トピックス
- 2011_女子WM_14・・雑感・・U17準決勝・・そして、日本の組織サッカーとビルギット・プリンツについて・・(2011年7月8日、金曜日)
- いま、ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)という町に根を下ろしています。ヴォルフスブルクの南に位置するニーダーザクセン州の代表都市の一つ。今回は4泊だから根を下ろす・・ってな感覚なんですよ。
ホテル・・というよりも、短期賃貸アパートメントといった方がピタリと当てはまる、新しい形態の宿泊サービスですかね。早朝の定期清掃がないことも含め、周りを一切気にする必要のない賃貸アパート形式。もちろんキッチンも備わっているし、地下にはクリーニング施設もありまっせ。
ヴォルフスブルクにホテルを探すことも考えたのですが、ドイツ対日本の勝負マッチがあることでホテルは満杯。結局ブラウンシュヴァイクに「都落ち」したっちゅう次第です。でも、正解だったね。ハノーファーに次ぐ、ニーザーザクセン州第二の都市という肩書きはダテじゃない。例によって、伝統ある教会や市庁舎、はたまた歩行者天国といったその町の文化を匂わせる見所や「体感どころ」も多いからね。
昨日は「オフ」にしたのだけれど、町の中心街に設定された歩行者天国でウインドーショッピングを満喫したり、キャフェに立ち寄ったり、はたまた文化遺産を見て回ったり、私が愛用するシューズブランド「ecco」を見つけて衝動買いしちゃったりと、時を忘れましたよ。
そして、夜中には、例によって「ユーロスポーツ」で、押し詰まっている「FIFA-U17ワールドカップ」準決勝でのギリギリの勝負マッチに舌鼓を打った。まず、ウルグアイ対ブラジル。そして、ホストカントリーのメキシコ対ドイツ。
最初のゲームは、巧妙なディフェンスを展開したウルグアイが、ブラジルの強力攻撃を抑え切り、逆に、得意のカウンターを中心にゴールを積み重ねていった。終わってみれば、実力的には明らかに上のブラジルに対し、「0-3」の完勝を収めた。
まあ・・典型的なノックアウト・リザルトということだね。とはいっても、一発勝負に、「ゲーム戦術」を徹底することで勝ち切るのは、そんなに簡単なことじゃない。その意味でもウルグアイは、正当な勝ちを、自分たち自身で(必然的に)奪い取った・・っちゅうことです。
そして、そのゲームの後に行われたドイツ対メキシコ。両チームとも、個人の能力と、攻守にわたる組織サッカーがハイレベルにバランスするモダンサッカーを展開した。まさに、動的な均衡。
・・そんな緊迫したゲーム展開のなかで、ドイツの天才ゴールゲッター、トルコ系のイェジールとチャーンがゴールを奪い、逆転でリードを奪う・・そしてゲーム展開の雰囲気が、「このまま最後まで行きそう・・」といった落ち着いたモノへと変容していった(もちろん二度くらい決定的に近いピンチはあったけれど・・あははっ!)・・
そんな「落ち着いたゲーム展開」のなかで、「そうか〜・・ドイツ対ウルグアイの決戦か〜・・こりゃ、日曜日の夜中の生中継は見逃せないな〜・・でも、その日は、ブラジル対USAの準々決勝を、ドレスデンまで移動して観戦するから大変なスケジュールになっちゃうな〜・・」なんてことを安易に考えていた。でも、その矢先・・
まさに唐突に、コーナーキックから、メキシコが同点ゴールを奪ってしまったのです。ゴメスのヘディングシュート。後半30分。そしてゲーム終了間際、またまたゴメスが、これまたコーナーキックからのこぼれ球を、オーバーヘッドシュートでスーパーゴールを決めてしまう。
リードしていたドイツの若武者たちは、「勝てるぞっ!」と、手応えを感じていたに違いない。だから試合後の彼らの落胆ぶりは尋常じゃなかった。そんな光景を観ながら、「そうそう・・この奈落の落胆こそが、彼らを大きくするエネルギー源になるんだよな〜・・」なんてことを思っていた。
それにしても、ドイツの若手育成プログラムは、本当に順調に進展している。1990年代の半ば、このプログラム構築プロセスを目の当たりに体感していた筆者だから、感慨深い。
ところでブラウンシュヴァイク。私がドイツにサッカー留学していた当時、アイントラハト・ブラウンシュヴァイクは、ブンデスリーガの名門でした。わたしも、1FCケルンを追いかけて何度か町を訪問したことを覚えています。それが今では3部リーグをうろうろしているのだそうな。そんなところにも、ドイツサッカーの歴史を感じるね。
あっと・・、いま通りすがりの地元ボランティアの方に確かめたとき、「エッ!?・・アイントラハトは、今シーズンから2部に返り咲いたんですよ!・・もう3部じゃありませんよ!」と文句を言われた。スミマセン・・ガンバレ〜〜・・アイントラハト・ブラウンシュヴァイク〜〜ッ!!
あっと・・今日のコラムテーマは、ナデシコの組織サッカーだったっけ・・
「日本のコレクティブ(組織的な)サッカーは、とてもレベルが高い・・それを、どのように抑え込むのか?」
この数日のテレビ討論番組では、そんな話題で持ちきりです。そして、多くの意見が、「とにかく日本にスペースを与えない・・そう、イングランドのように・・」ってなニュアンスに集約される。
たしかにイングランドは、日本ボールホルダーへの忠実なチェイス&チェックだけではなく、彼女たちの生命線である「ボールがないところでの動き」にも、必死に食らいついていった。だから、日本がいくらボールを動かしても、最後に勝負パスを収められるような、決定的スペースでフリーになる日本選手を作り出すことがままならなかった。
自分たちがイメージしたような、パスレシーバーの「フリーな状態」を作り出せないナデシコ。そして、うまく崩していけないプロセスが続いたことで、徐々に、日本の意志が減退し、足が止まりはじめていく。こうなったら、まさに心理的な悪魔のサイクル・・。消極的な「逃げ」の横パスが目立つようになっていくのも道理でした。
ところで、ドイツ。彼らが、イングランドのような「ディフェンス主体」のゲーム戦術を選択するはずがない。だから、イングランド戦とは、まったく異なるゲームになることは当然の成り行きです。
もちろん守備に入ったら、ボールホルダーに対する強烈なチェイス&チェックを掛けつづけるだけじゃなく、日本のコレクティブ(組織的な)サッカーの生命線である、ボールがないところでの動き(スペースを、パスで攻略していくときの絶対的ツール!)までも、完璧に抑えちゃうんだろうね。
でもサ、日本の組織サッカーを意識すればするほど、攻撃になったときの「ドイツ的な押し上げ」にも注意深い雰囲気が出てくるでしょ。要は、人数を掛けた「ココゾッ!の爆発コレクティブ勝負プレー」が、そんなに簡単にフルパワーに入っていかない・・ということです。
とまれ、前回のコラムでも書いたとおり、完璧にフッ切れたマインドで、最高の組織サッカーをブチかますに違いないナデシコに対し、負けるわけにはいかないドイツの方が、ガチガチになるはず。そんな心理・精神的な落とし穴を、ナデシコがうまく活用し尽くせるか・・。
興味は尽きないよね。
ところで、ビルギット・プリンツ。昨日の記者会見で、素晴らしいコメントをしていた。私だけではなく、ドイツ人ジャーナリスト、ドイツの友人たちも、かなり心を動かされたということです。
その骨子は、こんな感じでした・・
・・彼女にとって、追求するのは自分自身が、常に最高のパフォーマンスを発揮すること・・それを成し遂げられれば、必ずチームのためになっているはず・・そのことは、自分のプレイヤーとしての歴史が証明している(彼女のプライドの絶対的バックボーン!)・・
・・ただ今回のワールドカップでは、イメージするプレーが出来ていない・・このままでは、チームに迷惑を掛けてしまうのは目に見えている・・いまの状況では、自分がプレーしな方がチームのためになると思った・・その状態を受け容れるのは簡単ではなかった・・ただ、チームの全員が、私に対して、ものすごく気を遣ってくれた・・心から感謝している・・
・・これからは、わたしの経験をチームの若手に伝えていくことで、チームを心理・精神的に支えていきたいと思う・・ドイツは世界一のチームだから、彼らが優勝することを信じて疑わない・・
彼女は、一部で報道されたような引退宣言はしていません。逆に、そんなニュアンスの報道をするメディアに対して、意気軒昂に、皮肉を込めたコメントまでしていた。
ビルギット・プリンツ・・。日本戦では、ポップと同様に、ベンチスタートでも、何らかの決定的な時間帯に出場し、まさに決定的な仕事をしてしまうかもしれない。
彼女は、大学で心理学を学んでいるそうな。そんな彼女のインテリジェンスが光り輝く、「前向きでポジティブな雰囲気」を放散しつづけた記者会見ではありました。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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