湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2013年10月6日、日曜日)

 

勝ったけれど、風間八宏の表情は冴えなかったネ・・(フロンターレvsレイソル、 3-1)

 

レビュー
 
このゲームのテーマだけれど、私にとって「それ」は、一つに集約される。

個のチカラで勝負が決まってしまうゲームの、なんと切ないことか・・

要は、レイソルが、攻守にわたる素晴らしい組織サッカーで(その内容で!)フロンターレを凌駕していたのに、最後は、個人勝負プレーで勝負が決まってしまったことに対して、やるせない気持ちばかりが残ってしまった・・ということです。

レイソルだけれど、先日ホーム&アウェーでおこなわれたアジアチャンピオンズリーグの準決勝でも、同じような経緯で勝負を決められてしまったっけね。

広州恒大のオフェンスを一手に引き受ける、外国人トリオ。

準決勝での広州恒大のゴールは、全てこの外国人トリオが叩き込んだのですよ。

・・あっと・・ちょっと言い過ぎかも・・そのうちの一つか二つは、フリックヘッド等で流されたこぼれ球を外国人が叩いたんだっけネ・・

まあ、とにかく、中国代表でも守備ブロックの主力を張る中国人プレイヤーが守り、外国人プレイヤーが勝負を仕掛けていく・・という彼らの(マルセロ・リッピの!)やり方は、「勝負」という点では、抜群の効果を発揮していたんだよ。

そう、中国の国内リーグでも、アジアチャンピオンズリーグでも・・

それに対して、レイソル。

とても素敵に連動しつづける組織ディフェンスの内容でも、人とボールの活発な動きをベースに機能しつづける組織コンビネーション(攻撃)でも、レイソルが明らかに勝っていた。

でも結局は、個の勝負プレーに沈められてしまったんだ。

そして、今日のフロンターレ戦。

先制ゴール、2点目(PK)、そして3点目シーンでも、レナト、大久保嘉人、そして牛若丸(中村憲剛)といった、フロンターレの才能たちが繰り出す個人勝負プレーが中心だったんだ。

そんなフロンターレに対し、レイソルは、あくまでも組織サッカーで対抗していく。

彼らは、何度か決定的チャンスを作り出したけれど、そのほとんどは、組織コンビネーションからの「ピンポイントクロスやスルーパス」を、ダイレクトで叩く・・というシュートだった。

そして私は、レイソルが敗れたことを、とても残念に思っていた。

もちろん、風間八宏が率いるフロンターレも(そのサッカーコンセプトを!)サポートしてはいるけれど、この試合に限れば、もう100%、レイソルに肩入れしていた筆者だったんだ。

そのバックボーンは、もちろん、レイソルが(ACLでも)魅せつづけているハイレベルな組織サッカーへのシンパシーだよね。

実は、わたし、現役時代は(まあドイツのハナシだけれど)、チームの才能プレイヤーたちを陰で支える「汗かきハードワーカー」だったんだよ。

まあ・・ネ・・守備的ハーフ(ボランチという表現は、ブラジルに敬意を表し、敢えて使わない!)・・

ホント、守備に、攻撃でのサポートにと、よく走った。

そして相手からボールを奪い返しては、味方のスターへボールを供給するんだよ。

それも、意識して、ヤツらがプレーしやすいような「優しいパス」を出すんだ。そうしなきゃ、文句を言われるんだよ。フンッ・・

もちろん私は、「才能」を軽んじているわけじゃない。彼らは、チームにとって、とても重要な存在だからね。みんなで、その価値を分け合わなくちゃ・・ネ。あははっ・・

もちろん、なかには、中村俊輔とか中村憲剛に代表される、攻守ハードワーク「でも」、素晴らしい実効(汗かき)プレーを展開できる「天賦の才」たちもいるけれど・・

またそこには、コーチとして実効ある仕事ができるようになるためのバックボーン要素を「探し出して蓄え」、そしてそれを工夫しながら、効果的に応用できるようになる・・という視点もある。

要はサ、自分が「簡単には出来なかった」からこそ、逆に、出来るようになるための「ヒント」は、たくさん蓄えている・・っちゅうことですよ。

それは、コーチとして優れた仕事ができるようになるために、優れたパーソナリティーという要素とともに、とても大事なファクターだよね。

サッカーの歴史上、優れたプロコーチの多くが、現役時代にハードワーカーだった(また近頃では、プロ経験のない連中も多い!)という事実が、そのメカニズムを如実に指し示している。

あっ・・と、またまた脱線してしまった・・

このコラムで言いたかったことの骨子は、組織プレーと個人勝負プレーが、高い次元でバランスしているようなサッカーが理想・・っちゅうことでした。

ところで、ゲームの後半。

フロンターレのシュートは、ゴールになった「二つ」しかなかったんだぜ。そのこと「も」、ちょっと指摘したかったのかもしれない。

風間八宏さんには、悪いけれど、やはり、後半のサッカーじゃ、次のステップへの扉を開けないだろう。

そのこともあって(!?)、記者会見での風間八宏の表情は、冴えなかったように見えたね。

後半の「サッカー的な現象」の背景ファクターを、彼が分かっていないはずがないからね・・

そこでは、リードしているという状況が「元凶」だったわけだけれど、だからこそ、後半のフロンターレのサッカーに苦言を呈したいわけだ。

何せ、牛若丸を中心に、ホントは、何倍も優れた組織サッカーを展開できるはずなのに、結局は「守り切ろう」としてしまったわけだから・・

そんな後ろ向きのサッカーじゃ、「次の扉」は開かない。

どんなゲーム状況でも、しっかりと(次の守備も含めたバランスをマネージしながら!)押し上げていけて初めて、次の「次元」へとステップアップしていけるわけだからね。

風間八宏は、そんな発展メカニズムを、十二分に理解しているはず。だからこそ、記者会見での表情が「曇りがち」だった!? さて〜〜・・

ドイツのエキスパートの間でも、よく、「こんなゲーム展開」の、背景(心理)メカニズムについて話題になることがあるんだよ。そこで、しっかりと(リスクも承知で!?)押し返せるようになって初めて、次の次元へとステップアップしていける・・ってね。

最後に、(もう何度か書いたけれど・・)あるサッカーの考え方も紹介しておきましょう。

・・「個のチカラを単純合算した」という意味のチーム総合力が同程度で、チーム戦術的にも似通った(同じタイプの)サッカーをやる二つのチームが対峙した場合、最後は、個のチカラの優劣が勝負を決める・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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