル守備にしても、次の抑え所(ボール奪取プロセス!)に対するイメージを描写しにくくなる・・

 誤解を避けるために確認するけれど、わたしは、いつも書いているように、レッズのサッカーは、とても良くなっていると思っているんだ。

 互いのイメージが、とても上手く連動するハイレベルな組織ディフェンス(ボールを奪い返すプロセス)だけじゃなく、攻撃での組織プレー(ボールの動き) にしても、ショート&ショート&ロングとか、とても変化に富んでいるし、タイミング良くブチかましていく勝負ドリブル勝負も、とても実効レベルが高い。

 でも、このゲームの後半に限れば、前半とは違い(前半は、とても優れたチャンスを作り出せていた・・と思う)、攻撃が寸詰まりになってしまった。

 もちろん、カチッと互いのポジショニングバランスを整え、最高の集中力で、積極的に仕事を探しつづけたヴィッセル守備ブロックには大拍手だけれど、そん な強固な相手ディフェンスを崩していくための工夫を、積極的に考える意識と意志が、(今日の!)レッズには希薄だったね。

 リーダーシップ!? さて・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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