湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第27節(2015年9月12日、土曜日)

 

FC東京を”イタリア”にしたマッシモ・フィッカデンティ!?・・(FC東京vsヴィッセル、3-0)

 

レビュー
 
「マッシモ・フィッカデンティさんは、FC東京を、”イタリア”にしちゃったんじゃありませんか?」

この、私が投げた質問のバックボーンについては、後述しま〜す。

ということで、まずゲームの全体像から・・。

このゲームの「構図」は、こんな感じだったですかね。

・・前半から、アウェーのヴィッセル神戸が、攻守にわたる優れた組織サッカーで、ゲームのイニシアチブを握る(ここでは高いポゼッションという意味に限定しまっせ!!)・・

・・それに対してFC東京は、まさに「猛禽類の眼」で、次、その次のボール奪取スポットを、脳内イメージにフォーカスしつづけている・・

・・とにかく、FC東京が展開するディフェンスのコノテーション(言外に含蓄される意味!)は、まさに秀逸の極みだった・・

・・ということで、ボールはキープし、ゲームのイニシアチブは握っているヴィッセルだったけれど、まったくといっていいほど、決定的スペースを突いていけない・・シュートを打てない・・

・・逆にFC東京は、狙いすましたボール奪取と素早い攻守の切り替えから(前戦選手たちは、ボールを奪い返せることを確信し、早いタイミングで、フリーランニングに入っている!)、何度も、必殺のカウンターをブチかます・・

・・そして、FC東京のツボが炸裂しつづける・・

・・ってな具合に、このゲームは、FC東京が、ヴィッセルを、ゲーム戦術のドツボにはめ込んだ(!!)ってな展開だったんだよ。

だから、冒頭のような質問をしたくなった。それは、こんな「感じ」だったですかね・・

・・私は、6年間ドイツでサッカーの勉強をしたんですよ・・だから、ドイツ人が、イタリアサッカーに対して、どのようなイメージをもっているか、よく知っています・・

・・イタリアと対戦したことがあるドイツ代表選手が、こんな言い方をしたことがあります・・

・・イタリアと試合すると、とにかく、ボールがないところでフリーになる(スペースを活用する!)のが、ものすごく大変なんだ・・その難しさは、イングラ ンドや、フランス、スペインなんかとは比べものにならない・・そして、一発のカウンターで沈められちゃったりする・・フ〜〜ッ・・

・・この試合でのFC東京は、まさに「そんな感じ」だったと思います・・素晴らしく(美しく!!)堅いディフェンスから、必殺のカウンターをブチかます・・そして、この試合では、その勝負のツボに、ピタリとはまった・・

そして、その質問の最後を、冒頭の言葉で締めたっちゅうワケでした。

それに対してマッシモさんは、例によって、とても真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・我々のサッカーを、とても端的に表現し、ゲーム内容をうまく解釈してくれたと思う・・

・・たしかに、おっしゃる通り、相手のボールがないところでの仕掛けに対するディフェンスが、とてもうまく機能した・・

・・相手は前掛かりで攻め上がってきたわけだが、そんなゲーム展開もまた、我々の意図するところでもあった(ゲーム戦術イメージの範疇!)・・

・・そして実際に、我々がイメージするとおりの素晴らしいボール奪取プロセスを展開できたし、そこからのカウンターも、とても効果的に仕掛けていけた・・

・・とにかく私は、信じられないほど優れた選手たちに恵まれたことを(神に対して!?)心から感謝している・・彼らは、素晴らしいパーソナリティーとインテリジェンスを持ちあわせているんだ・・

それは、マッシモ・フィッカデンティさんとの、とても魅力的な対話でした。

でも彼は、「FC東京を”イタリアにした”んでしょ!?」っちゅう私の質問の骨子に対しては、(直接的な!)コメントはしてくれなかったね。チト、残念だった。へへっ・・

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。

メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。

でも・・ね・・

皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。

その後のトーナメントは、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。

だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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