湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2024年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第33節(2024年10月6日、日曜日)
- リーグ優勝を争うチームと、降格リーグ真っ只の中チームの対峙・・そんな視点で、二つのゲームから、ポイントをピックしました・・(サンガvsヴィッセル、2-3)(ジュビロvsサンフレッチェ、1-2)
- レビュー
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- まず、サンガ対ヴィッセル・・
とにかく、すごい迫力だった。
両チームの、意識と意志ポテンシャルの、レベルを超えたぶつかり合い。
両チームともに、攻守ハードワークとリスクチャレンジ機会を、選手たち一人ひとりが探しまくる、主体性プレーが充実した良いチームだ。
とはいっても・・
たしかに、ボール奪取プロセス(守備)の内実では、互角なんだろうけれど・・
それでも、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)では、やっぱり、吉田孝行ヴィッセルに、一日の長があると感じた。
その「長」のバックボーンだけれど・・
一つは、言うまでもなく、大迫勇也、武藤嘉紀、宮代大聖に代表される、個の才能。
彼らは、優れた天賦の才に恵まれているにもかかわらず、守備でサボることは、決してない。
真摯なプロサッカー選手たち・・
そこが、特筆なんだよ。
そんな彼らだから、攻守にわたる、ボールがないところでのアクションの量と質でも、特筆の「実効レベル」を魅せるのも、道理。
とにかく・・
スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)での、ヴィッセル選手たちのイメージング(戦術的なピクチャー内容)に、アドバンテージがあると感じられるんだ。
それは・・
人とボールの動きの「連動性」とも、言えるかな。
選手たちが描くイメージングが、しっかりとシンクロしているんだよ。
一つひとつのプレーは、もちろん「独立」しているけれど・・
「ある瞬間」に、選手たちのイメージングが、シンクロし、彼らが、「一体」として機能するシーンが、グラウンド上に出現する。
そんな、それぞれのイメージングの「シンクロの内実」にこそ、監督の「戦術プランナーとしてのウデ」の本質が、あるっちゅうわけだ。
・・あっ、アイツが、次のパスレシーバーになる・・
・・アイツとは、すでに、事前アイコンタクトで、仕掛けイメージングは、共有できている・・
・・アイツは、パスを受けたら、「あそこ」のスペースを意識するに違いない・・
そんな、次の仕掛けプロセスへのイメージングが、どのくらい素早く正確に、そして「動的」に、チームメイトと共有できるか・・
それこそが、監督さんの「ウデの見せ所」っちゅうわけだ。
もちろん、そのレベルを高揚させる作業は、難しい。
だから時間がかかるし、うまくいくかどうかも分からない。
それでも優れたプロコーチは、失敗(=クビ!)を恐れずに、チャレンジしつづける。
そんな、勇気あふれる姿勢こそが、プロ選手たちの「心」をも、しっかりと掴み、動かすんだ。
もちろん、チョウ・キジェも、そんな、優れたプロコーチのエッセンスを、持ちあわせている。
後半のサンガが魅せたように、選手たちの「血」のなかには、積極的&攻撃的な「チョウ・キジェ・スピリット」が流れているんだよ。
後半のサンガが魅せたペースアップには、そのスピリットが凝縮されていたということだ。
それに対して、前半で二点もリードを奪ったヴィッセルだったけれど・・
後半サンガの、ものすごく積極的&攻撃的なスピリットに、押し込まれるように、二つのキャノンシュートまで、ブチ込まれちゃうんだ。
これで、ゲームが「イーブン」に戻った。
わたしは、この後半の、ゲーム展開の「変容」について・・
・・まあ、よくあるゲーム展開の変容だけれど・・
・・それにしてもヴィッセルは、やられ過ぎだろ〜・・
・・とにかく、後半の中盤までは、ヴィッセルは、完璧に寝ていたんだ・・
でも・・
そう、そんな展開から、ヴィッセルが目を醒ます。
キッカケの一つは、俊足ジェアン・パトリッキの投入。
それによって、やっと、本当にやっと、ヴィッセルのサッカーが、活性化していくんだ。
そして後半38分に、ジェアン・パトリッキの、ラッキーな勝ち越しゴールが決まったっちゅう次第。
あれほど強烈な「意識と意志ポテンシャル」をブチかました、チョウ・キジェ京都サンガ・・
たしかに、彼らには不運な失点ではあったけれど・・
全体的なサッカー内容をフェアに評価したら、やっぱり、ヴィッセルの順当勝利っちゅうことになるんだろうね。
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そして、そんな全体評価は、次のジュビロ対サンフレッチェ戦にも、当てはまりそうだ。
このゲームもまた、すごい迫力の、意識と意志ポテンシャルのぶつかり合いだった。
また、そこでピックするポイントも・・
前述、サンガ対ヴィッセル戦と、似通っている。
たしかに、ジュビロは、最後の最後まで、強烈な、攻守ハードワークとリスクチャレンジ(強烈な意識と意志ポテンシャル!)を魅せつづけたけれど・・
結局は、サンフレッチェの、サッカー的な「一日の長」を、称賛しなきゃいけないってな結果に落ち着いた。
そうなんだよ・・
その「長」のバックボーンもまた、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)での、イメージングの「シンクロ」というテーマに集約されるんだ。
とはいっても・・
たしかに、ミヒャエル広島サンフレッチェは、勝利を呼び込んだけれど・・
ゲーム終了間際には、こんなコトもあった。
後半ロスタイム95分には、ジュビロの、完璧なゴール機会が、生まれたんだ。
そんなシーンを観ながら、サッカーが秘めるドラマ性を、再認識させられていた。
そこでは・・
クロスを、交替出場した西久保駿介が、身体全体のエネルギーを、ボールにぶつけるように、爆発ヘッドシュートを見舞ったんだよ。
誰もが、「アッ、ゴールだ!!」と、確信したはず。
でも、サンフレッチェのスーパーGK大迫敬介が、ギリギリのところで防いで、事なきを得た。
サッカーは、最後の最後まで、何が起きるか、分からない。
お恥ずかしながら、その瞬間、わたしも、フリーズしていましたよ。
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ということで・・
この、降格リーグチームと、リーグ優勝を争うチームの(二つの)対峙では・・
たしかに、ゲーム内容的には、地力で優るチームがイニシアチブを握ったけれど・・
勝負(結果)という側面では、最後の最後まで、どちらに転ぶか分からないという、ギリギリのドラマが繰り広げられたんだ。
やっばり、不確実な要素が満載のサッカーは・・
最後は、自由に(主体的に!)プレーせざるを得ないボールゲームだよな。
そして、だからこそ・・
究極の、心理(ボール)ゲームだって、言えるんだ。
とにかく、とことん楽しませてもらった。
両ゲームの、4人のプロコーチ諸氏には、心からの称賛と感謝の拍手を、おくります。
どうも、お疲れ様でした。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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