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2011_天皇杯_さて、「京都サンガ」という魅力コンテンツが浮上してきたぜ・・(2011年12月29日、木曜日)

どうも皆さん・・ホントに、ご無沙汰してしまいました。

 実は、クラブワールドカップ(三位決定戦と決勝)の三日後に行われた天皇杯4回戦、グランパス対レイソルのレポートは、期待を込めて途中まで書き進んでいたのですよ。でも結果が・・。そして「そこ」から思考が停止してしまうという体たらく。フ〜〜・・

 もちろん、所用が重なったことで(準々決勝も含めた)コラム執筆のタイミングを逸したこともあったわけだけれど・・。でも・・まあ、正直に言えば、レイソルがトーナメントから姿を消してしまったことで、観戦&分析ストーリーの(学習プロセス・スクリプティングの!?)モティベーションがダウンしたことが大きかったと思うわけなのです。

 「J2」から昇格してすぐに「J1」までも制してしまうという日本サッカー史に燦然と輝く金字塔を打ち立て、そのポジティブな流れに乗って出場したクラブワールドカップでも(ホストカントリー枠での出場・・)抜群の存在感を発揮したレイソル。

 クラブワールドカップでレイソルが展開したサッカー(ネルシーニョ・スタンダード!?)は、日本のアイデンティティー(誇り)とまで表現できる高みへ上り詰めた・・と思う。わたしは、そんなブレイクスルーの流れに乗ったレイソルが、天皇杯も制するに違いないと思っていたのでした。

 そう、それは、今シーズンを締めくくるエキサイティングなストーリーになるハズだった。でも結局は、その流れが瓦解してしまった・・。

 これまでには、ヨーロッパも含めて何度も、めくるめく感動と奈落の落胆ドラマを体感してきたけれど、今回の落胆ストーリーは、そのなかでも、ちょっと大きめだったですかね。

 その、グランパス対レイソルの4回戦だけれど、前半は、レイソルの「スタンダード」が強烈な機能性を魅せつづけた(そのスタンダードについては、このコラムをご参照アレ)。そして完璧にゲームを支配し、10本近くのシュートをブチかましただけじゃなく、レアンドロ・ドミンゲスが先制ゴールも奪った。それに対して前半のグランパスはシュートゼロだぜ!

 また後半も、ゲームの流れに大きな変化なく、その21分には工藤壮人が追加ゴールもブチ込んじゃうんですよ。チャンスを確実にモノにしていくレイソル。これもまた、積み重ねた自信と確信の為せるワザってな具合。

 ということでレイソルが、内容と結果が完璧にシンクロする「0-2」のリードを奪ったというわけです。

 この時点で誰もがレイソルの勝利を確信したでしょ。それだけじゃなく、クラブワールドカップを通したブレイクスルー成果の一環として、元旦の「戴冠」までもイメージしたかもしれない。そう・・私も例外じゃなかった。 だから私が、一年を締めくくるストーリーを書きはじめたのも自然な流れだったと思うのですよ。でもサ・・

 まあ、その後のゲーム展開については、思い出したくもありません。たしかに、永井謙佑の大活躍は見所満載ではあったけれど・・ネ。フ〜〜・・

 とにかく、そんなモティベーションダウンに苛(さいな)まれただけじゃなく、所用も重なったことでコラムアップが滞ってしまったという体たらくだったのです。でも、その代わりといっては失礼ですが、今回の天皇杯を盛り上げる魅力的なトーナメント・コンテンツが浮上してきたのですよ。

 そう・・新たな(魅力的)ストーリー。それは、昨年の南アワールドカップで岡田武史の右腕を務めた大木武が率いる京都サンガ。そこでは、私のドイツ留学時代の戦友、祖母井秀隆もGMとして頑張っている。

 今日の準決勝(対マリノス)でも、本当に、最後の最後まで、彼らの「足が止まる」ことはなかった。積極的にブチかます、攻守にわたるレベルを超えたハードワーク。最近の、リーグ戦も含めた10試合以上のゲームで負けがないというのも頷ける。

 そんな抜群のコレクティブ・サッカーを観ながら、不確実な要素が満載されたサッカーは、本質的に意志のボールゲームだという根源的なコンセプトを反芻していた

 まあ・・ネ・・大木武さんは、このサンガのサッカーについて、自分なりの「コンセプト・ワード(表現手段)」を持っているんだろうけれど、取り敢えず私は、あくまでも基本に忠実な(サッカーの基本プレーを徹底できれば、それだけで美しく強いサッカーを体現できる!!)コレクティブ・サッカーってな具合に表現しちゃおう。あははっ・・

 ・・忠実なチェイス&チェック(守備手の汗かき)・・とにかく、ボールを失ってからの素早い切り替えと「次のチェイスの勢い」が尋常じゃない・・そしてボールを奪いかえしてから(素早い切り替えをベースに!)ブチかますショートカウンターの流れに乗っていく「人」の量と質も尋常じゃない・・

 ・・私は、彼らの守備での基本的なポジショニング(&人数)バランスの約束事なんて知らない・・またショートカウンター状況での3人目、4人目のフリーランニングの約束事なんて知らない・・

 でもサ、彼らの場合、とにかく、何度失敗しても、またマリノスに個のチカラの差を体感させられても、まったく「めげる」ことなく、とにかく粘り強く、攻守にわたって、自分たちのサッカーイメージをグラウンド上に投影しようと『全力を』傾注するのですよ。

 たしかに、個の才能じゃ、マリノスには中村俊輔がいる、渡辺千真や小野裕二もいる。またチームの総合力でも、マリノスに一日の長がある。

 それでもサンガは、そんなグラウンド上の現実とは関係なく、あくまでも忠実に、そして責任感と勇気をもって、シンプルにリスクへチャレンジしていくのです。個の勝負でも、組織コンビネーションでも。とても素晴らしいし、心から共感していました。

 さて、天皇杯の決勝。対戦カードは、ともに「今シーズンJ2」のFC東京と京都サンガの激突ということになった。

 それは、天皇杯の歴史はじまって以来の出来事だそうな。それほど、日本サッカーの全体レベルが、高みで安定してきている(選手のレベルが僅差になってきている)ということなんだろうね。

 リーグではFC東京が2連勝しているけれど、決勝の展開は、誰にも予測は難しいでしょ。

 たしかに、今シーズンの「J2」を制して「J1」へ昇格したFC東京は実力チームだけれど、サンガも、リーグや天皇杯の勝負マッチを通して、また日々の(明確なコンセプト=チーム戦術=を作り上げ、徹底し、機能させ、そして継続させるための!)効果的なトレーニングを通して、本物のブレイクスルーを達成しようとしている。それほど、選手たちの自信と確信レベルが高揚しつづけていると思うのですよ。

 ということで天皇杯の決勝は、エキサイティングな勝負マッチになること請け合い。それを見逃す手はない。

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 ところで元旦の決勝。例によって、ラジオ文化放送で解説します。また前日の大晦日の夜中には、テレビ埼玉(テレ玉)が放送する「レッズ大討論会」にも参加します。なんか・・やっぱり年末・年始はサッカー三昧がいいネ。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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