湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第31節(2014年11月3日、月曜日)

 

そこには、二つの素敵なテーマがあった・・(マリノスvsレッズ、0-1)

 

レビュー
 
良かったネ〜・・

ミハイロ・ペトロヴィッチを(そのサッカー哲学と人間性、そしてプロコーチとしてのウデを!!)高く評価している筆者だから、やはり嬉しかったですよ。

でも・・

そう、まだまだ、リーグ終盤の紆余曲折はつづく。ホントに、ギリギリまでつづく。

めくるめく歓喜と奈落の失望が交錯するサッカー。だから、そう簡単には止められない。とにかく、お互い、そこで展開されるドラマを、とことん楽しみましょう。

ということで、この試合のポイント。

私は、次の二つをピックアップした。

一つは、ミハイロ・ペトロヴィッチのゲーム戦術イメージ。

そしてもう一つが、言わずと知れた、充実しつづける勝者メンタリティー。

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ということで、まずゲーム戦術。

記者会見で、ミハイロが言っていた。曰く・・

・・たしかに、いつものように美しいサッカーじゃなかったかもしれないが、この試合に限っては、とにかく我慢というテーマを最優先した・・

・・そう、我慢し、ワンチャンスを狙いつづけるという粘りの勝負サッカー・・

たしかに、この試合でのレッズは、まさに、究極の「忍耐サッカー」を展開したと思う。

何に対する忍耐かって・・!?

そりゃもちろん、次のディフェンスへの「前後のバランス」も考えたサッカーのことだよ。

要は、普段だったら、前のスペースへ押し上げていくところを、この試合に限っては、より「慎重」にオーバーラップしていく・・っちゅうわけだ。

それでもレッズは、(決勝ゴールシーンは除いて!)何度かワンチャンスをモノにしかけた。

前半でも、後半でも、限られてはいたけれど、二度、三度と、決定的な「仕掛けの流れ」からの実質的な「決定機」を、忍耐ベースのサッカーのなかで「も」作り出したんだよ。

だからこそ、拍手。

だから私は、マリノス樋口靖洋監督と同様に、後半、残り15分あたりが勝負だと思っていた。

そう、物理的にも、心理・精神的にも、限界レベルに達する時間帯。そこで、どんなグラウンド上の現象が繰り広げられるのか・・。

大きな興味をもってコトの成り行きを見守っていたっけ。

そんな私の目の前で、後半20分にはマルシオが、また後半30分には、突貫小僧、関根貴大が登場してきた。

そう、「個の勝負プレー」にも大いに期待がもてる切り札的なプレイヤーたち。

この試合では、絶対的なワントップ興梠慎三を欠いている。そのこともあって、後方からの押し上げのダイナミズムも、簡単にはアップしていかない。

この試合でワントップを務めた李忠成にとっても、この日のミハイロの「ゲーム戦術」も含めて、十分なサポートが得られない、とても厳しい状況でのプレーだったはずだ。

でも彼は、それを、自らの意志で「乗り越えなければ」ならない。サッカーじゃ、自分自身で、「何か」を切り拓いていくなかでこそ、本物の「ブレイクスルーの流れ」に乗れるモノなんだよ。

彼には、そのメカニズムを体感し、自分の志向と思考、そして(彼特有の!)強烈な意志をもって、次の段階へ進んで(カラを突き破って)もらいたいと思う。

何せ、この時点でも、彼が出来ること、そして出来ないことは、ものすごく明白なんだからね。ガンバレ〜、李忠成〜〜っ!!

あっと、ハナシが逸れた。

ということで、ミハイロがイメージしていた「ゲーム戦術」。

骨子は、前述したように、忍耐サッカーをベースにワンチャンスをモノにする・・というイメージ。でも・・

そう、そのなかで、ミハイロも、勝負に打って出たんだよ。

彼は狙っていた。「個の才能プレイヤー」を投入する(リスクにチャレンジする!!)タイミングを計っていたんだ。

そして、まさに理想的なゲーム展開プロセスのなかで、勝負に打って出た。

そのタイミングまでの私は・・

・・もしかしたらミハイロは、(興梠慎三を欠いていることと、昨日ガンバが引き分けたことも含めて!?)引き分けも、イメージ選択肢のなかに入っていたのかもしれない・・

・・なんてこともアタマの片隅にあったんだよ。

「まあ、仕方ないかもしれないナ・・ここは無理せず、次のガンバ戦に、総力を挙げて勝負を仕掛けていくということか・・」なんて、安易に考えていたんだ。でも実際は・・

そう、ミハイロは、ちゃんと、具体的な勝負オプションとして、「リスク・チャレンジの駒」を用意していたっちゅうことだ。

そして、「それ」が、見事にツボにはまった。

その決勝ゴールシーンでは、突貫小僧が、仕掛けからフィニッシュまで主役を演じた。

ちょっと、鳥肌が立った。

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そして次のテーマが、勝者メンタリティー。

言わずもがなだけれど、決勝ゴールをブチ込んでからの(ロスタイムも入れた!)最後の15分間にこそ、その本質が内包されていたんだよ。

もちろん、決勝ゴールをブチ込んだ「突貫小僧」が、勇気をもって勝負していったときの「マインド」にも、チーム全体に、どんどんと深く、深〜く浸透しつづけている勝者メンタリティーという「心理パワー」が、如実に現れていたとは思う。

でも、ここでは、最後の15分間を、まさに立派にゲームを、主体的、積極的にコントロールし切った(敢えて、守り切った・・とは言わない!!)というグラウンド上の現象にスポットを当てたい。

そう、守備こそが全てのスタートラインであり、そこにこそ、選手たちの意識と意志の「内実」が明確に表現されるのだよ。

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そのとき、思わず、「ヨ〜〜シッ!!」っていう声が出た。

それは、最前線からの数十メートルを、爆発スタートとフルスプリントで寄せてきた柏木陽介が、マリノスのボールホルダーからボールを奪い返したシーンだった。

私は、ディフェンスへ戻っていく柏木陽介が、スタートしてからフルスプリントで相手に追いつくまでを、しっかりと目で追っていた。だからこそ、声が出た。

柏木陽介は、何度も、何度も、攻守にわたって、ものすごいエネルギーを放散する汗かきハードワークをブチかましつづけていた。

そんなハードワークに、チームメイトたちが勇気づけられ、呼応しないハズがない。

もちろん、柏木陽介の最前線からのチェイス&チェックという「刺激」だけじゃなく、選手一人ひとりが、強烈な意志をベースにプレーしていたからこその「スーパー組織ディフェンス」だったわけだけれど・・。

そう、皆さんも観られたとおり、最後の15分間、レッズ守備ブロックは、まさに一人の例外もなく、仕事を・・、それもものすごくハードでリスキーな仕事を、探しつづけたんだよ。

だから、結果として、何度も、本当に何度も、一つの「ボール奪取ポイント」に、三人、四人のレッズ選手たちが「飛び込んでくる」ようなクラッシュシーンがつづいたんだ。もちろん、フェアなクラッシュ(競り合い)だよ。

それも・・サ、飛び込んでくる全員が、スライディングやカバーリングなど、何らかのカタチで、効果的なブロックとして機能していたんだよ。

それは、とても、とても素敵なシーンの連続だった。

そう、サッカーは、攻守にわたって、主体的に、積極的に、仕事(リスクチャレンジ)を探しつづけられて初めて、めくるめく喜びを知ることが出来るモノなんだよ。

そして、もちろん、観ているコチラも心から感動させられるわけだ。

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とにかく、この試合では、そんな二つの「素敵なテーマ」をピックアップできた。自分自身の学習機会としても、とても貴重な時間だった。

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ところで、先日、高円寺のパンディットという「トークライブハウス」で、下記の「ナマ対談本」に絡めて、後藤健生さんと対談をやったんですよ。

アナウンス(事前の告知)が足りず、参加していただいた方は少なかったけれど、その対談全体が、「You Tube」にアップされましたので、お知らせします。

2時間近くも話しまくったのですが、その第一部が「こちら」で、その第2部が「あちら」です。

また、下記の「ナマ対談本」についても二人で語っている部分があるのですが、編集部が、それを、このように「編集」したのだそうです。まあ、ということで「こちら」もご参照アレ。

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ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を介して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。

その新刊については、「こちら」をご参照ください。ではまた・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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