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- 2011_CWC・・本物のブレイクスルー体感を積み重ねたレイソルに乾杯!!・・(柏vsモンテレイ, 1-1, 柏のPK勝)・・(2011年12月11日、日曜日)
- さて、どのように書きはじめようか。
開催国枠という、勝負の世界じゃ、心理的にちょっと「引き気味」になってしまう存在の柏レイソルだったけれど、彼らが魅せつけた本当に素晴らしいサッカー内容が、そんなネガティブな雰囲気を霧散させた。ホンモノの実力で南米チャンピオン(ブラジルのサントス)に挑戦する権利をもぎ取ったレイソルに乾杯!!
この試合でも、ネルシーニョが言う「レイソルのスタンダード」が、いかんなく発揮された・・と思う。それは、チーム全体に深く浸透し、有機的に連動しつづける、一本スジの通った(攻守にわたる)戦術イメージ。それについては、Jの「最終節コラム」を参照して下さい。
とはいっても、彼らが、本当の意味でフッ切れた「スタンダード」を存分に発揮できるまでには、ちょっとした紆余曲折もあったね。
ゲーム立ち上がりの時間帯。レイソルは、何度もピンチに立たされたのですよ。決定的スペースに入り込まれたスアソに、まさに絶体絶命と呼ぶに相応しいピンチシーンを演出された(そのうちの一本は右ポスト直撃シュート!)。
それは、デルガドやカルドーソ、そしてスアソといった「個の才能」連中が繰り出す、素早く正確なコンビネーションから生み出された。
立ち上がりの時間帯、レイソル選手たちは、モンテレイが繰り出す人とボールの動きに付いてゆけず(要は、ボールウォッチャーや相手アクションに引きつけられ過ぎになってしまうシーンが続出したことで!)、イメージ的に、完全に相手の後塵を拝していたのです。だから、気付いたらウラのスペースを攻略されていた・・ってなピンチシーンが連続した。とにかく、そこでゴールを割られていたら、かなり「違った」ゲーム展開になっていたかもしれないよね。
それでもレイソルは、そのピンチを凌(しの)ぎきり、徐々にフッ切れていった。そして前半も30分を過ぎたあたりから、ゲームが、互角の「動的な均衡状態」という様相を呈していった。
レイソルは、「世界」との勝負マッチを通し(ゲームのなかで)成長していった。皆さんもご覧になった通り、時間を追うごとに、レイソル選手たちのプレーが自信に満ちあふれていったでしょ。そこで彼らが積み重ねたのは、まさに「本物のブレイクスルー体感」だったと思いますよ。
この勝負マッチを通し、レイソルの「スタンダード」は、一段階も二段階もレベルアップしたに違いない。サッカーは本物の心理ゲームだからネ。自信と確信のレベルがアップすれば、秘めたる実力が、後ろ髪を引かれることなく、120パーセント発揮されるようになるのですよ。
このゲームの内容的な(グラウンド上で繰り広げられた戦術的な)テーマだけれど、やっぱり、スペースをめぐる攻防・・かな。
両チームともに、素晴らしいディフェンスを魅せつづけたのですよ。だからチャンスは限られていた。でも、だからこそ、たまに、ウラのスペースで「ある程度フリー」でボールを持つ選手が出てくるシーンでは、誰もが目を奪われてフリーズし、手に汗握った。
両チームの守備が(ボールがないところでのプレーの量と質が!)しっかりしていたからこそ、スペースをめぐる(勝負ドリブルやパスコンビネーションとそれを阻止する守備の)攻防シーンが誘発する興奮の「振幅」が、ものすごく大きなモノになった・・と思うわけです。
何か舌っ足らずだけれど、とにかくレイソルが、世界へ向けて大きく羽ばたいたことを祝福し、次のサントス戦に思いを馳せようと思う筆者なのです。
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ところで、もう一つの準々決勝、アル・サッド対エスペランス。とにかく、内容と結果が「乖離」した勝負マッチということになってしまった。
高質なパスサッカー(組織コンビネーション)を志向するエスペランス。それに対して、しっかりと守備を固め、強力なトップが繰り出す個の勝負によるワンチャンスを狙うという「勝負サッカー」に徹するアル・サッド。たしかに、それはそれで見所はあったけれど、それにしてもネ〜・・
勝ったアル・サッドだけれど、人数をかけて守備を固めていたにしては、何度も、ウラの決定的スペースを突かれて(エスペランスに守備イメージを凌駕されて!!)ピンチを迎えていたのですよ。
もし彼らが、本当の意味で「質実剛健」でハイレベルなディフェンスを展開していれば、それはそれで、観ているこちらも何らかの感動を覚えたはずなんだけれど・・。
ということで、優れたサッカーを展開したエスペランスだったけれど、結局は、多くの決定的チャンスをモノに出来ずに敗れ去ってしまった。そんなだったから、タイムアップのホイッスルが吹かれたとき、スタジアムが、ちょっと白けた雰囲気に包まれた・・と感じたのは私だけではなかったに違いありません。
準決勝のバルサ戦だけれど、チカラのあるチャレンジャーが、攻守にわたってギリギリの(ある意味ダイナミックな!)勝負を挑んでいく・・というゲームではなく、結局は(バルサの相手が)ガチガチに守りながらワンチャンスのカウンターを狙うというゲーム展開になること必定ということになってしまいました。
もちろん、それはそれで(見方によっては)面白いけれど・・ネ。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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