湯浅健二の「J」ワンポイント


2024年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第19節(2024年6月22日、土曜日)

 

両チームが展開する、同じようなベクトル上にあるサッカーを観ながら・・不確実なサッカーじゃ、攻守にわたって、柔軟な「主体性プレー」が求められるのにナ〜・・なんてコトを考えていた・・(ゼルビアvsアビスパ、0-0)

 

レビュー
 
・・この両チームは、似ていると言われているように思いますが・・

・・実は、違いはあるんですよ・・

アビスパ監督、長谷部茂利が、そんなニュアンスの内容をコメントしたとか。

フムフム・・

たしかに、両チームともに、徹底(戦術)サッカーという意味では、似ていないコトもない。

でもソレは、あくまでもボール奪取プロセス(守備)のコンセプトという意味合いだよネ。

それに対して・・

スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)については、たしかに、人とボールの動きという視点で、イメージングのニュアンスの違いは、ある。

ゼルビアは、どんどん、タテに仕掛けていくことで、なるべく最短距離で(素早く)シュートへ持ち込もうとする。

それに対して、アビスパのイメージングは、その「動き」を活性化し、「変化」を与えることで、ゼルビア守備を振り回そうとするんだ。

そして、そのプロセスで出来たスペースを突いていく。

まあ、このゲームで、アビスパが、そんな創造的なイメージングを押し通し、機能させられたかといったら、疑問符はつくけれどネ。

もちろん、アビスパもまた、タテへ仕掛けていくチャンスを逃さず、シンプルにタテへ突っ掛ける傾向は強いんだよ。

ということで・・

この両チームの、チーム&ゲーム戦術コンセプトが、外郭的には、似通っているって言えるのかな。

とはいっても、最終勝負というテーマでは・・

ゼルビアに、絶対的なキーパーソンが欠けていたことを、忘れちゃいけない。

そう、オ・セフンやミッチェルデュークといった、「高さ」が不在だったんだ。

だから、アバウトな放り込み&セカンドボール狙いというやり方には、限界があった。

また、ゼルビアでは、ナ・サンホといった、仕掛けのリンクマンも、不在だったね。

とはいっても・・

そう、藤尾翔太や平岡悠といった、オリンピック代表もいるし、彼らは、彼らなりに、頑張っていた。

考えてみたら・・

今シーズンのゼルビアは、昨シーズンから、まったく別物チームになったとも言えそうだね。

それでも、超絶の徹底(戦術)サッカーは、そのまま。

まあ、考えてみたら、それも当然だと思えてくる。

何せ・・

攻守にわたって、「やること」が、明確に決められているわけだからね。

あるゼルビア選手が・・

・・やるコトが明確だから、すぐに、アクションに入れるんですよ・・

そんなコトを言っていたとか。

でも、わたしは・・

そんな「ステレオタイプ発想」のプレイヤーを、育てようとは思わない。

サッカーでは、同じプレー(シチュエーション)は、二度と起きないわけだから・・ね。

それほど、不確実なサッカーでは、状況の変化が、激しい。

だからこそ、サッカーでは、柔軟な(≒自ら考え、決断し、勇気をもって実行できる)主体性プレーが求められるんだ。

まあ、ゼルビアのように、やるコトが「カチッと決められていたら」、そりゃ、失点を減らすことはできるでしょ。

そして、セットプレーなどでゴールを一つでも奪えば、勝てる可能性が高まるっちゅうわけだ。

まあ、たしかに、長谷部茂利が率いるアビスパでは、前述した「動きの柔軟性」という意味で、ゼルビアのスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)とは、一味、違う。

とはいっても、アビスパにとっても、勝つことは至上命題だし、その意味を内包する、徹底的なボール奪取プロセス(守備)の方向性は、とても似通っている。

わたしは、ドイツ留学時代に、何度も、その「タイプのサッカー」を体感している。

そして、そんなサッカーをやる監督に対して、ドイツサッカーの(創造性という絶対コンセプトを大事にする!)レジェンドプロコーチが、苦言を呈するんだよ。

わたしは、何度も、そんな「ハード」なディスカッションに、居合わせるコトを許可された。

それは、ものすごく深く、そして、冷や汗が出るほどシリアスな体感ではあった。

そんなコトも、少しずつ、進化&深化を積み重ねている「フットボールネーション伝統」の、絶対ベースの一角っちゅうコトなんだろうね。

この試合については、そんなところかな・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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