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2011_女子WM_11・・雑感・・細貝萌が発展を懸けて(強烈な意志で)闘うアウグスブルクの町は本当に魅力的だ・・(2011年7月4日、月曜日)

「グッドラック・フォー・トゥモウロウ・・!!」

 今日は、快晴に恵まれた。本当に、雲ひとつない。まぶし過ぎる・・。

 それに今日は、サッカー休息日・・夜には、佐々木則夫監督による公式メディア対応があるらしいけれど(トレーニングは、最初の15分を除いて非公開)それまで何をしよう・・よし、ちょっと街中に出て、アウグスブルクを体感してやろう・・

 そんなノリで、アウグスブルクの中心に設定されている歩行者天国ゾーンへ繰り出した次第。これまで私は、アウグスブルクの街中へ入ったことはありませんでした。だから・・その、まぶしいくらいに美しい町並みに、しばし時を忘れた。

 まさに歴史と伝統が深く浸透する町並み。そこに住む人々の誰もが、価値ある文化財を維持しようという高い意識を持っていることを感じた。素晴らしい・・

 アウグスブルクという町の名は、紀元前にこの町を造ったローマ皇帝アウグストゥスが由来だそうな。ルネサンス期には、当時の大富豪だったフッガー家がスポンサーになることで、華麗な文化が隆盛を迎えた。だから、ドイ ツ・ルネサンスの傑作といわれる市庁舎や大聖堂、また聖ウルリッヒ教会などが有名なのだそうです。わたしは、取り敢えずそれら全てを見て回りました。すべて徒歩でカバーできる範囲にあるのですが、たしかに素晴らしかった。感動した。

 町の「マルクト広場」では、新鮮な野菜やパンといった食材が並べられている。そのなかに、美しい花が(花屋さんが)存在感を誇示している。教会、市庁舎といった歴史的な建造物も、町の雰囲気に溶け込んでいる。

 歩行者天国ゾーンでは、市電が往来するなかを、歩行者や、オープンキャフェで楽しそうに会話する人々が、これ以上ないほどリラックスした雰囲気を放散している。時折、市電が、注意をうながすように警報を鳴らすけれど、その警報サウンドにも、歴史と伝統を感じる。フ〜〜・・

 天気が素晴らしかった(典型的なヨーロッパ型の乾燥した晴天)からだろうか・・、とにかく、どんな小さなコトにも感動していた筆者なのでした。細貝萌は、本当に素晴らしい町を選んだな〜・・なんて、ちょっと高慢な態度で感心したりして・・スミマセン・・

 そんなふうにリラックスしながら散策していた筆者だったのですが、その瞬間だけは、強烈にフリーズした。

 それは、前から来る「白シャツに包まれた女性グループ」が目に止まったときでした。彼女たちのホワイトシャツの胸には、見落とすはずもない「イングランド代表の紋章ワッペン」が縫い付けられていたのですよ。そう・・スリー・ライオンズ・・

 そして、思わず彼らに、冒頭の言葉をかけたというわけです。もちろん微笑みながらネ・・

 私がかけた言葉に、何人かが、それぞれ違った反応を示した。一人は、私が日本人であることを認識したのでしょうか、キッと睨(にら)みつけた。またもう一人の選手は、本当に柔らかな微笑みを返してくれた。男性の役員も、とても明るい声で「サンキュー・・・ユー・トゥー」と言ってくれた。いや、興味深かったね。

 そんなこんなで、最後は、キャフェで一服することにした。

 どうしようか迷ったけれど、とにかく日差しが強く暑かったから、ここはコーヒーじゃなくビールだよな・・と、「ヴァイツェン(小麦・・白)ビール」を注文することにした。03リットル。もちろん飲んだ後は、少なくとも2時間は、そのキャフェに留まって酔いを醒ますつもりだったよ・・あははっ・・

 でもサ、そんな状況で、隣に座る上品そうなご婦人(60代かな〜!?)と、とてもワイルドな感じで山男風の男性とハナシが弾んでしまったのですよ。だから、アッという間に時間が過ぎた。

 ハナシがはじまったキッカケは、そのオープンキャフェの日傘の位置。わたしも、そのご婦人も、その男性が座っていた大きなテーブルに、直射日光から避難してきたのですよ。

 「この椅子に座っていいかしら?」とご婦人。「テーブルの端を使わせてもらっていいですか?」とわたし。その声かけがほぼ同時だったから、その男性も含めて、みんなで微笑み合った。それがキッカケでハナシが弾んだという次第。

 わたしは、女子ワールドカップの取材でドイツへきていると自己紹介した。その男性は、以前はエンジニアとしてドイツ全土を移り住んで仕事をした・・特に日本企業とは何度も関わり合いになった・・とても日本人が好きだ・・などと話していた。またご婦人は、ご主人がホンダに勤めていた関係で、とても日本のことに興味があると話していた。

 でも、お二人とも、女子ワールドカップには興味がないそうで、テレビでも観ていないと言っていた。だから、こんな言い方で観戦を薦めた。

 「たしかにサッカー自体はレベルが低いですよ・・でも、発展途上だから、男子サッカーでは見え難いところまで、ハッキリと見えるのですよ・・まあ、ちょっと専門的なハナシだけれど、それ以外でも、世界大会のワールドカップという視点もあるじゃないですか・・国の威信をかけた闘いという意味でも、興味深いと思いますよ・・何といってもドイツはホストカントリーなんですからね・・そうそう、2006年のドイツワールドカップで、真夏のメルヒェン(おとぎ話)と称えられたドイツ男子サッカー代表チームの再現だって期待できるじゃないですか〜・・」

 お二人とも、フムフムと私の(ちょっとゴリ押しの!?)ハナシに耳を傾けてくれた。

 彼らと話していて、もっとも興味深かったのは、それぞれに、「異文化接点として機能する話題」を次々と供給し合ったことだったね。要は、ハナシが途切れなかったということです。

 日傘がキッカケになったけれど、会話の内容は、サッカーや言語のこと(異なる言語を学ぶことは異文化を知ることであり、人間的にも発展する・・アメリカ人は、異なる言語を勉強しなくて済むから、ちょっと不幸な面もある・・などなど)、また、わたしがケルンに留学していたことで、ドイツ国内でも、それぞれの地方でメンタリティーに違いがあるといった話題とか、その男性の方とは、ライン川地方のカーニバルの話題で盛り上がったりした(そのときご婦人が、カーニバルの話題に乗ってきたから、ちょっと驚いた・・)。

 また「日本」という話題も、とても強い異文化接点パワーを秘めていた。彼らは、日本が好きなんですよ。だから、今回の震災のこととか、(醤油や寿司といった日本が誇る)食文化、はたまた生活文化のことも含め、とても強い興味を示していました。こちらは、彼らの質問に応えるのに必死でした。あははっ・・

 そして最後に、ご婦人が、「わたしの主人は、いまでもホンダのファンで、クラシックなホンダのオートバイを三台も保有していますよ・・」とおっしゃったのですよ。その言葉に、私が反応しないはずがない・・

 「それは、どんなタイプの単車ですか?」

 「CB350とCB750、そしてCBXです」

 「エ〜〜・・CBXですか!?・・あの並列6気筒の・・わたしの夢のオートバイでしたよ・・また4気筒の名車も持っていらっしゃる・・それじゃ、維持するだけでも大変でしょう・・」

 「そうね・・でも彼は、本当にオートバイが好きだから・・あの歳で、そんなにエンスージアスティックな(熱狂的な)趣味を持てること自体、素敵なことですからね・・」

 ご婦人は、あくまでも上品に、そうおっしゃる。カーニバルが話題になったときは、「わたしも、全然知らない飲み屋に入った瞬間から昔からの知り合いみたいにドンチャン騒ぎの一員になっちゃったわよ・・」なんて、ノリノリにしゃべっていたのにね〜・・あははっ・・

 そこで、最後に、そのご婦人に、こんなお願いをした。

 「ご主人に、こうお伝え願えませんか?・・アウグスブルクで知り合った変な日本人が、東京で、ブラックバードの2006年型に乗っているって・・あっと、それも全身ブルーのヤツですよ・・たぶんご主人は、ちょっとハッピーな感じになるはずです・・あははっ・・」

 とにかく今日は、とても素敵な日でした。

 あっと・・これから佐々木則夫監督の公式会見があるんだっけ。まあ・・興味深い発言があったらお知らせしますよ。では、明日の勝負マッチを、お互い、とことん楽しみましょう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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