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2011_女子WM_3・・ドイツの絶対的エース、ビルギット・プリンツを交替させたところから、本来の軽快なドイツサッカーが戻ってきた・・ドイツ対カナダ(2:1)・・(2011年6月26日、日曜日)

さて、女子WM(Welt Meisterschaft=ドイツ語でワールドカップの意)の開幕マッチ、ドイツ対カナダ。ドイツが順当にカナダを下したけれど、この試合については、色々なテーマが抽出できたから良かった、良かった。

 もちろん第一は、ドイツ代表のサッカータイプと彼らの実際の調子を測るという視点です。

 例によって、抜群に力強く、クレバーな「組織ディフェンス」を展開するドイツ女子代表。チェイス&チェックと周りのボール奪取勝負イメージが、とても上手くシンクロしつづける。ドイツ代表の強さの基盤が、そんな組織ディフェンスにあることは誰もが認めるところでしょ。でも、その背景に、「その後の攻め」に対する明確なイメージが隠されていることも見逃してはいけません。

 彼らのディフェンスでは、消極的に下がって受け身のプレー姿勢に陥ることなどはあり得ない。常に、前からの積極的で組織的なボール奪取にチャレンジしつづけるのですよ。

 そして、ボールが奪えそうな状況になったら、必ず周りの誰かが、次の攻撃(その準備)アクションに入っていくのです。そして、燃え立つエネルギーを放散しながら直線的にゴールを目指す。

 もちろん「真っ直ぐ」が難しかったら、(ちょっと回り道になるけれど!?)サイドゾーンからの仕掛けへとイメージを切り替えてしまう。そしてそこから、鋭いクロスボールを送り込んだり、ドリブルで切り込んでシュートやラストパスにチャレンジする。

 そんなドイツのチーム戦術には、しっかりと(安定させるように!?)守ってカウンターなんていう表現は当てはまらないだろうな〜・・そうではなく、例えば、攻撃的なボール奪取プロセスを(強烈な意志を)絶対的ベースに繰り出される、忠実で力強い「守備の流れ」と、その流れ(攻撃的な意志に!)後押しされるスピーディーでパワフルなダイナミック攻撃・・なんて表現できるかな〜〜・・

 ちょっと難しいけれど、そんな「常に前へいく積極サッカー」が内包するチーム戦術的なイメージは、全員が共有できていなければ決して機能しない・・ということ「も」言いたかった。多分、彼らが共有しているモノは、ドイツの伝統とか、ドイツプレイヤーの基本的な感性とか呼べるものなんだろうな〜。

 ところで・・、実は、前述したポジティブなサッカーは、後半になってから表現できるようになったのですよ。前半は、ドイツ監督シルビア・ナイトが言っていたように、ロングパスを多用するなど、サッカーが大雑把になっていた。でも、ゴールは決めた・・

 それに対して後半。ボール奪取プロセスの機能性が大きく改善しただけではなく、そこからのダイナミックな仕掛けの流れの「危険度」も、前半とは比べものにならないくらいアップし、実際に、何度も決定的チャンスを作り出した。でもノーゴールだった・・

 そんなポジティブな変化のキッカケだけれど、それは、これまで絶対的エースストライカーとしてドイツ代表に君臨してきたビルギット・プリンツを下げ、若手のアレクサンドラ・ポップ(背番号11)をグラウンドへ送り出したことでした。

 確かにプリンツは、パワフルだし、いまでも優れたゴール感覚をもっているとは思う。でも、守備への貢献も含め、全体的な動きの量と質やスピードが、大きく落ち込んでしまったし、コンビネーションの流れにもうまく乗れなくなっている。だから、彼女のところでボールの動きが止まってしまう。

 逆に、アレクサンドラ・ポップが登場してからのドイツの攻撃は、とにかく軽快になった。人とボールの動きが数倍にもアップしたとさえ感じられたモノです。

 だから、前半の「チカラまかせ」の攻撃とは違い、後半は、とてもスマートなコンビネーションや鋭いサイドチェンジパスをベースに、カナダ守備ブロックを何度も振り回し、そして決定的チャンスを何度も作り出した。

 ということで、ゲームを通した実際のチャンスの量と質という視点じゃ、完全にドイツが凌駕する。もちろんカナダの監督さんが言っていたように、ボール保持率で、カナダに軍配が上がる時間帯もあったけれど、カナダは、ボールを保持しながらも、結局は、実質的なチャンスを作り出せたわけじゃなかったからね。

 とにかく、絶対的エースのビルギット・プリンツが調子を上げることに期待せざるを得ないわけだけれど、今の彼女は、明らかに「諸刃の剣」に成り下がっているから、難しいかもしれないな〜。

 ということで、これからのドイツ代表チームの動向について、監督のシルビア・ナイトが、プリンツとポップを、どのように使っていくのか・・という視点で観察するのも興味深いよね。

 ちょっとドイツチームに関する記述が長くなってしまったけれど、それ以外にも、このグループでは、実力がダントツのドイツを除いた、フランスとカナダの「グループ二位争い」の方が、とても面白いという視点もある。

 もっと言えば、この両チームは、「いかにドイツ戦での失点を少なく抑えるか・・」というテーマと、「いかにナイジェリア戦で多くのゴールを挙げるか・・」という二つのテーマと取り組まなければならないということです。

 その意味で、前半に2ゴールを奪われた「その後の」カナダが、ガンガン人数を掛けて前へ攻め上がっていった姿勢には、ちょっと疑問符がついた。

 もちろん、リスクチャレンジのないところに進歩もない・・という根底コンセプトの正しさを論じているわけじゃないよ。そうではなく、トーナメントの具体的目標を達成するための現実的なゲーム戦術のことを言っている。

 前述したように、カナダの監督さんは、ボールポゼッションでは彼らの方が優っていたと胸を張っていたわけだけれど、その代償として、少なくとも4つの決定的ピンチにも見舞われた。あのピンチが失点につながらなかったのは、まさに奇跡としか言いようがない。

 「あれ」が入っていたら、前述した「二位争い」という現実的な目標が、大きく遠のいてしまったに違いない。その意味でカナダの試合運びは、ちょっと無謀だったと感じている筆者なのですよ。

 でもカナダは、ものすごいツキに恵まれた。

 攻めても攻めてもチャンスを作り出せないカナダだったけれど、一発のフリーキックで、ドイツに一点差まで迫れたんだからね。カナダのクリスティーン・シンクレアが放ったフリーキックは、ギリギリで、ドイツゴールの右上隅に飛び込んでいくような、まさに「スーパー」なモノだった。

 カナダチームのツキ。ホームを闘う「あの」ドイツに対し、何度も決定的ピンチに見舞われたにもかかわらず、それを2失点で切り抜けただけじゃなく、奇跡的なフリーキックをブチ込むことで「一点差」でゲームを終えられた・・ことですかね。

 とにかく、このグループAでは、フランスとカナダの二位争いに注目しましょう。

 明日は、早朝からボーフムへ移動します。まあ、500キロ強といった移動距離。もちろん、一昨日にベルリンでピックアップしたレンタカーを駆ってのアウトバーン・ドライブです。到着したら、まず「雑感」だけでもアップしますので・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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