湯浅健二の「J」ワンポイント


2024年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第22節(2024年7月5日、金曜日)

 

リーグ最高峰の実力を備える両チームの激突・・素晴らしい、せめぎ合い勝負マッチだったけれど、「個をうまく活用」という視点で、ヴィッセルに一日の長が・・(サンフレッチェvsヴィッセル、1-3)

 

レビュー
 
サッカー内容的にも、勝負強さ(勝者メンタリティー!?)という側面でも・・

今この時点じゃ、「J」を代表する高質サッカーの「双璧」ってな両チームの激突。

堪能したよ。

まあ、ボール奪取プロセス(守備)については・・

素早く効果的な攻守の切り替え(トランジション)から、チェイス&チェック(寄せ)、チーム内でのイメージング・シンクロ(連動性)・・

そして、局面デュエルの内実と、「最後の半歩というファクター」でも・・

両者ともに、まさに、リーグの双璧だね。

でも・・

そう、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)という視点では、調子を取り戻してきたヴィッセルに、少しだけ、一日の長があると感じる。

その「長」の本質だけれど、それは、何といっても、組織と個のバランス。

ヴィッセルは、大迫勇也、武藤嘉紀に代表される、天賦の才に恵まれた「優れた個」を有しているんだよ。

だから、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)の内実も、より「変化」に富んだモノに出来る。

もちろん、優れた人とボールの動きと、そのリズムの「有機的な連鎖」が、絶対ベースだよ。

ヴィッセルの場合・・

そんな「動き」によって、たまにスペースを攻略し、相手陣内に深く侵入できたとき、彼らは、「個と組織」を、うまく絡められるんだ。

例えば・・

ドリブル勝負をブチかまし、直近のマーカーを置き去りにする、武藤嘉紀。

そのまま、サンフレッチェ最終ラインへ、突っ掛けていく。

ただ、そんな「チャンス状況」には、彼らなりの「隠し味」があるんだ。

それは・・

その周りで、武藤嘉紀からの決定的パスを受けようと、フリーランニングをブチかますチームメイトたち。

その「足」は、まったく止まらない。

そう、このような最終勝負チャンスで、武藤嘉紀は・・

ドリブルでシュートまでいったり・・

ボールがないところでアクションをつづけるチームメイトへの、必殺スルーパスを出したり・・

そんな、最高危険度の「オプション」を、もっているんだ。

そんな「オプション」を創りだせるのは・・

武藤嘉紀や大迫勇也といった「個の才能プレーヤー」による、それなりの「危険なニオイ」を放散する個人プレーがあるからこそなんだ。

最後に・・

ヴィッセルの、カウンター3点目をブチ込んだ、山口螢。

すごかったネ〜・・

チャンスを見計らった、勝負の、「押し上げフルスプリント」。

脇目も振らずに、ゴール機会に入れるポジションへ、一目散ってな感じだった。

そういえば・・

そう、我らが日本代表も、そんな山口螢の、「必殺の押し上げ」や、一発ダイレクト、キャノンミドル弾も含めて、何度、救われたことか。

彼は、ヴィッセルの、まさに屋台骨といってもいい存在だよネ。

そんな彼が魅せた、脇目も振らずの押し上げ・・

そんなグラウンド上の現象について・・

1996年アトランタオリンピックのグループリーグ、ブラジルとの第一戦で、1-0の勝利を呼び込んだ伊東輝悦が、こんなコトを言ったことがあったね。

彼は、守備的ハーフ。

そして、一発のロングパスからのカウンター状況で、中盤の底から、飛び出していった。

その一発ロングは、誰が考えても、ブラジルに、簡単にコントロールされてしまうボールだった。

でも、伊東輝悦は、飛び出した。

そして、ブラジルのディフェンスとGKが「交錯」することで、こぼれたたボールが、走り上がりつづけていた伊東輝悦の「足許」に転がってきたんだよ。

後日・・

・・あんな状況なのに、なぜ飛び出したのかと聞かれた伊東輝悦が・・

・・いや、そのとき、「何か」が匂ったんです・・

・・と、一言。

フムフム・・

まあ、山口螢の場合は、確固たるイメージングに基づいた飛び出しなんだろうけれど・・

あっ、伊東輝悦にも、何らかの、確固たるイメージングがあったに違いない・・

スミマセン、伊東輝悦さん・・

とにかく・・

どんなに「薄い可能性」でも、それに望みを託し、駆け上がる(究極のハードワーク!?)。

そんな「姿勢」にこそ、勝者メンタリティーの本質が、隠されている・・!?

さて〜〜・・

なんか、標語みたいだけれど・・

わたしは、これまでに、こんな表現を、創りだしたましたよ。

・・クリエイティブな無駄走りこそが、高い次元のサッカーを実現する・・

・・積極的にバランスを崩していく姿勢にこそ、勝者メンタリティーの本質が宿る・・

・・そして・・

・・崩れた「バランス」を、疲れたカラダにむち打ち、必死に戻りながら、そのバランスを再構築できるような高い「意識と意志」にこそ、究極の心理ボールゲームであるサッカーの本質がある・・

・・等など・・

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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