湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第13節(2016年5月21日、土曜日)

 

両チーム監督との、素敵な質疑応答・・(ベルマーレvsベガルタ、0-1)

 

レビュー
 
「シャイセ〜〜ッッッッッッ!!!!!!!」

思わず、叫んだ。

ドイツ語。

意味は、「クソ〜〜ッッッ!!!」。

記者会見で、両チームの若武者プロコーチ(あっ・・監督でしたね〜!!・・へへっ)との質疑応答がうまくいき、とても気が晴れた状態でオートバイにまたがった。

そして、ものすごく清々(すがすが)しい空気を、気持ちよく切り裂いて東京へ向かっていたんだ。

そしたら・・

まず、国道1号線のバスパス(茅ヶ崎から藤沢まで)で。次は、第三京浜の横浜を過ぎたあたりから多摩川料金所まで。そして最後は、世田谷区から渋谷区に入ってから。

えっ!? それは何かって!?

もちろん、冒頭の「罵声」が飛び出した場所ですよ。

その罵声のバックポーンは、にわか雨。

そう、まったく予想だにしなかった雨に遭遇しちゃったんだ。いつも書いているように、私は、気象庁HPから、常に最新の情報を取得していますからね。

そして今日は、まったくといっていいほど、「雨の気配」はなかったんだ。私が出発した午後一時ころの情報では・・ネ。

でも・・

BMWスタジアムを後にしたところまでは良かったけれど、その直後の茅ヶ崎から渋谷に掛けて、そう、帰宅コースの全行程で、雨に降られまくったっちゅうわけさ。

もちろんビショビショになった。また単車も、汚れた。フ〜〜・・。

でもお天気のコトだから、この、やり場のない情緒は自分の中でプロセスするしかない。だから、「独り言の罵声」をブチかましたっちゅうわけさ。フンッ・・

あっと、ゲーム。

前半はベガルタが、完全にゲームを掌握し、何回か決定的なチャンスも創りだした。

でも後半は、ベルマーレが押し返し、互角以上のサッカーを展開した。

そのことについて、ベガルタ渡邉晋監督は、ハーフタイムに、ベルマーレの盛り返しを選手たちに意識付けしていたっけ(=優れた心理マネージメント!)。

そのベルマーレの盛り返しだけれど、特にリードされてからの勢いは、見応え十分だった。

まあ、先発メンバーと、それぞれの戦術タスク、また選手交替プロセスの中で、クルクルとポジション(基本的な戦術タスク)を動かすといった、ベルマーレ、チョウ・キジェ監督の「采配イメージ」についちゃ、詳細は知る由もないよな。

でも、まあ、そのバックボーンについては想像はできるし、それは、それで、とても前向きを意図と意志を感じていましたよ。

でも・・

そんなチョウ・キジェ監督に、記者会見で、こんな質問が飛んだんだ。曰く・・

・・とても心配している・・今シーズンのベルマーレは、ここまでホームで一勝もできていない・・このままでは、誰もスタジアムに足を運ばなくなってしまうのじゃないか?・・

チョウ・キジェは、そんな厳しい質問に対しても、とても真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・

・・おっしゃるコトは分かります・・とはいっても、いま我々が、勝つこと「だけ」をターゲットにしたサッカーをやりはじめたら、それは、まさに本末転倒になってしまう・・とにかく我々は、いまのサッカーを突き詰めなければいけないと思っているんですよ・・

そんな「やり取り」の後で、私は、こんな質問を投げることにした。

・・いまの質疑応答に乗っかるのですが・・もちろん、負けたって構わないなんて誰も思っていないでしょ・・そりゃ、勝つに越したことはない・・

・・でも、やはり目的は、美しく勝つことであり、そのために(様々な相克ファクターを、より高い次元でバランスさせる!?)努力を積み重ねることだと思う・・

・・要は、やっているサッカーに、発展とか良い結果のニオイがするなど、期待や希望を抱けるかどうかというのが、もっとも大事なポイントだと思うのだが?・・

チョウ・キジェ監督は、そんな私の質問に対して、例によってエネルギッシュに、そして真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・そうです・・そこに、希望や期待がなければいけません・・

・・特に、わたし自身が期待や希望を持てていることが大事です・・それがなければ、選手たちを納得させられないし、前向きにチャレンジさせられない・・

・・サポーターの方々にしても、そんな我々の「確信」が伝われば、それによって、全体的にポジティブな雰囲気が自然とできあがってくると思います・・

・・また選手たちに対しては、できる限り勝敗に対するプレッシャーを取り除くことで、後ろ髪を引かれないチャレンジをつづけられるようにしたい・・

・・とはいっても、勝利を目指す(ソレにこだわる)という基本的な姿勢は決して崩しませんよ・・

・・とにかく、我々が志向しているサッカーが周りに「伝わる」ように努力していくことが大事だと思っています・・それがあれば、周りの、「このサッカーを応援したい」という雰囲気も高揚させられると思っているのです・・

いいね〜・・チョウ・キジェ。

そんなベルマーレ(チョウ・キジェ)については、新連載「The Core Column」で、かなり以前に「こんなコラム」を発表したから、そちらも参照してください。

テーマは、「継続こそチカラなり・・」だったですかね。

あっと・・、ベガルタの渡邉晋監督。

彼にも、こんな、かなり「大雑把な質問」を投げたっけ。

・・このところ渡邉さんのチームを観察する機会がつづいています(レッズ戦、フロンターレ戦、そしてこのベルマーレ戦)・・

・・そのなかで私は、ベガルタの進化を感じているのですが・・改めて、その進化のベースは何かと問われたら、どのようにお答えになりますか?・・

渡邉晋さんは、とても優れたプロコーチだね。彼は、私の質問に応えて、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・それは、積極的にボールをもらう勇気です・・

・・昨シーズンの我々は、堅守速攻のチームだと言われていました・・でも私は、それについて違和感をもっていたんですよ・・

・・そんな評価しか得られないチームじゃダメだと思っていたんです・・

・・そうではなく、しっかりとイニシアチブを握れるサッカーが出来るチームへと脱皮しなければいけない・・それが、これからのチャレンジの方向性なんです・・

・・そんなチャレンジを続けているなかで、選手たちも成功体感を積み重ねられるようになってきている・・

・・そしてソレが、積極的にパスを呼び込む動き(勇気の増幅)につながっていると思っています・・

いいね〜、渡邉晋。

そう、サッカーの基本はパスゲーム。だからこそ、「勝負はボールがないところで決まる・・」。

そしてだからこそ、決断力と勇気にあふれた「ボールがないところでの動き(プレー)の量と質」が問われるっちゅうわけさ。

もちろん、攻撃で「それ」に対する意識が高まれば、当然「次の守備」でも、ボールがないところでの動きの量と質を、より効果的に高揚させられる。

そう、優れた組織サッカー(トータルフットボール)への本物のブレイクスルーを後押しする、戦術的&心理・精神的な「善循環」がまわりつづけるんだよ。

これからも、渡邉晋ベガルタ「にも」注目しよう。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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