湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第12節(2013年5月18日、土曜日)

 

二つのゲームのポイントを探った・・長くなってしまった・・(アルディージャvsベルマーレ、 2-1)(レッズvs鳥栖、 6-2)

 

レビュー
 
 フ〜〜・・またまた真夜中になってしまった。

 今日は、大宮から埼スタへ移動して2ゲームを観戦するというスケジュールでした。

 その移動だけれど、単車でも、「ドア・トゥー・ドア」で20分もかかった。地図の上では、まさに隣接・・ってな風に見えたんだけれど・・。

 まあ、そんなこんなで、気持ちのよい疲労感とともに帰宅した次第。

 ところで、単車を駆っての移動。それは、還暦を迎えた私のエネルギーレベルを測るバロメーターなんですよ。まあ、まだまだ大丈夫だけれど、帰宅したら、やっぱり以前よりも疲れた感じは残るよね。フ〜〜・・

 ということで、今回も、ポイントだけ箇条書きで列挙することにします。では・・

 ・・アルディージャ・・例によって、質実剛健なディフェンス(攻守のハードワーク)を絶対的なベースに、あくまでも忠実に、そして冷静沈着に、リスクへチャレンジしていく・・

 ・・もう何度も書いたけれど、彼らの守備では、選手一人ひとりが、とことん考えつづけながら、前向きに自己主張をぶつけ合っている・・ホント、素晴らしい・・

 ・・だからこそ、ポジショニングバランスのマネージメントを絶対的な基盤にし繰り出していく「寄せ≒チェイス」と「カバーリング&サポート」などのアクションが、本当に効果的に連鎖しつづける・・

 ・・そして攻撃となったら、ズラタン&ノヴァコヴィッチというスロベニアコンビに、韓国のスマートストライカー、チョ・ヨンチョルが効果的に絡むんだ よ・・また、この試合では、渡邊大剛も、攻撃的ハーフとして存在感を発揮したっけね・・もちろん、決勝ゴールを決めたから言うのではありませんよ・・念の ため・・あははっ・・

 ・・とにかく、アルディージャが繰り出していく、「ココゾッ!」という場面での「タテへの爆発フリーランニング」が素晴らしい・・その、勝負イメージのシンクロ状態に、ベルデニックのウデが、垣間見える・・アルディージャは、本当によくトレーニングされている・・

 ・・とにかく、タテへの「抜け出し」とスルーパスのタイミングが絶妙なんだ・・

 ・・もちろん、カウンターシーンならば、このメリハリが、なお際立つ・・特に、チョ・ヨンチョルと、二人のスロベニア人の「抜け出し」は、とても忠実で、ダイナミックだよね・・

 ・・ということで、ベルマーレと比べた個のチカラでは、確実にアルディージャに一日の長があると感じた・・とにかく、アルディージャ最前線トリオのチカラは、半端ではない・・

 ・・そして彼らの、考えつづけ、自己主張をぶつけ合う組織的な連動ディフェンス・・それが、アルディージャ成功のバックボーンなのさ・・

 ・・対するベルマーレ・・よくなっているよ・・ホントに・・

 ・・この試合で気付いたポイントのうち、もっとも大事なトコロ・・

 ・・それは、前から「行き過ぎ」なくなったということかな・・

 ・・要は、常に全力・全方位でのプレッシングではなく、連動して「行く」ところと、バランスを執るところのメリハリが、とてもよくなっているということだね・・

 ・・まあ、グレーゾーンのプレッシング・・なんていう表現はいかが?・・

 ・・とにかく、彼らが魅せつづけた、攻守にわたる優れたバランス感覚に、ベルマーレが(チョウ・キジェと選手たちが!)志向するベクトルの正しさが如実に表現されていたんだよ・・

 ・・ホント、彼らは良くなっている・・

 ・・実は、バランスを効果的に執るのは、とても難しいことなんだよ・・

 ・・バランスを執りすぎたら(執ろうとし過ぎたら)、誰も、アクション(例えばチェイスとか協力プレスとか・・ネ)を起こさなくなってしまう・・そして足が止まり気味になって、心理的な悪魔のサイクルにはまっちゃう・・

 ・・また「行き過ぎ」たら、すぐにエネルギーが枯渇して、物理的なアクションだけじゃなく集中力だってダウンしちゃう・・そして、相手に、簡単にウラを突かれたりしちゃう・・

 ・・だからこそ、メリハリの効いたアクションのバランスが大事になってくるんだよ・・

 ・・たぶん、チョウ・キジェは、その正しい「バランス感覚」を進化させているんだと思うよ・・

 ・・とにかく、彼らのサッカーが、これから「どんどん」良くなっていくことに、まったく疑問をはさむ余地はありません・・

 ・・彼らのサッカーを観るのが楽しみです・・

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 さて、次はレッズ対鳥栖。

 鳥栖は、魅力的なサッカーをやっているのに・・ね。まあ、とはいっても、ディフェンスでの「最後の瞬間」に、ちょっと集中を欠くシーンもあると感じた。

 要は、ポジショニングバランスから、「ブレイク」して最後の「タイト・マンマーク」へ移行するプロセスにおける集中力。

 相手ボールホルダー(その意図!)と、自分がマンマークすべき相手選手(その意図)を予測しながら、ボールと人の両方を「高い実効レベル」で、常にイメージしつづけるということだよ。

 それが、たまに、最後の瞬間での「タイト・マンマーク」が効果的に機能しない。ボールウォッチャーになってしまっている・・なんてコトは言わないけれど、それに近い状況。

 だから、最後の瞬間に、相手にシュートさせちゃったり、そのシュートをブロックできなかったり。もちろん、その直前のラストパスとか、それを受ける相手パスレシーバーの動きを、しっかりと抑え切れていないということもある。

 全体的には、うまく機能しているにもかかわらず、最後の瞬間における集中力が・・

 ということで、ユン・ジョンファン監督に、こんな質問を投げてみた。

 ・・昨シーズンと比べると、攻撃に一人多いという印象があります・・たしかに、そのことで攻撃は、より魅力的に、そして危険になったとは思いますが、逆 にディフェンスでのバランスを欠くようになってしまった・・このバランスという発想ですが・・攻撃と守備のバランスとか、美しさと勝負強さのバランスとい う使い方もしますが、このバランスという発想について、コメントをいただけませんか?・・

 そんな質問に、ユン・ジョンファン監督は、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれました。曰く・・

 ・・そう、バランス・・ミーティングでも、常々、守備をしっかりやらなければならないと言っている・・守備が安定すれば、そこから良い攻撃が生まれ る・・まあ、たしかに、昨シーズンよりは攻撃はよくなっている・・ただ逆に、守備がうまく機能しなくなってしまった・・そこには、積極的な仕掛けと、それ を支えるリスク管理のバランスをうまくとらなければならないというテーマがある・・

 フムフム・・

 とにかく、サガン鳥栖もまた、様々な要素を内包する「バランス感覚」を進化させていくのが、当面の課題ということなんだろうね。

 まあ、優秀なユン・ジョンファンのことだから、シーズンを通したら、キッチリと結果を出すに違いないと確信していますよ。

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ということで、最後にレッズ。箇条書きで、簡単にまとめます。

 ・・前回コラムで書いたように、レッズは、順調に進化をつづけている・・

 ・・あっと、その前に・・前節アントラーズ戦で興梠慎三が挙げた勝ち越しゴールだけれど、ありゃ、明らかなオフサイドだったね・・

 ・・わたしは、NHKしか録画していなかった・・だから、斜め後方からの映像しかなかった・・でも、後からスカパーの映像をみせられた・・それは、まさに「真横」からの映像だった・・そして、「何だ、そうだったのか・・」ってなことになった・・

 ・・フ〜〜ッ!・・まあ仕方ない・・レフェリーのミスジャッジもドラマの内ということか・・もちろん、アントラーズにとっちゃ、とんだ災難だったわけだけれど・・フ〜〜ッ!・・

 ・・でもサ・・たしかにオフサイドゴールはあったけれど、そのことは、アントラーズ戦でのレッズが、とても進化したサッカーを魅せていた・・というニュアンスには、まったく影響しないよ・・

 ・・そしてレッズは、この試合でも、とても高質な(いや・・試合ごとに進化しつづけている!?)サッカーをブチかました・・

 ・・もちろん、ロングボールから、迫力満点のパワフルアタックを仕掛けてくるサガン鳥栖にタジタジとなる場面もあったし、ゴールもブチ込まれちゃったけれどサ・・

 ・・でも、レッズが、素晴らしく進化しているという事実は、誰にも変えられない・・

 ・・レッズの進化・・

 ・・「ショート&ショート&ロング」なんていう、変化に富んだ「素早く大きな展開」の組織パス(コンビネーション)サッカーは、そのままに、スペースを攻略できた次の瞬間には、誰もが、個の勝負をブチかましていく・・

 ・・もちろんサイドゾーンの攻略が大前提だよ・・素早くボールを動かしながら、たまに大きな展開でサイドチェンジを敢行する・・そして、そのサイドゾーンでフリーになった「誰か」が、躊躇(ちゅうちょ)なくドリブル勝負を仕掛けていくんだよ・・

 ・・もちろん、そのままドリブルシュートまでいってしまうなんていうシーンもあるけれど、多くは、最終勝負コンビネーションにつなげるための仕掛けアクションというニュアンス・・

 ・・とにかく、誰かがドリブルで勝負しても、周りのチームメイトたちの足が止まらない・・それが、素晴らしい・・チームのなかで、確固たる勝負イメージが共有されている・・

 ・・今日は、ディフェンスについては、深く入らないけれど、高い守備意識を絶対的なベースに、守備プロセスでも、チーム内の相互信頼のレベルが、どんどん高揚していると感じる・・

 ・・互いに、使い、使われるメカニズム・・それがあるからこそ、相互信頼レベルが高揚する・・そして、だからこそ、クリエイティブな無駄走りに対する「意志」が減退することがない・・それが、良い・・

 ・・この試合では、サイドゾーンの仕掛け人、梅崎司が、抜群のパフォーマンスを魅せた・・そのことについては、試合後の記者会見場で、ひとしきり話題にのぼっていた・・

 ・・私も、攻守にわたる梅崎司のプレー内容が大きくアップしていると思う・・

 ・・まさに、本物のブレイクスルー・・才能あふれる梅崎司には、もっともっと多くを要求しよう・・

 ・・ということで、ここでまた、相互信頼があるからこその「基本ポジションなしの創造性サッカー」という話題に戻りたい・・この「ポジションなしのサッ カーが理想・・」というコンセプトは、筆者の専売特許なんですよ・・ウソだと思ったら、1995年に刊行した拙著「闘うサッカー理論(三交社)」をご覧あ れ・・

 ・・ということで、ちょっと視点を変えてミハイロに聞いた・・

 ・・さきほどミハイロさんは、今日の6ゴール全てが、違う選手が挙げたモノだったと言われた・・なかでも、槙野智章と那須大亮がブチ込んだゴールが印象的だった・・そう、最終ラインの選手によるゴール・・

 ・・私は、このディフェンダーが挙げたゴールにこそ、ミハイロ・ペトロヴィッチが志向するサッカーの理想型のニュアンスが込められていたと思うのだが・・

 ・・そんな私の分かり難い質問に対し、例によってミハイロが、真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた・・曰く・・

 ・・そうだな・・彼らがゴールを挙げたことは、ある象徴的な意味を含んでいたよな・・あっと・・マキノとナスだけじゃないぜ・・モリワキだって、ほとんどゴール・・ってなシュートをブチかましたよな・・

 ・・オレは、そんな風に、誰でも攻撃の最終シーンに顔を出してくるような創造的なサッカーが好きなんだよ・・もちろん、それでも、次の守備じゃ、バランスが崩れないことも重要なポイントだけれどな・・

 ・・とにかく、オレは、そんな変化に富んだ創造的なサッカーが大好きなんだ・・まあ、それが、本当に良いことなのかどうかは分かりゃせんけどな・・

 「いや、それは、とても、とても良いことなんだよ・・オレが保証するゼ!!」

 思わず、そんなことを、心のなかで叫んでいた筆者なのでした〜!

 もう疲れたから、寝ます。例によっての乱筆、乱文、ゴメンなさ〜い・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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