トピックス


2011_ヨーロッパの日本人_ちょっと心配な宮市亮、また岡崎慎司と長谷部誠も・・(2011年3月21日、月曜日)

さて、ローダ戦での宮市亮。

 授かった天賦の才を、実際に、ヨーロッパの強者どもが鎬(しのぎ)を削るグラウンド上で光り輝かせてしまうんだから、やっぱり天才的なモノを持っているよね。でもサ・・前節のゲームもそうだったけれど、やっぱり、個の局面勝負ばかりっちゅう印象をぬぐえないし、とにかくボールタッチの(パスレシーブの)回数が少な過ぎる・・

 まあ・・ね・・フェイエノールトは、「タテ割りに」基本ポジションを維持する(選手相互のポジショニングのバランスをキープする!)っちゅう発想のチーム戦術を前面に押し出しているわけだから、宮市亮が、どちらかのサイドに「張り付いてしまう」のも仕方ないか・・。

 でも、あまりにも「張り付きすぎ」でプレーしていたら、彼の才能を多面的に発展させるという視点じゃ、ネガティブな結果しか生み出さないんじゃないの!? まあ、宮市亮にとっては、ドリブルやタメ、そして(個の勝負ベースの!)ラストパスといった「個の勝負プレー能力」を伸ばす(個の勝負に対する自信を深める!)機会は十分なんだろうけれど・・。それに監督からも、「サイドゾーンでパスを受け、タテへ仕掛けていけっ!」っていう指示を受けているらしいしサ。

 それにしても、素晴らしく「変化」に富んだ組織サッカーを展開するオランダ代表チームって、一体何なんだろうね。わたしは「あれ」をオランダサッカーだと思っているんだけれど・・。

 それに、1974年西ドイツワールドカップにおいて、エポックメイキングな「トータル・フットボール」で世界サッカーの潮流を変えたオランダ代表チームのイメージもあるしサ。そのチームを作り上げたオランダの伝説的スーパーコーチ、故リヌス・ミヘルスさんは、「全員が、攻守にわたるハードワークを、クレバーに、そして限界まで突き詰めるのがテーマだった・・」と、私に言っていたっけ。

 ということで、そんな「オランダ」のイメージからしたら、どうもフェイエノールトのサッカーは「型にはまり過ぎている」と感じるわけです。

 そうね〜、それって、各選手のポジショニングが前後左右に分断することで、試合経過とともに、チーム全体のモビリティー(動き)が減退していってしまう浦和レッズの(ゼリコ・ペトロヴィッチの)サッカーに似ている!? フムフム・・

 皆さんもご存じの通り、わたしは、そんなチーム戦術的な発想にはアグリー(賛同)しません。理想は、GKを除いた全てのフィールドプレイヤーが、基本ポジションなしのサッカーを展開することだからね。リスクチャレンジこそが、発展を推進していく「唯一」のリソースなんですよ。

 これからのサッカーでは、どんなに才能に恵まれていたとしても、攻守にわたって、いかに効果的なハードワークをつづけられるかというテーマに、より強くスポットライトが当てられる(もちろんディエゴ・マラドーナやメッシ、クリスティアーノ・ロナウドといった、スーパー天才は別だけれど・・)。

 その視点で、宮市亮の素晴らしい才能が、「厳しく要求されないことによって」、どんどんと矮小に縮こまっていってしまう!? さて〜〜・・

 実際、センセーショナルだったデビュー戦や初ゴール以降、その天賦の才が騒がれれば騒がれるほど、彼のゲームでのパフォーマンスがシュリンク(縮小)していっていると感じます。

 実際、相手も、(最初の頃のように・・宮市亮のことを知らずに!?)安易にボール奪取アタックを仕掛けることで簡単に「かわされて」しまうのではなく、より粘り強く、しつこくチェイス&チェックをつづけるようになっているから、局面でのドリブル勝負でも、そんなに簡単に突破シーンを演出できるわけじゃなくなってきているしね。

 ヨーロッパの強者連中は、常にビデオなどを駆使し、相手のプレーの特長やリズムを、しっかりとイメージトレーニングするのですよ。だから、宮市亮の「マタギ・フェイント」にしても、そう簡単に相手を惑わせることが出来なくなっている!? フムフム・・

 とにかく、ちょっと先行きが心配な宮市亮なのでありました。

=============

 さて、VfBシュツットガルト対VfLヴォルフスブルク戦で対峙した岡崎慎司と長谷部誠。

 この二人は、ホントに何度もぶつかり合った。そのなかで、長谷部誠が岡崎慎司を背後から押し倒してしまうという完全なPKシーンもあったけれど、(長谷部にとっては)ラッキーなことに、主審が、そのファールを流してしまった。

 その直後、別なゾーンへ振られたテレビカメラが再び両人を捉えたとき、近くにいる二人が言葉を交わしていた雰囲気が伝わってきた。長谷部誠が、「スマン・・いまのはファールだった・・」って、岡崎慎司に謝っていた!? あははっ・・

 とにかく、すごい意志のぶつかり合いになったこの試合。 「降格リーグ」で鎬(しのぎ)を削る両チームの対戦だから、そりゃ白熱するはずだ。特に、アウェーを戦うヴォルフスブルクがブチかました、チェイス&チェックや協力プレスへの集散(守備でのハードワーク)のダイナミズムに投影される闘う意志は素晴らしかった。

 その心理バックボーンが、ヴォルフスブルクに復帰した「鬼軍曹」フェリックス・マガートにあることは言うまでもないよね。

 あっと・・もちろんホームのシュツットガルトも、サバイバル戦へ向けた気迫あふれる闘いを魅せつづけた。だから、レベルを超えた意志のぶつかり合い(大迫力で展開されるボール奪取バトル!)のなかで瞬間的に生まれてくるワンチャンスを、猛禽類の眼で狙いつづける・・っちゅう極限テンションの勝負マッチになったわけです。

 さて、そんなハードマッチのなかで、前半だけで交代ということになった長谷部誠。

 この試合では、中盤の底(センターハーフ)の絶対的リーダーである、ブラジル代表のジョズエが復帰したわけだけれど、そのことで長谷部誠のプレーイメージも、ちょっと変容せざるを(以前のプレーイメージに戻さざるを!?)得なくなった。柔軟に調整できればよかったけれど、どうも・・

 ポーラックと組んだ守備的ハーフコンビでは、攻守にわたって、守備でのハードワーカー&リンクマン&ゲームメイカーとして、とても効果的に機能していたけれど、ジョズエの復帰によって、守備的ハーフのアンカーと後方からのゲームメイカーという役割がジョズエに「集中」したのですよ。

 ということで、この試合での長谷部誠は、主に左サイドで、ちょっと高めに位置する守備的ハーフ・・ってなイメージになった。

 もちろん長谷部のことだから、うまく調整できるハズだったけれど、守備では、どうしてもジョズエが中心に機能するボール奪取プロセスに効果的に乗っていけない。また攻撃においても、下がってボールを受け、そのまま個のチカラでボールを持ち上がってくというタイプのジエゴがいることで、どうもうまくボールに絡んでいけない。

 ジエゴは、新任のフェリックス・マガートに対するアピールという意味合いも含めて、とても気合いが入っていたはず。だから「個の勝負プレー」が多くなった!? まあ・・そういう側面も、なきにしもあらず・・だったですかね。

 ということで、組織的なプレー(コンビネーション)イメージを前面に押し出そうとする長谷部誠のアクションが、ジエゴを中心に「動く」攻撃の流れと、うまく噛み合っていなかったということなのかもしれないね。

 たしかに長谷部誠の全体的なパフォーマンスは安定していたけれど、出戻りのフェリックス・マガートが、この試合はベンチスタートだった(今年1月に、ベルギーのアンデルレヒトから獲得したチェコ代表)ヤン・ポーラックのチカラを確認したかったという要素があったかもね。もちろん、一点のリードを守り切る・・という要素も含めてね。

 さて次は岡崎慎司。良かったですよ〜、ホントに。前戦のハードワーカーとして、攻守にわたって『仕事を探しつづけるプレー姿勢』にはアタマが下がった。

 「オカザキのハードワークぶりは、日本的な(誠実な)マインドを象徴しているんだろうな・・」

 電話で話したドイツの友人が、そんなことを言っていたっけ。そのプレー姿勢からは、「いまオレに出来ることを、全力でやるだけ・・」という、プロとしてだけではなく、人間としても尊敬に値する前向きな意志が見えてくる。

 「こんな日本の状況」だからこそ、岡崎慎司の、全力プレー(何かをアピールする強烈な意志の爆発!)にアタマが下がり、感謝の念が湧いてくる。アンタもまた、日本のアイデンティティー(誇りのリソース)だ。

 岡崎慎司の特長は、何といっても、絶対にビビったりしない勇気(まあ・・強烈な意志)だね。とにかく彼は、どんな状況でも、積極的に仕掛けていこう(リスクを恐れずにチャレンジしていこう)とする。ドリブルでも、勝負コンビネーションのスターターとしても、ボールがないところでの決定的フレーランニングでも・・。だからこそ、相手に恐怖感を与えられるし、その結果として、チームにも大いに貢献できる。フムフム・・

 この試合でも、至るところに岡崎慎司がいた。最前線だけではなく、自チームゴール前のディフェンスシーンでも、組み立てプロセスでの、中盤の低いポジションでも(最前線から戻ってパスを受けてシンプルに展開し、自身は再び全力で最前線へ抜け出していく!!)・・などなど。

 もちろん、天才じゃない。でも、その「目的を達成しようする意志」と「実効ある行動力」は、チームに多大なポジティブ・インパクトを与えている・・と感じる。そう・・「アソコのスペースには、必ずシンジが飛び込んでくる・・」という確信。そんな「確信のイメージシンクロ」が大事なんだよ。

 とにかく、意志のプレイヤー、岡崎慎司の今後にも、大いに期待が高まるじゃありませんか。

PS: 東北地方太平洋沖地震によって被災された方々に対し、心からお見舞い申し上げます。とにかく、自分の日常を、一生懸命に生きようと心に誓った筆者です。この件については「このコラム」も参照して下さい。

------------------

 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]