湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第8節(2013年4月26日、金曜日)

 

優れた主体性と創造性を感じさせるアルディージャ守備・・(レイソルvsアルディージャ、 0-4)

 

レビュー
 
 いや・・ホント・・柏は遠いな〜〜・・スミマセンね、変な書き出しで・・

 夜中に近い時間帯だから空いているだろうと、一般道(6号線)で東京へ向かったのですが、結局1時間以上かかってしまった。

 たしかに空いてはいるけれど、行けども、行けども日本橋に到着しないんですよ。結局、日本橋の手前で右折し、九段下からイギリス大使館の前を通り、四谷、新宿経由で自宅へたどり着きました。フ〜〜ッ・・

 でも、とても清々(すがすが)しい「nice ride」ではあったのですよ。やっぱり、単車は楽しいね。

 もうすぐ61歳にもなる初老のサッカーコーチが、レーサーレプリカのビッグバイクを駆る。こんな、「世の常識への挑戦」を、いつまでつづけられるんだろうか。まあ、私にとっちゃ、それもまた、一種の哲学的な「バロメーター」だから、簡単には止められない。あははっ・・

 あっと・・

 この試合は、前半の途中からは、もう、アルディージャの守備に「ばかり」目を凝(こ)らしていた。

 それほど、アルディージャ守備が、素晴らしい機能性を魅せつづけていたんだよ。その守備については、前節「レッズ戦」のコラムでも、かなり長く書いたっけね。

 「守備も、コンパクトに、攻撃的に機能させられていた・・統計的にも、1対1に強いチームが勝つ可能性が高いということになっているしね・・」

 アルディージャ、ベルデニック監督が、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。

 とにかく、彼らのディフェンスの「内実」を、気付いたところから片っ端にキーワードへ落としていった(コンビュータに書き込んでいった!)んですよ。曰く・・

 ・・アルディージャの守備ブロック・・意志のチカラ・・とにかく最後まで「足」が止まらない・・マーキングにしても、「まず足が動く」ことで、相手よりも、決定的スペースへ先回りできている・・だからこそ、最後の最後で、しっかりと足が届く・・

 ・・積極的なラインコントロールによるコンパクトな守備ブロック・・これで、前線へ攻め上がった選手の「戻り」が楽になる・・より距離が短く、時間もかからない・・エネルギーの効率的な投入・・

 ・・とにかく足が止まらない・・そして、互いに指示をし合っている(文句を言い合っている!?・・罵り合っている!?・・あははっ)・・

 ・・アルディージャ守備の「キモ」・・決して「ボールウォッチャー」にならない・・周りの状況把握が素晴らしい・・常に考えながら「主体的なアクションをつづける」・・

 ・・戻る・・戻る・・戻る・・全力の、忠実な「戻り」・・その忠実アクションをベースに、効果的にボールを奪い返してしまう・・

 ・・「後ろからの足音」という発想・・

 ・・ボールホルダーへの「寄せ」は、基本的に、全力で戻ってくる前の選手が受け持つ!?・・後ろの選手が「前へ寄せていく」というのではなく、戻ってくる選手が、相手ボールホルダーへの寄せていくというのが基本!?・・

 ・・戻りながらの忠実&ダイナミックな「チェイス&チェック」・・

 ・・マーキングの忠実さと正確さ・・ヤツらは、常に「次のスペースと勝負シーン」を意識している・・イメージングの妙・・

 ・・基本的な守備のやり方・・ポジショニングバランスオリエンテッド・・マークは受け渡す・・そして、常に、次の「危険なスペース」を意識し、そこへ先回りするってなイメージ・・

 ・・だから、インターセプトだけじゃなく、相手トラップの瞬間でのアタックが、効果的に決まる・・また、1対1の勝負での強さも、トレーニングのたまもの・・

 ・・等など・・

 ベルデニックも言っていたけれど、たしかにアルディージャの、1対1の強さは格別だね。選手たちの意識の高さと、意志の強さを感じますよ。

 もちろん、ポジショニングや寄せ、スペースへの先回り・・といったプレー内容が優れているからこそ、より有利に1対1の競り合いに入っていける。

 そんな高い意識と強い意志をもって、とにかく主体的に(考えつづけながら)ギリギリの勝負プレーに取り組んでいるアルディージャ守備。

 だからこそ、互いに指示し合える(文句を言い合える)っちゅうわけだ。

 それは、とても素晴らしい現象なんだよ。まあ、コーチの具体的な目標イメージの一つ・・なんてことも言える。

 選手たちが自ら考え、勇気をもって積極的にプレーする。だから指示や文句も、自然と口をついてくる。素晴らしい。

 そして、指示を出したり、文句を言ったりしたら、そりゃ、身が引き締まるのも当然。そして、もっと、もっと意識が高まり、意志にも強烈なエネルギーが乗っていくんだ。

 それこそが、「考えるサッカー・・」という表現が内包する「善循環」なんだ。

 アルディージャの守備には、そんな創造性を感じるんだよ。そう、創造性は、究極の主体性とも言い表せるだろうからね。

 なんか、一気に書き進んでしまった。とにかく、アルディージャ守備は、観ていて、まったく飽きなかった。

 中盤で、相手に寄せ「過ぎる」わけでもなく、しっかりと背後のスペースや相手の動きをイメージしながら、素晴らしい集中力で、次のボール奪取の勝負所へ急行していく。

 そんな、素晴らしい(有機的なプレー連鎖の!)プロセスを観察しながら、舌鼓を打っていた。

 いま、アルディージャ選手たちの自信と確信レベルは、ものすごいスピードで高揚しつづけていると感じられる。

 だからこそ、「ココゾッ!!」という攻撃の勝負所でも、思い切ったフリーランニングや、勇気をもったスルーパスが出てくるし、シュート決定力も天井知らずってなことになる。

 まあ、いつも書いていることだけれど、とにかくサッカーでは、守備こそが、すべてのスタートラインなんだよ。


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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