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2011_UCL・・ものすごくハイレベルな、チーム&ゲーム戦術的せめぎ合いだった・・(レアルvsバルサ、 0-2)・・(2011年4月28日、木曜日)

・・戦術的な見方・考え方、選手のプレーイメージ形成をリードする言葉や表現方法は、人それぞれ、千差万別・・そして「それ」を、いかに選手に分かりやすく伝え、徹底させられるかというポイントに、監督のウデが表現される・・

 いきなり分かり難い文章から入ってしまって申し訳ありません。それでも今シーズンの「クラシコ」には、両監督の、とても深〜い「チーム&ゲーム戦術的な思惑のせめぎ合い」が展開されていたから、やっぱりそのポイントは避けて通れない。

 ・・モウリーニョが一敗地にまみれた(大敗を喫した)敵地でのクラシコ第一戦・・その結果を踏まえ、いまのチーム総合力の差を(選手自身が!?)明確に認識せざるを得なくなったレアルが、ゲーム戦術を徹底することで引き分けに持ち込めたクラシコ第二戦・・

 ・・そして、モウリーニョが、選手の特性を見極めながら(テストを繰り返すことで)とても上手く、基本ポジション&役割のバランスとゲームの(守備の)やり方をプランし、それを徹底することで粘り勝ったスペイン国王杯決勝・・そして・・

 「チーム&ゲーム戦術的な思惑のせめぎ合い」だけれど、それは、相手の良さを消すためのゲームプラン(ゲーム戦術)を徹底するレアルと、自分たちの「やり方」に徹底的にこだわるバルセロナの対峙・・ってな構図に収斂されていったということなんだろうね。

 そしてレアルは、以前の失敗を糧に(!?)ものすごく忠実なディフェンスを敷くわけです。

 ・・忠実なチェイス&チェック・・決して安易に当たりにいかず、ウェイティングから最後まで付いていく粘りのマーキング・・そんな「抑えプレー」をベースに、猛禽類の感覚で次のパスを狙う周りのチームメイトたち・・

 そんなレアルの守備では、とにかく「バルサの超コンビネーション」に振り回されることだけは避けなければならない・・という統一されたイメージが基盤になっている!? だから、決して安易にアタックを仕掛けたり、コンビネーションに惑われることなく(ボールウォッチャーになることなく)、チャンスを待ちつづける(忠実に人に対するマークをつづける)のです。

 そんな「局面的なマンオリエンテッド感覚」が徹底されているからこそ(!)、ボール奪取プロセスに対する確信レベルを引き上げることが出来たレアル。だからこそ、無為に「引く」のではなく、次の(ボールが動く)ポイントでボール奪取勝負を仕掛ける「選手たちの集散」も含めたディフェンスも、より高い位置で展開できるようになった!? 

 もちろん、そんな忠実ディフェンスを徹底する彼らのターゲットイメージは、クリスティアーノ・ロナウド、ディ・マリア、エジルによる必殺(ショート)カウンターです。

 そんなレアルに対し、バルセロナが唯一プランしていたゲーム戦術的イメージが、レアルのショートカウンターへの対抗戦術(イメージの徹底)だったでしょ。この試合では、ケイタとブスケツ、そしてシャビのポジション調整に、彼らがどこに気を遣っているのかが観察できた。

 もちろん、そんな「全体的な構図」だけじゃなく、この試合には、さまざまな戦術的「せめぎ合いプロセス」を経たからこその「深み」もあった。愛する神は細部に宿る・・!? まあ、そんな分析ディスカッションまで、ここで表現することにトライする気はないけれど・・。悪しからず・・

 そして、そんなガチガチの「チーム&ゲーム戦術的せめぎ合い」という展開に、追加ゴールを叩き込むことで最終的な決着をつけたのが、言わずと知れた天賦の才だった(もちろん、モウリーニョ戦術の根幹の一つだったぺぺが退場になったこともあったけれど・・)。

 やっぱり、「戦術」を超越するのは「個の才能」ってコトか〜〜!? あっと・・、そんな天賦の才自体も「戦術の一環」だしネ〜。フ〜〜・・

 まあ、このクラスの対戦だからこそ、「与えられた天賦の才(個の才能)を、いかに効果的に活かしていくのか・・」というチーム戦術的イメージを徹底させることの重要性「も」必然的に高くなっていく・・っちゅうことか。

 たしかにこの試合では、クロスやスルーパスで最後を締める・・といったコンビネーションベースではなく、そのほとんどが、クリスティアーノ・ロナウドやディ・マリア、はたまたシャビやペドロ、ビジャといった個の才能の炸裂がベースだったよな〜(ドリブルシュート・・それもミドルシュートがほとんど・・)。

 まあ・・だからこそ、アフェライのドリブル突破&ラストクロスを、ニアポストゾーンに超速スプリントで入り込んだメッシがダイレクトで決めた先制ゴールシーンが、組織プレーと個人勝負プレーが抜群のバランスを魅せた最終勝負という意味合いで光り輝いていたっちゅうことになるわけです。あっと・・前半には、メッシのドリブル&スルーパスから、最後はシャビが決定的なフリーシュートを放った・・っちゅうシーンもあったっけ・・フムフム・・

 それにしても、チーム&ゲーム戦術的なせめぎ合いの「構図」が、こんなにまでクローズアップされ、興味を喚起した勝負マッチも珍しいよね。

 それもこれも、両チームの総合力が世界最高レベルにあるからに他ならないと思う筆者なのです。

 チーム&ゲーム戦術的なせめぎ合いが「最高レベルで動的に均衡した」場合、やはり最後は「個のチカラ」がモノを言う!? この表現も、ちょっと単純すぎて違和感があるよな〜〜・・後で、もう一度、このテーマで思考を深めていくことにしようっと・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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