トピックス
- 2011_CWC・・立派な組織サッカーで存分にアピールした柏レイソル・・(柏vsサントス, 1-3)・・(2011年12月14日、水曜日)
- 最後まで、自分たちの(ネルシーニョが作り上げた!)スタンダードに徹し、立派な組織サッカーでチャレンジしつづけたレイソル。大拍手じゃありませんか。
柏(ネルシーニョ)のスタンダードについては、例によって、この「Jリーグ最終節コラム」を参照してください。
ということで、テーマ。やっぱり、まず世界トップとの「最後の僅差」・・という視点から始めなければなりませんよね。
皆さんもご覧になった通り、局面でのテクニック(スキル)では、明らかにサントスに分があった。ただ、それ以外の、特にチーム戦術的な(組織サッカー的な)イメージの内容では、確実に対抗できていた・・と思う。
記者会見でのネルシーニョも、チーム戦術的な部分では、(ネイマールを中心とした)サントスの必殺カウンターを効果的に潰しつづけたことも含め、しっかりと「整ったサッカー」が展開できていた・・と胸を張っていたわけだけれど、わたしはそれ以上に、組織的なプレーイメージの連鎖という視点で、レイソルに分があったと思っているのですよ。
たしかに数字としては、ボールポゼッション(保持率)でレイソルが少し上回ったわけだけれど、私が用いている組織的なパス(コンビネーション)サッカーという表現が内包しているのは、もちろん、攻守にわたるボールがないところでのアクションの量と質でっせ。「そこの部分」では、明らかにレイソルに分があったということです。
これは、もちろんネルシーニョの「スタンダード」の一環というわけだけれど、とにかく、守備にしても、攻撃にしても、チーム全体が(1人の例外もなく!)組織的な汗かきのアクションを繰り返すのです。だからこそ、あれほど効果的&効率的に、サントスからボールを奪い返せていた。
でも攻撃は、南米の雄サントスが相手だから、たしかに難しかった。そう簡単には、スルーパスなどで決定的スペースを突いていくパスコンビネーションを成就させられるはずがない。
世界の超一流だからこそ攻撃が強力。そして、だからこそ(その強力な攻撃を止めなければならない!)守備のチカラも、必然的にアップする。彼らは、個のドリブル勝負に対処するチカラが強力なだけではなく、相手がコンビネーションを仕掛けてくる場合でも、「次の勝負スポット」を、明確に脳裏にイメージしてしまうのですよ。
だから、一発のスルーパスなどで決定的スペースを攻略するなんて、まさに至難のワザなんですよ。でも、(守備にとって)ボールと相手を「同時に見る」ことが難しい、サイドからの仕掛けは別だよね。それは、世界中のどんなディフェンスにとっても対処が難しいモノなのです。
後半のレイソルは、(彼らの攻撃スタンダードでもある!?)サイド攻撃を、何度も炸裂させていた。
まあ、その背景には、(特に後半)サントスのサイドバックの攻め上がりが積極的になり、それに対応すべきハーフのカバーリングも遅れがちになったことで(!?)、彼らのサイドゾーンがちょっと空き気味になったこともあったんだろうけれど、私は、それだけじゃなく、レイソル攻撃の「スタンダード」イメージが、より効果的に連動しはじめた結果だと「も」思っているわけです。
何度、レアンドロ・ドミンゲスや酒井宏樹が右サイドを駆け上がり、目の覚めるようなグラウンダークロスを送り込んだことか(サントスのゴール前スペースを横切るトラバース・クロス!)。
その都度、スタジアムが大歓声に包まれ、誰もが息を呑んだに違いない。そこじゃ、「あの」サントスの強者ディフェンダーが、そのグラウンダークロスを(諦めて)見送るなんていう信じられない場面もあった(でも結局は、逆サイドから入ってきたフリーのレイソル選手がシュートミス!)。
ちょっとハナシが前後するけれど、試合を通じたサントスの攻撃についてもコメントしておかなければなりませんよね。
とにかく、前半の彼らは、前述したように、まったくといっていいほど組織的なサッカーが展開できなかった。出てくるのは「足許パス」と「ゴリ押しのドリブル勝負」ばかり。そんなだから、レイソルの組織ディフェンスに潰され、効果的にボールを奪いかえされてしまうのも道理・・だった。でも・・
そう、後半の立ち上がり。彼らが、南米の雄サントスと呼べるようなパフォーマンスアップを魅せはじめるのです。多分、サントスの監督さんからカツを入れられたんだよ。前半のサントス指揮官は、自分のチームの体たらくに、とてもアタマに来ているようだったからネ(何度もベンチを飛び出し、大仰なジェスチャーでゲキを飛ばしていた!)。
後半の立ち上がりのサントスは、より多くの人数を掛け、コンビネーション「も」繰り出しながら攻め上がっていった。要は、全体的な(汗かきの)運動量が大幅にアップしたということです。そこから、大きなサイドチェンジでレイソル守備ブロックを振り回しながら、「これぞサントスッ!!」ってな素晴らしい組織コンビネーションから、何度もレイソルの決定的スペースを攻略した。
逆サイドまでボールを回し、そこでフリーになっていた選手が決定的シュートを放ったり、コンビネーションを繰り返すことで柏守備ブロックを押し込み、その状況で、バイタルエリアへバックパスを回して(後方からサポートに上がっていた味方が!)フリーシュートをブチかましたり。
その時間帯のサントスは、まさに南米の雄と呼ぶにふさわしいサッカーを展開した。そんな彼らを見ていて、これはかなわない・・という感覚に包まれたものです。でも結局は・・
そんなサントスのサッカーに触発されたレイソルもまた、自分たちのサッカーを(スタンダードを)格段に活性化させていったのです。それが前述した活発で効果的なサイドからの仕掛けにつながったというわけです。
前半は、前述したように、サントスの攻撃は「体たらく」レベルだった・・でも守備は安定していたから、ゲームを支配して(バランスを取りながら!?)攻め上がるレイソルも、簡単にはチャンスを作り出せなかった・・それに対して後半は、サントスが、より人数を掛けて攻め上がり、何度もチャンスを作り出したことで、逆にレイソルのサッカーも活性化し、結果としてゲームが、とてもエキサイティングに成長していった・・ってな総括ですかネ。
最後に、サントスが叩き込んだ三つのスーパーゴールについて。
「あの三つのゴールですが・・最初の二つが流れのなかから、3点目はフリーキックから・・でも、その3ゴールとも、柏ゴールの隅に決まった・・ネイマールは左上隅、ボルジェスは右上隅、そして3点目を決めたダニーロは、右下隅・・あり得ないようなゴールにも感じられたのですが、それって、ブラジルじゃ普通なんですか?」
ちょっと「緩(ゆる)い」調子で、そんなことを、サントスのラマーニョ監督に聴いた。
ちょっと微笑んだ彼は、「あれは、決して、驚くほど不思議なゴールじゃないよ・・ネイマールやボルジェスにしても、ウチの選手にとっては、あんなゴールは普通なんだよ・・日常のトレーニングでもよく練習しているしね・・」だってさ。
たしかにあの三つのゴールは、日本サッカーにとっちゃ「規格外」だった。とにかくビックリした。特にネイマールの先制ゴール。
彼は立ち上がりから「オレ様のチカラを見せつけてやる!」ってな勢いで、あまりにも個人プレーに奔りすぎていた。だから簡単に(協力プレスで)潰されボールを奪われつづけていた。そんな彼が、タイミングと体勢よくパスを受け、スライディングを仕掛けてきた大谷秀和を軽くかわし、そして左足を一閃したんですよ。
蹴られたボールは、柏ゴールの左上隅のサイドネットに突き刺さった。ちょっと開いた口がふさがらなかった。そして、その5分後には、ボルジェスが、これまた巧みなボールコントロールから素早く右足を一閃。蹴られたボールは、柏ゴールの右上隅のサイドネットにピタリとはまり込んだ。
後半のフリーキックも同じく隅へ。この三本とも、それまで好セーブを連発していたレイソルGK菅野孝憲が、動けずに見送ってしまったり、横っ飛びに弾こうとしても全く届かないというパーフェクトなシュートだった。
でもサ・・ねえ、ラマーニョさん・・三本とも、ゴール隅のサイドネットを突き刺すシュートを決めちゃうなんて、やっぱり普通じゃないでしょ!?
ユーモアで、正直に言ってオレも驚いた・・って、ウインクでもして欲しかったんですが・・。それとも、サントスの出来が良くなかったから、この日の記者会見での彼はご機嫌はナナメだった(ウイットの余裕がなかった!?)ってことなんでしょうか!? あははっ・・
ということで、明日はバルセロナの登場です。いまから楽しみ。
でも、まあ、相手が相手だからネ。それでも、アル・サッドの強化守備ブロックを、バランスの取れた組織プレーと個人プレーで崩していくバルサを観るのは、この上ない喜びでもあるからネ。とにかく、お互い、とことん楽しみましょう。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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