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2011_ナビスコ準々決勝・・レッズは、久しぶりに良いゲームを魅せた・・また、セルヒオへのメッセージも・・(CvsR, 1-2)・・(2011年10月5日、水曜日)

たしかにレッズは、全体的なサッカー内容は良かったし、それに相応しいフェアな結果も勝ち取った(スミマセン・・レッズを中心にレポートします・・)。

 とはいっても私は、まだまだ、『より効果的に』個の勝負をブチかましていくための準備段階としても重要な意味を内包する組織プレー(人とボールの動きが噛み合う効果的なコンビネーションをベースにしたスペース攻略)に課題があると感じていました。

 効果的な組織プレーの絶対的ベースは、選手それぞれの仕掛けイメージが、しっかりとシンクロすること。その視点で、まだまだだと感じるのですよ。

 いつも書いているとおり、あれだけの個の才能に恵まれているのだからね、スペースを突いていくことに対する「強い意志」をもって人とボールを動かせば、おのずと、「ココゾッ!」の個の(ドリブル)勝負を効果的に繰り出していける有利な状況にも恵まれる(意図的に作り出せる)はずなのです。

 デスポトビッチと山田直輝、梅崎司、後方から3人目として上がってくる柏木陽介(それに両サイドバック)は、シンプルパス&全力ムーブという組織プレーの基本中の基本である汗かきプレーも含め、効果的なコンビネーションを積み重ねようという意志は魅せていた。でも・・

 そう、セルヒオ・・。たしかに立ち上がりは、良かった。ホントに見違えたと思ったんだけれど・・。

 その立ち上がりのセルヒオ。シンプルなフリーランニング(ボールがないところでの動き)だけじゃなく、シンプルプレー&全力ムーブという高質な組織プレーを忠実に繰り返していた。だからこそ、「ココゾッ!」のタイミングで繰り出す勝負ドリブルも、とても高い実効レベルを魅せていた。

 でも、そんな強烈な(そして創造的な)意志をブチかましていたゲーム立ち上がりのセルヒオのプレー姿勢が、レッズが全体的なゲームの流れを牛耳っていることもあって(!?)、その緊張感が徐々に減退していったと感じた。「オレ達の流れだから、ここは見せ場を作っちゃえっ!」ってなイージーなマインドが見え隠れしはじめたということか!? フ〜〜・・

 そして、ボールがないところでの動きの量と質がどんどんダウンしていくという悪い傾向が強まっていくなかで、例によってのボール絡みのゴリ押し勝負ドリブルばかりが目に余るようになっていくのですよ。フ〜〜・・

 それでもレッズは、そんな部分的な支障(まあ・・チームの足を引っ張るパフォーマンスダウン)にもかかわらず、全体的なゲームの流れを牛耳りながら作り出すチャンスの量と質ではセレッソを上回っていた。ただ、そのチャンスを追加ゴールに結びつけられない。

 そして、いやな流れだな〜・・なんて思いはじめた後半、勢いを盛り返したセレッソが、27分に同点ゴールを叩き込んで(いや、ファビオのテクニカルシュートだから=流し込んで)しまうのですよ。

 そこからの勝負のベクトルは、当然、ホームのセレッソへと傾いていくのが明確に見て取れたわけだけれど、この日のレッズは、ちょっと違ったね。そんなセレッソの勢いを、確実に受け止め、しっかりと押し返していったのです。

 ちょっと頼もしく感じたモノです。そしてゲームが、ギリギリの勝負のせめぎ合い・・っちゅうエキサイティングな展開へと「成長」していった。

 そんな手に汗握る雰囲気のなかで、レッズの決勝ゴールが生まれた。デスポトビッチのヘディングシュート。アシストしたのは、この日、組織プレーと個人勝負プレーが、とても高次元でバランスした効果的プレーを展開した梅崎司。

 攻守にわたって高質な組織プレー「でも」存在感を発揮した梅崎司。そんな彼が、前半21には、相手三人をブッちぎったドリブルシュートを魅せた。惜しくもポスト直撃っちゅうことになってしまったけれど、「あの」個人勝負プレーは、やっぱり「梅崎ショー」だった。梅崎司の完全復活に期待しましょう。

 それに対して、たまに相手守備をブッちぎるような爆発ドリブル勝負を魅せたセルヒオ。彼の場合、そんな素敵な突破が、結果に結びつく「割合」がホントに低級だというハナシで今日のコラムを締めることにします。

 この締め方についてですが、わたしのセルヒオに対する期待感の表れだとお考え下さい。とにかく、彼に関しては、とても忍耐力のある筆者なのです。

 ・・相手ディフェンダーをブッちぎったセルヒオ・・「アッ、決定機だ!」と誰もが期待に胸を高鳴らせる・・でも次の瞬間、その期待が奈落の落胆に変わってしまう・・持ちすぎで、追い付いてきた相手に潰されたり・・最後の瞬間にミスキックをしたり、ミスパスを出したり・・シュートを打つべきトコロをパスを出したり・・シュートタイミングが遅く(まあ持ちすぎ)最後の瞬間に押さえられてしまう・・などなど・・

 セルヒオが魅せた、このゲーム立ち上がりの攻守にわたるプレー姿勢。とてもよかった。

 セルヒオは、あのイメージの積極(汗かき)プレーを、最低でも70分間は高みで維持しましょう。そのために、とにかくまず、コンディションをギリギリまで絞り上げましょう。

 そして、相手を抜き去っても、決して「マスターベーション」に入るのではなく、そこからが勝負だと気を入れ直し、しっかりと効果的なフィニッシュまでいくことに極限の集中力を傾注しましょう。

 アナタは、天から授かったスーパーな才能に恵まれています。その才能を腐らせてしまっていいのですか? それは、日本にとっても大きな損失です。もちろんアナタ自身にとっても。そろそろ、自覚しても良い頃なのではありませんか? どうですか、セルヒオ・エスクデロさん・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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