湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2013年4月6日、土曜日)

 

強化された相手の守備ブロックを攻略していくために・・(レッズvsジュビロ、 2-1)

 

レビュー
 
 すごかったネ〜、大逆転勝利。

 ゲーム展開からすれば、心理的にも厳しいギリギリの闘いの末に、自らつかみ取った「めくるめく歓喜」の体感。とても、とても貴重なイメージ価値を手に入れた。

 特に素晴らしかったのが、最後の最後まで、決して諦めることなく、そして一人の例外もなく、攻撃的に(積極的に)仕掛けつづけたことだね。

 もちろん、ボール奪取チャレンジから、シュートへ向けたスペースの攻略チャレンジを繰り返すなかでの積極的な仕掛けだよ。

 そんな闘う姿勢を象徴していたのが、決勝ゴールシーンだった。

 ジュビロのコーナーキックから、こぼれ球に最初に追いついたのは関口訓充。同時に、後半32分に同点ヘディングゴールを叩き込んだ森脇良太がタテのスペースへ飛び出していた。

 関口をサポートするためにタテへ飛び出した森脇良太。その彼へ、関口がタテパスを出すも、最初に追いついたのは(そのパスを読んでいた!)ジュビロ選手だったんだ。

 でも、まったく諦めない森脇良太は、ギリギリのスライディングを仕掛けて、タテへボールを蹴り出しちゃうんだよ。

 この、森脇良太が魅せた粘りの闘う意志がすごかった。もちろん、その迫力があったからこそ、その前方でルーズボールを追い掛けた興梠慎三の心にも火を点けたっちゅうわけだ。

 そのルーズボールだけれど、最初に追いついたのはジュビロ選手。でも、まったく諦めない興梠慎三が、その後方から爆発プレッシャーをかけるんだ。

 その興梠慎三の勢いもすごかった。

 だから、最初にボールに追いついたジュビロ選手は、その迫力に気圧されるように、後方にポジショニングしていたチームメイトへのパックパスに逃げるしかなくなったんだ。でも、そのパスコースが、大きく「ズレ」てしまったというわけだ。

 まさに、墓穴を掘るパス。そしてそこからは、原口元気の独壇場ということになった。

 このゲームでも、攻守にわたって積極的なプレーを魅せた原口元気。数日前のアジアチャンピオンズリーグのコラムでも書いたけれど、いまの彼は、まさに覚醒の真っただ中にいる・・と思う。

 ・・自分が、とことんサッカーを「楽しむ」ためにも、攻守にわたるハードワークにも心血を注がなければならない・・互いに、使い使われるという、本物の チームゲームであるサッカーの根源的メカニズムを深いところまで理解するためにも、自分から「攻守にわたる仕事」を探しつづけるという積極的なプレー姿勢 を高揚させていかなければならない・・等など・・

 そんな意識に目覚めた感のある原口元気。まあ、彼については、これからも、しっかりと観察していこう。

 ところで、ゲームについてだけれど・・

 そこでのテーマは、何といっても、ジュビロの堅いディフェンスブロック(人数を掛けて強化された相手守備ブロック)を突破してチャンスを作り出すという一点に集約されるでしょ。

 流れのなかからチャンスを作りだすのは、簡単じゃなかったからね。特に、「勝負の構図」が明確になり、ジュビロが守備ブロックを固めてきた後半・・

 そこでのレッズは、ゲームを支配しつづけ、攻めつづけた。にもかかわらず、いったい何度、流れのなかから「ホンモノの決定機」を演出できただろうか・・

 結局ゴールを奪えたのはセットプレーとカウンターからだったし、それ以外には、目立ったチャンスを作り出せなかったのですよ。

 もちろん、バルセロナのように、勝負ドリブルや、(2人目、3人目が、ベストタイミングで動き出すような!)スーパーコンビネーションで、相手守備ブ ロックの「背後のスペース」を攻略できれば理想的だよ。相手守備ブロックの「前方」でボールを動かしたって、何も生み出すことはできないわけだから。

 でも、「それ」は、特に難しい。

 だから、柏木陽介や梅崎司、またマルシオがトライしたようなミドルシュートや、クロスからの勝負(一発ヘディング勝負だけではなく、フリックでの落としを2人目、3人目が決めるとか・・)が、現実的で効果的な最終勝負手段ということになる。

 もちろん、チームのなかに共通イメージが出来ていれば、(ヘディングの強いディフェンダーをトップへ上げてから!?)アーリークロスを放り込むとか、相 手の最終ラインへ突っ掛けていってから(相手守備ラインを押し下げてから!)バックパスを出し、それを2列目がロングシュートするとか、さまざまな方法が ある。

 とにかく、一番イケナイのは、単調な仕掛けを繰り返すことなのです。

 仕掛けプロセスに、何らかの「変化」をつけなければ、相手守備ブロックだって、まったく「動かない」から、スペースも出来ない。だからこそ、強力なドリブラーやヘディングが抜群に強い選手が珍重される。

 あっ・・、何か、まとまりがなくなってきた。

 とにかく、相手の強化守備を打ち破っていくためには、仕掛けに変化をつけることこそがキーポイントだということが言いたかったわけです。

 たまに、原口元気や梅崎司がブチかますドリブル勝負とか、森脇良太や槙野智章のオーバーラップ、はたまた、興梠慎三のポストプレー等、そんな効果的アクセント(仕掛けの変化)が効果的にハマッたときには、確実に、相手守備ブロックの「バランス」が崩れるからね。

 ちょっと最後はまとまりに欠けた感もあるけれど、これからも、相手の強化された守備ブロックを崩していくというテーマと向き合っていかざるを得ないレッズだから、こんなディスカッションテーマもあるよ・・ってなノリで書いてみました。


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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