湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第22節(2012年8月18日、土曜日)
- とても長くなってしまった・・(レッズvsアントラーズ、 2-1)
- レビュー
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「とても素晴らしい内容のサッカーだった・・本当にペトロヴィッチさんは良い仕事をしている・・レッズのサッカーが良くなっていることを、これほど明確に
体感させてくれるんだから・・その優れたサッカーは、前半だけではなく、同点ゴールを奪われた後もつづいた・・でも最後の時間帯だけは、いただけなかっ
た・・」
長い質問だね・・スミマセン・・
「その悪い流れだけれど、それは、後半33分にジュニーニョにブチかまされたミドルシュートから始まったと思う・・続く34分には(追いかけゴール場面
と同じく!)コーナーキックから、岩政大樹にフリーのヘディングシュートをブチかまされた・・またジュニーニョには、2度も、タテのスペースへ走り抜けら
れ決定的クロスを送り込まれた・・極めつけは、ロスタイム終了直前に、ジュニーニョからパスを受けた柴崎岳が放ったフリーシュートだった(GKの正面に飛
んだから事なきを得た!)・・ことほど左様に、ウラのスペースを突かれたピンチが、少なくとも6回はつづいた・・ミハイロさんも、良くご存じのように
ね・・ということで、これらのピンチについて、コメントをいただけないか?」
たしかに後半は攻め込まれたけれど、全体的なサッカーの内容をみた場合、レッズが凌駕していたことは誰の目にも明らかだったと思う。
例えば、レッズの効果的な組織ディフェンス。
とにかく、チェイス&チェックから次のボール奪取まで、それぞれのプレーが連動しつづけるんだ。だからこそ、次、その次のスペースを余裕をもってマネージできる(相手にスペースを使わせない!)。
また攻撃では、ショート&ショート&ロングという変化に富んだ人とボールの動きが素晴らしい。そこでは、例によって、サイドチェンジの勝負ロングパスを駆使する大きな展開に、ダイレクト・コンビネーションを連動させちゃったりする。
(永田充からのパスを受けた)宇賀神友弥からのダイレクトパスが原口元気につながり、そこから「元気に」天賦の才が炸裂した追加ゴールシーンは秀逸だった。まさにそれは、組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスしたゴールだった。
例えば、レッズのスピアヘッドへ「鋭いクサビのパス」が通ったシーン。
その「クサビ」のタテパスが出された瞬間、少なくとも1人は、後方からのサポートアクションを爆発させるんだよ。そう、3人目、4人目のフリーランニング。
そして、その動きをイメージしているスピアヘッドが(このゲームでは主に原口元気が)、スパッと切れ味鋭いダイレクトで、全力でサポートに上がってくるチームメイトの眼前スペースへパスしたりする。
レッズのコンビネーションでは、そんな「パスを呼び込むフリーランニングの量と質」が素晴らしい。まあ、ボールがないところでの動きの量と質が大きく
アップしているということだね。そして、だからこそ、目の覚めるような(美しい)ダイレクト・コンビネーションプレーをブチかませる。
観ていて、ホントにほれぼれさせられるダイレクト・コンビネーションプレーのオンパレードだった。そんなレッズに対し、スペースを攻略できないアント
ラーズは、アバウトなミドルシュートを飛ばすばかり。レッズ選手たちは、明らかに「スペースの攻略」をイメージしているということだね。だからこそ、
シュートの量と質だってアップさせられる。
ところで、パスを呼び込む後方からの(サポートの!)フリーランニングだけれど、そのアクションの主役は、何といっても、両サイドバック(宇賀神友弥と
平川忠亮)と、交替に上がってくる守備的ハーフコンビ(阿部勇樹と鈴木啓太)だよね。その動きは、本当に、とても積極的で高質だった。
エッ!? 冒頭の私の質問に対して、ミハイロ・ペトロヴィッチが、どんなニュアンスの内容をコメントしたかって!? それは、とても面白いモノだったよ。あははっ・・
もちろんミハイロ・ペトロヴィッチも、その「悪い流れ」を十分に把握していたし、その背景要因も分かっていた。
彼は、そのシーンを、次につなげるために、学習機会として(イメージトレーニング素材として)大いに活用するに違いない。
ということで、私の質問に対するコメントだけれど、それは、こんな感じだったですかね。曰く・・
・・いまの質問だけれど、全てをストレートには話せないよな・・もし監督が、(メディアに対する)コメントをうまく構成できなかったら、選手が傷つくこ
ともあるだろうし・・だから監督は、たまには政治家のように、うまくハナシを取り繕わなければならないこともあるのさ・・ということで、ここでは、細かな
所まで入っていかないことにするよ(笑)・・でも、もちろん、そのピンチの背景は、よく分かっているつもりだよ・・
まあ、そういうことだね。ミハイロ・ペトロヴィッチにしても選手たちにしても、それらのピンチシーンで何が起きたのか、どんなミスがあったのか、理解しているはずだからね。
最後に・・、レフェリングについて厳しい内容をコメントしたアントラーズのジョルジーニョ監督に対して、こんな質問を投げたことを記しておきます。
「一つだけご確認頂きたいことがあります・・それは、レフェリーが、どちらかのチームに有利なホイッスルを吹こうとしていたわけじゃないということで
す・・たしかに私も、たまにレフェリングの質に閉口することがあります(この試合のレフェリングについてではありませんよ、念のため!)・・そのことにつ
いて、いまジョルジーニョさんは素晴らしいコメントを出されたじゃありませんか・・勇気をもったレフェリングが大事だってね・・そうなんですよ・・日本
サッカーのレフェリーにとって、もっとも重要な課題は、勇気をもって(ミスを恐れずに!?)ホイッスルを吹くということなんですよ・・そこで質問ですが、
日本のことを良く分かっているジョルジーニョさんは、日本のレフェリーが勇気をもってホイッスルを吹けるようになるためには、何が必要だと思いますか?」
「もちろん、この試合のレフェリーは、意図的にアンフェアな笛を吹いたわけではない・・そのことは、日本人の国民性を考えれば、すぐに確信できる・・レ
フェリーは、常に大きなプレッシャーのなかで判断しなければならない・・だから、本物のレフェリーにしっかりと指導を受けることが必要だと思うんだ・・外
国人レフェリーも日本でホイッスルを吹いているが、それで日本のレフェリーのウデが大きくアップしたとは思えない・・また、日本のレフェリー機構も、改善
していかなければならないことをしっかりと意識して欲しい・・私は、色々な判定を経験しているが、いまのレフェリーは、私が現役のときよりも質が落ちてい
るという印象があるんだよ・・それは何故なのか?・・しっかりと考え欲しいということなんだ・・」
結局わたしの質問には、具体的な答えは返ってきませんでしたね。あははっ・・
でも、まあ私は、基本的に日本のレフェリーが、ある程度のレベルにはあるとは思っていますよ。もちろんミスはあるし、前述したように、完璧に「閉口させ
られる」レフェリーも、たまにはいるけれどさ。まあ、難しいテーマだよね。日本人のメンタリティー(生活文化という背景)も、このディスカッションに絡ん
でくるわけだから。フムフム・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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