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2011_日本フル代表(WM3次予選)・・この貴重な体感をポジティブに次へつなげよう・・(北朝鮮vs日本、1:0)・・(2011年11月15日、火曜日)

まあ・・仕方ない。

 この試合は、ザッケローニ監督にとって、日本代表監督に就任してから初めての負け戦ということになったわけだけれど、やっぱり負けるのは気持ちの良いモノじゃないネ・・

 遠藤保仁や香川真司といった主戦力を(最後まで使わずに!)休ませたことや、ゲーム佳境の時間帯にスリーバックへ変更したこと、また最後の時間帯には(高さを前面に押し出した)パワープレーをブチかます等といったことも含め、この敗戦には、それなりに深く、有意義な学習機会(次につながる体感を脳内イメージタンクに蓄積する機会!?)が内包されていたと思います。

 たしかにスタジアムは、統制社会独特の(溜まりつづけたフラストレーションをリリースする大観衆によって演出された!?)厳しいアウェーの雰囲気に包み込まれていたけれど、中立レフェリーのジャッジや、その他のサッカー的要素も含め、以前とは比べものにならないくらい「フェアな環境」でのゲームだったことも確かな事実だからネ・・、北朝鮮チームの尋常ではないガンバリと、それに見合った正当な勝利に対し、素直に拍手を送りましょう。

 それにしても、北朝鮮が最後の瞬間までブチかましつづけた、攻守にわたるダイナミズム(迫力や力強さ)は、スゴイの一言だったね。

 攻守にわたり、とにかく全ての局面シーンで「必ず勝負にくる」北朝鮮。彼らが繰り出しつづけた、ボールがないところでの動き(全力スプリント)の量(≒闘う意志)は、ハンパじゃなかった。

 守備。彼らは、どんな厳しい状況でも、常に全力でボールを奪いにくる。何度抜かれても、マークを外されても、決して諦めることなく、全力で追いかけ、次、その次と、強烈なパワーを秘めた粘り強いディフェンスを仕掛けつづける。

 彼らが展開した忠実なチェイス&チェックと、その周りで展開されるボールがないところでの効果的なボール奪取(次を狙う)アクションは、まさに「有機的に連動しつづけるハイレベルな組織ディフェンス」そのものだった。

 そんな「強烈な闘う意志」は、もちろん次の攻撃にも確実に反映されていく。そう、ボールがないところでの全力アクションの量。「質」は別にして、スペースへの飛び出しとか、クロスボールへの突っ込みとか、その忠実な全力スプリントの応酬には、拍手せざるを得なかった。

 とはいってもサ、そんな、北朝鮮がブチかましてくる、「あり得ないくらい」に強烈なダイナミズム(前へ、前へと突っ掛けてくる勢い=強烈な闘う意志)を、日本代表が、うまく「いなせなかった」ことには不満が残ったですね。

 北朝鮮は、最初から(最後まで)強烈に前へ仕掛けつづけていたわけだからね、逆から見れば、それは、とても単調なリズムのサッカーだったとも言える。

 だからこそ、北朝鮮のプレーリズムにちょっと慣れてくれば(要は、局面勝負シーンでは絶対に突っ込んでくるというイメージを大前提にすれば・・)、もっと楽に、そして効果的に彼らの仕掛けアクションを「いなせた」かもしれない・・なんてことも思ったりするわけです。

 柔道でいえば、相手のチカラを逆利用して投げ飛ばしてしまう「空気投げ」!? フムフム・・

 もちろん、日本がゲームを支配した時間帯には、例によってのスマートな「スペース攻略」組織コンビネーションが効果的に回りはじめそうな雰囲気もあった。

 ただ北朝鮮も、(ビデオを駆使した守備のイメージトレーニングを積み重ねることで!?)そんな日本の組織コンビネーションを抑制できるだけの、効果的な「有機連鎖ディフェンス」を展開していたわけだから・・ね。

 要は、ボールがないところで日本が繰り出そうとするフリーランニング(スペースを攻略するパスレシーブの動き)のほとんどが効果的に抑え込まれてしまった・・ということです。

 またそれ以外に、「人工芝」というネガティブ要素もあったと思う。

 あの平壌スタジアムの人工芝は、古いタイプ!? だから、表面が硬く(ボールのバウンドが不自然で)、ボールコントロールも柔軟性に欠けてしまう。

 たしかにイレギュラーは少ないけれど、日本の選手たちは、ボールコントロールのときに、微妙な「引っ掛かる感覚」に苛(さいな)まれていたハズですよ。わたしも経験があるけれど、その「引っ掛かる感覚」に慣れるためには、ちょっと時間が必要なのです。

 この試合でも、ほんのちょっとしたボールの「動き」だけれど、微妙に「転がりが引っ掛かる現象」が見て取れた。聞くところによると、かなり自然芝に近い「粘り」があり、変な「転がりの引っかかり」が少ない新型の人工芝も出てきているらしいけれど・・さて・・。

 ということで日本代表は、もう少し、このタイプの人工芝に慣れる時間が必要だったのかもしれないと思っている筆者なのです。もちろん相手は北朝鮮だから、そう簡単には理想的な「事前準備」のためのトレーニング環境を整備してくれるとは思えないけれど・・

 とにかく日本代表は、この敗戦によって得られた(様々な要素の複合体としての!)貴重な感覚を、着実に、そしてポジティブに「次」につなげていかなければなりません。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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