湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2012年8月25日、土曜日)

 

なんか、レッズの勝ちパターンが見えてきたりして・・(エスパルスvsレッズ、 0-2)

 

レビュー
 
 強いネ〜、レッズ。

 まあ、この試合では、2点リードしてからの堅牢ディフェンスと、効果的な必殺カウンターがテーマになるんだろうけれど、それにしても、前半に魅せた、攻守にわたる質実剛健な組織サッカーは、見応え十分だった。

 そのゲーム内容は、何か、前節のアントラーズ戦を思い起こさせる!? まあアントラーズ戦では、最後の10分は、コラムでも書いたとおり、かなり危ないシーンもあったけれど・・ね。

 前半のレッズ。

 ショート&ショート&ロングという変化に富んだリズムの組織パス(コンビネーション)と、タイミングよく繰り出すドリブル勝負をうまく組み合わせた優れたサッカーでイニシアチブを握った。そしてチャンスをしっかりとゴールに結びつけてリードを奪ってしまう。

 そして後半は(まあ、2点リードしてから「その傾向」が強くなったとも言える!?)、互いの守備イメージが有機的に連鎖しつづける、とても粘り強い(堅牢な)組織ディフェンスを基盤に、ものすごく危険な、必殺の「蜂の一刺しカウンター」をブチかましたりする。

 そのカウンターだけれど、もちろん状況に応じて、誰がどのように・・という要素は千差万別だよ。でも、やっぱり両サイドバックのオーバーラップ(押し上げ)と、それを上手く使う、マルシオ・リシャルデスやダブルボランチのクレバーで正確なタテパスが秀逸だね。

 平川忠亮も宇賀神友弥も、フッ切れた超速フリーランニングや勝負ドリブルでサイドゾーンを浸食していくんだ。

 特に全力フリーランニング。その「勢い」は、彼らが狙うタテの決定的スペースに「パスが供給される」という確信があるからに他ならない。その確信パワーの源が、マルシオ・リシャルデスやダブルボランチ(阿部勇樹と鈴木啓太)の、必殺のタテパスというわけです。

 そんなゲーム展開だったから、全体的な評価としては、レッズが余裕をもって勝ち切った・・というのがフェアな表現でしょ。

 それにしても、レッズが展開する、組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスしたサッカーは、このところ、とても充実してきていると感じますよ。

 まあ、それについては前節コラムでも触れたけれど、この試合でも、そんな「質実剛健サッカー」が深化しつづけていると感じた。ほんと、ミハイロ・ペトロヴィッチは、よい仕事をしている。

 ということで、ここからは、リードを奪ったレッズが展開した、質実剛健ディフェンスについて簡単に・・

 まず何といっても、最前線のトリオ(原口元気、マルシオ・リシャルデス、梅崎司)が展開する、忠実なチェイス&チェックを挙げなくちゃいけない。

 彼らは、最前線から忠実にボールを追いかけ、相手ボールホルダーを追い詰めるんだよ。まあ、原口元気については、「もっと本格的な勢いで!!」なんていう注文はつくけれどね・・

 とにかく、前線からの忠実な守備アクションがあるからこそ、ダブルボランチもサイドバックも、次のボール奪取ポイントや協力プレスのポイントを「より明確」にイメージできるというわけです。

 また、最終ライン(トリオ=坪井慶介、永田充、槙野智章)にしても、最前線と中盤のディフェンス「ツーライン」の忠実な追い込みやプレッシングがあればこそ、彼らも、より明確に「次の」ボール奪取ポイントをイメージできる。

 そんな、ボール奪取プロセスにおける忠実な「イメージ連鎖コンビネーション」こそが、堅牢なレッズ守備を支えている・・とも言える。

 いや、もっと深掘りすれば、レッズ選手たちは、誰もが「汗かきのハードワーク」を積極的に探しつづけている・・とも言える!?

 要は、多くの味方がディフェンスに戻っていることで、それに頼って集中レベルを減退させ、受け身のプレー姿勢になってしまうことが少ない・・といういうことです。

 だからレッズ守備では、「ドーハの悲劇」に見舞われ難い!? まあ、そういうことだね。

 そしてもう一つ。・・だからこそ、ツキまで呼び込める・・なんていうポイントもある。この試合でも、前節のアントラーズ戦と同様に、何度か、偶発的な現象に救われたよね・・あははっ・・

 とにかく、レッズ守備ブロックが展開した、互いのバランスを考えながらのクレバーなポジショニングとカバーリング、主体的な忠実ハードワーク等は、観ていて胸がすく。

 とにかく、レッズの、これからの進化&深化に期待がふくらむじゃありませんか。

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 さて、これで、わたしのHPはしばらくお休みということになります。

 明日から海外へ2週間ほど出掛けなければならなくなったのですよ。ということで、次のコラムは、日本代表のワールドカップ予選(イラク戦)ですかね。それでは、また〜〜・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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