湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2014年5月17日、土曜日)

 

勝者のメンタリティーが、確固たる輪郭をもちはじめた・・(レッズvsセレッソ、 1-0)

 

レビュー
 
ヒエ〜〜ッ!!

そのとき、頓狂な声が出た。

後半、うまく抜け出したセレッソの南野拓実が、フリーでシュートを放ったんだよ。レッズをサポートする誰もがフリーズしたに違いない。でも・・

そう、ラッキーなことに、シュートされたボールが、わずかに右ポストをかすめていったんだ。

西川周作も、ボールを目で追ってしまったから、もし枠内に飛んでいたら、それが先制ゴールということになったはず。そしてゲームの流れが、まったく違ったモノになっていく・・

それ以外にもセレッソは、フォルランのコーナーキックから、何度かレッズをピンチに陥れた。だから、後半の20分過ぎからは、どちらが勝ってもおかしくない、動的に均衡したゲームが展開された・・と評価するのがフェアだと思う。

あっと・・

今日は、埼スタから味スタへ移動する「レンチャン観戦」ということにしました。だから、コラムを書きはじめたのは、22時を回ったタイミングということになってしまった。

また、埼玉から調布までの高速道路は、そのほとんどが大渋滞。クルマの脇をすり抜けていくのは、とても気を遣うライディングになるから、チト疲れた。フ〜〜ッ・・

あっとゲーム・・

もちろん、全体的なゲーム展開では、レッズがイニシアチブを握っていたし、チャンスの量と質でもセレッソを凌駕していたよね。

例によって、(後方で)落ち着いてボールを展開するなかから、唐突に、大きなサイドチェンジパスや、相手の視線を盗んで、ウラの決定的スペースへ飛び出した興梠慎三への「一発ロングパス」を飛ばしたり。

また、原口元気がドリブル勝負をブチかましたり。はたまた、柏木陽介をコアにした、必殺コンビネーションが飛び出したり。

たしかに前半は、セレッソが全体的に「引いて」いたことで、うまく、最終勝負シーンを作り出せなかったけれど、後半は、セレッソも「人数を掛けて」押し上 げていくケースが増えたことで、レッズの攻めにも勢いが乗るようになり、ホンモノのチャンスの芽につながるような「仕掛けの流れ」を、より効果的に演出で きるようになっていったよね。

微妙なディスカッションだけれど、そんな、全体的な人とボールの「動きの変化」を、俯瞰(ふかん)して観察するのもオツなモノですよ。そこには、ゲームの実質的な流れを左右するファクターがテンコ盛りだからね。

そんな、後半のゲーム展開の「変容」を観ながら、セレッソが守備を固めていたことで(レッズが)陥った、前半の「寸詰まり」の仕掛けプロセスに思いを馳せていた。

・・人数をかけて固めているセレッソ守備ブロックの(ウラの)スペースを攻略していくのは、そりゃ難しいよ・・だからこそ、ミドルシュートや、アーリークロス「も」使うんだ・・そうすれば、相手守備ブロックも、「開かざるを得なくなる」でしょ・・

・・一般論だけれど、これからも、ほとんどの対戦相手は、守備ブロックを固めるゲーム戦術で臨んでくるだろうね・・だからこそレッズは、攻撃に変化をつけられるような、様々な「アイデア」を練ることが大事なんだよ・・

・・もっともダメなのは、同じリズムとやり方で仕掛けていくことだよね・・そんな攻撃だったら、相手もしっかりとイメージ作りして対応するから、そう簡単には崩せない・・

・・だからこそ、ミドルシュートやアーリークロスだけじゃなく、相手のタテパスを狙って(わざとタテパスを出させて!)インターセプトし、そのまま直線的 に相手ゴールへ迫っていっちゃうとか、相手が予想もしないゾーンとシチュエーションで、思い切ったドリブル勝負や、ダイレクトを織り交ぜたコンビネーショ ンをブチかましていくとか・・そんな攻撃の変化が、重要な意味をもってくるんだよ・・

あっと・・書きすぎ・・

その変化だけれど、仕掛けの「突貫小僧」、関根貴大が交代出場してきたとき、誰もが、その「変化クリエイターの権化」に大きな期待をもったはず。

もちろん私も、「行け〜っ!!」なんて声を出しちゃったけれど、観客席も、関根貴大がボールを持つたびに、大きく響(どよ)めいていたっけね。

そして、ホントに・・

とにかく、柏木陽介とのコンビネーションから抜け出して決めた「あの」決勝ゴールは、とてもエキサイティングだった。

その後も、柏木陽介が何度かビッグチャンスを得たし、原口元気のドリブルシュートチャレンジにも勢いが乗りはじめたっけ。

まあ、全体的な内容からすれば順当な勝利と言えるだろうけれど、それでも、苦労させられたことも、確かな事実だった。

でも、視点を変えたら、それが、「粘り強く」しっかりと勝ち切った「勝ち点3」だったという表現も、確かに当てはまる。

その視点で、この勝利の意義は、とても大きいと思う。

粘り強く勝ち切れたこと。それが、選手たちの脳裏に焼き付くことで、このような「タイプの勝利」に対する自信と確信が、大きくスケールアップしたと思うんだよ。

そう、そんな自信と確信こそが、勝者のメンタリティーと呼ばれるモノの本質だと思うわけだ。

だからこそ、どんなに苦しいゲーム展開であったとしても、粘り強く、最後まで諦めずに、攻守にわたって自分主体のチャレンジをつづけられるということなんだ。

==============

 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]