湯浅健二の「J」ワンポイント


2024年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第24節(2024年7月20日、土曜日)

 

ヴェルディが魅せるサッカー(内容)の充実度が、ここにきて、大きく高揚しつづけている・・(アビスパvsヴェルディ、0-1)

 

レビュー
 
イニシアチブ・・

ゲームを観ながら、まず思いをめぐらせたキーワードが、それだった。

普通だったら・・

そう、ポゼッション率(ボールの支配率!?)などが「評価基準」になるんだろうな。

でもわたしは、この試合では、そのニュアンスを、少し深めようと思ったんだよ。

要は・・

ボール奪取プロセス(守備)では、どこで、どのようなカタチ(状況)で、ボールを支配できたのか・・

次のスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)では、どこで、どのようなカタチ(状況)で、スペースを突いていけたのか・・

このゲーム・・

わたしの眼には、その両方のファクターで、ヴェルディに、一日の長があると映っていた。

相手は、優れたプロコーチ、長谷部茂利が率いるアビスパだからね。

攻守コンテンツの「微妙なニュアンス」で、ヴェルディが、イニシアチブ(主導権)を握っていると感じられたコトは、嬉しい限りではあった。

特に、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)における、タテへの仕掛けパス。

しっかりと自チームでボールを動かしながら、前戦プレイヤーの、「スッ」ってな感じのパスレシーブの動きに合わせて、正確で強いタテパスが送り込まれる。

それは、前戦プレイヤーの、ボールがないところでのアクションの量と質が、優れているだけではなく、ボールホルダーも、しっかりと「その動き」をイメージング出来ているからに他ならない。

わたしは、そんな戦術現象にも、優れたプロコーチ、城福浩の「ウデ」を観ていた。

もちろん、そんな人とボールの動きは、チームのなかに、確固たる「イメージング・シンクロ」がなきゃ、決して実現できない。

そして、そんな「シンクロした動き」のクリエイターが、城福浩というわけだ。

あっ、繰り返し・・スミマセン・・

もちろん城福浩は、一つの、「発想のキッカケ」を、選手たちに与えるに過ぎない。

そして、選手たち自身が、その「発想」を、主体的に展開し、深めていくっちゅうわけだ。

それこそが、攻守にわたる主体性プレーの「原型」っちゅうわけさ。

とにかく、わたしは・・

そんな、人とボールの、創造的な「動き」こそが、城福浩が志向するチーム作りの「原型」なんだと感じていたコトが、言いたかった。

そして、そんな、相手ディフェンスの「イメージングのウラを突く」、人とボールの動きが結実したのが・・

そう、山見大登の、ものすごく冷静にブチ込んだ、先制ゴールシーンだったっちゅうわけだ。

その顛末・・

中盤で浮き球のボールを、見事なワンタッチ・トラップで支配下に置いた、染野唯月。

そして彼は、その左サイドでフリーになった見木友哉へ、ボールを動かすんだ。

そこでボールを持った見木友哉・・

スッと、ボールをタテへ「流す」コトで、アビスパ守備の三人の「意識と意志」を引きつけちゃう。

いや・・

その瞬間には、後方から戻ってくるアビスパ選手も含めたら、五人(!?)の意識を引きつけちゃったとも言えそうだね。

要は、見木友哉は、まさにスーパーな「タメ」を演出したということだね。

そして最後は・・

またまた冷静に、左サイドでまったくフリーになった山見大登へのラストパスを、ス〜〜ってな感じで、流し込んだっちゅうわけだ。

そんな一連の、人とボールの動きを観ながら・・

・・たしかに、ヴェルディ選手たちの個の才能レベルも高いけれど、そのハイレベルな人とボールの動きの背景には、着実に培った「イメージ・ベース」がある・・

・・そんなコトにも、思いをめぐらせたモノさ。

そう、そこには・・

スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)の、本質的で、もっとも重要なファクターである、人とボールの動き(互いのイメージング・シンクロ)のエッセンスが、詰め込まれていたんだよ。

そして、もう一つ指摘したいのが・・

レベルの高いヴェルディのスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)こそが、彼らの、これまた、とてもレベルの高いボール奪取プロセス(守備)のイメージング・ベースになっているという事実。

そう、攻撃のレベルが高いからこそ、守備のレベルもアップするんだ。

また、その逆も、あり。

後半のヴェルディが魅せた、ボール奪取プロセス(守備)・・

そこでは、常に、ボールがないところでの、アビスパの仕掛けを、「先読み」し、使えるスペースを潰していた。

まあ、その背景には・・

アビスパが、ザヘディという「個のチカラで特徴ある選手」を入れてきたこともあったかね。

そう、ザヘディの登場で、アビスパ選手たちの「仕掛けイメージ」が、「何か」に引き寄せられ、限定され「過ぎて」しまった!?

わたしの眼には、そう映っていた。

最後に、ヴェルディ中盤の王様、森田晃樹の復帰。

二試合つづけて、途中交代ということになったけれど・・

さすがの存在感を魅せつづけた。

ヴェルディの中盤・・

このゲームでは、齋藤功佑、見木友哉、染野唯月、そして山見大登が気を吐いた。

また、もちろんワントップの木村雄大も、攻守にわたって、ダイナミックな主体性プレーを魅せたし、ベンチには、稲見哲行、松橋優安、山田剛綺なんていう連中も、控えている。

いいね〜・・

とにかく、これからの、城福浩の「ホンモノの手腕」に期待しましょう。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]