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2011_J2_第13節・・またまた長〜いコラムになってしまった・・(FCTvsB, 1-1)・・(2011年5月22日、日曜日)

「我々は、どんな相手に対してでも、攻守にわたって常にリスクへチャレンジしていくような攻撃的サッカーを志向します・・そのことは、このような強い相手(FC東京)であっても例外ではありません・・だから我々のサッカーでは、ビッグチャンスとビッグピンチが、いつも背中合わせなのですよ・・でも我々は、それを良しとしてチャレンジをつづけるわけです・・」

 ベルマーレ湘南、反町康治監督が、私の質問に応えて、そのようなニュアンスの内容をコメントしていた。良いね・・

 たしかに、個のチカラの単純加算という意味での「チーム総計力」では、明らかにFC東京に一日以上の長がある。「この試合の基本的な構図は、まさしく、J1チーム対J2チームだったと思うが・・」というわたしの質問に対し、両監督ともに、基本的にはアグリーだったね。もちろん、そんな質問の導入部から発展して具体的に投げかけたテーマは、まったく違うモノだったけれどネ。

 反町さんには・・そんな「チーム総計力で劣る」ベルマーレであっても、決して「過度」に守備を重視するようなサッカー(相手の良さを消す戦術サッカー!?)をやっていたわけではないと思う・・だからこそFC東京も、より効果的な(ベルマーレ守備ブロックがピンチに陥るような)攻めをブチかますことができたと思うのだが・・といった内容の質問をぶつけた。

 またFC東京の大熊清監督には・・相手(ベルマーレ)が守りにばかり傾注するのではなく、積極的に攻めにも注力してきたことで、(実力に見合った展開として!)しっかりと攻め込んでチャンスを作り出せていたと思う・・でも結局は一点止まり・・今シーズンが始まって、まだ一点以上奪ったゲームはないように記憶しているが(大熊さんが頷いている・・)、チャンスの割にはゴールの数が少ないように思うが・・といった具体的な質問をぶつけた。

 反町さんは、冒頭のコメント以外にも、「次の攻撃(ショートカウンターなど)をイメージしてボールを奪いかえしにいくわけだから、それがうまく機能しなかったら、逆に相手に(一発スルーパスを通されてしまうといった)ショートカウンターのチャンスを与えてしまう・・厳しい方向性だけれど、それでも我々は、常に積極的なボール奪取を志していく・・」といった発言もしていたっけ。

 たしかにベルマーレは、素晴らしく積極的な組織ディフェンス(ボール奪取プレー)を魅せつづけたよ。素早く効果的な攻守の切り替え・・間髪を入れないチェイス&チェック(相手ボールホルダーを全力で追いかける守備参加)・・そして「次」を狙う、周りのチームメイトたちの忠実なボール奪取勝負・・。

 もちろん、アジエルや坂本、また両ボランチもそうだけれど、 前節からスターティングメンバーに名を連ねるようになった最前線の「高山薫」が魅せつづけた、攻守にわたる「全力の汗かきプレー」は、ホントに感動モノだったね。

 彼は、全力スプリントの何たるかを、よく心得ていると思う。そう・・それは、彼のアタマのなかに、具体的なターゲットイメージ(成し遂げたいプレー!)が描かれているということ。だからこそ、具体的な「意志」をもって全力でチャレンジしていける。積極的に「仕事」を探し、それを全力で成し遂げようとする意志のプレー。とても、素晴らしい。

 サッカーは意志のボールゲーム。もちろん課題も山積みだけれど、高山薫には、少なくとも「強い意志をベースにした更なる発展」に対する期待が持てる。

 ところで、ちょっと視点は変わるけれど、高山薫のプレーを観ていて、こんなコトも考えていた。

 彼がボールを持ったときの軽やかで(たまには)華麗なプレー振りから、たぶん彼も、ユースや学生時代は「天才的なプレイヤー」の一人に数えられていたに違いない・・そんな選手の多くは、才能に恵まれている故に陥ってしまう「ワナ」にはまり、そこから容易に抜け出してこられない。そう、攻守にわたる組織(汗かき)ハードワーク姿勢の欠如・・そして自分勝手なプレーでチームにも貢献できずに消え去っていく・・。でも高山薫には、そんな「弱さ」が感じられないのですよ。

 もちろんそれは、反町康治監督とコーチングスタッフの成果なんだよね。良いプレーヤー、そして良いサッカーは、彼らの作品でもあるわけです。フムフム・・

 また、永木亮太とハン・グギョンによって構成される守備的ハーフコンビ。もちろんアジエルや坂本紘司も素晴らしかったけれど、いまのベルマーレを支える中核は、やっぱり彼らだと思う。

 彼らについて聞いた私の質問に対し、反町さんも、「もちろん全員の守備意識の高さと実行力が絶対的なベースではあるのですが、確かに、おっしゃるとおり、今のチームの生命線は、永木とグギョンの二人かもしれませんね・・彼らは、守備だけではなく、しっかりと攻撃もサポートすることで、我々の組織プレーの機能性をスケールアップしてくれますから・・」と、アグリーしていたっけ。

 まあ、反町さんとしては、全員サッカーだから、特定の選手を祭り上げるようなことはしたくないんだろうね。それでも、「攻守にわたる忠実な汗かきハードワークのマインドに支えられた組織プレーのスター」だったら、問題ないでしょ。

 長くなってしまうけれど、FC東京についても、少しだけ。

 チャンスをゴールに結びつけられない・・というテーマについて、大熊清監督に、こんな視点の質問をしてみた。

 「いま、ボールが収まる選手という表現があった・・そこで質問ですが、いまのFC東京では、ボールが収まるタイプの選手と、使われるタイプの選手の割合がアンバランスかもしれない・・要は、シンプルプレーや、ウラへの抜け出しを強くイメージし、イヤな仕事にも率先して取り組むようなタイプの選手と、ボールを収めるタイプの選手の割合がアンバランスだという印象があるのですよ・・それが、チャンスは作り出すけれど、ゴールを生み出すことが出来ないことの背景にあるのではないか・・と??」

 「そうですね・・たしかに、そのような視点もアリかもしれません・・まあ、ケガ人が多いことも、その背景にあります・・例えば、石川直宏とか・・とはいっても、大竹洋平や鈴木達也、ロベルト・セザーも徐々に調子を上げています・・また、ケガ人の今後に関する情報から、チーム編成の方向性も、より明確になりつつあります・・まあ、これからです(これからのオレ達を見てろヨッ!!!)・・」

 たしかに結果は、フツ〜の(J2マッチの!?)引き分けのように見えるけれど、実際の内容には、ものすごく興味深いコンテンツが山盛りだった。ア〜〜・・ホントに面白かった。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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